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おしゃれをあきらめず、「自分らしい髪型」で過ごしてもらうために出張美容サービスを展開

高齢者施設を移動美容車で訪れ、望む髪型をかなえる美容師

山本恵子

山本恵子 やまもとけいこ
山本恵子 やまもとけいこ

#chapter1

移動美容車で高齢者施設や障がい者施設などを訪問し、カットやパーマ、カラーに対応

 新緑や紅葉をイメージさせるカエデの葉を描いた移動美容車「楓」で、高齢者施設や障がい者施設などを訪問している「彩」代表取締役の山本恵子さん。トラックのボディ(荷台)に、乗り降りがしやすい昇降リフトやサロンワークに欠かせないシャンプー台を備え、出張美容サービスを提供しています。

 「髪型はその人らしさを表現するものです。お出掛けができなくなり、おしゃれをあきらめてしまっていても、私たちがお伺いしてご本人が望むヘアスタイルをかなえることで、笑顔を見せてくださるのが何よりの喜びです」と山本さん。

 現在、茨城県内に点在する約50の施設に赴き、美容院に行くことができない人のカットやパーマ、カラーに応じています。

 「認知症の方でも、鏡の前に座ると『あんまり短くしないでね』とか、ちゃんと意思表示をしてくださいます。寝たきりで話すことができなくても、鏡を見せるとまばたきが多くなったり、顔つきが変わったりするんです。メニューを終えた後『かわいくなりましたね』と声を掛けると、目に表情が出るんです」

 利用者の状況によっては、介護のしやすさを優先して顔まわりや襟足を短くするなど、みんな似たような髪型になっていることもあるそうです。
 「私も介護職をしていたので、介助にあたるスタッフさんやご家族のお気持ちはよく分かります。でも、ショートヘアにしたことがない方は、髪を切るのを嫌がることもあります。ご本人の希望を尊重しながら、日々のお手入れも視野に入れて妥協点を探ることを心掛けています」

#chapter2

一人一人の思いに寄り添い、希望のヘアスタイルをかなえたい

 美容師として活躍する山本さんですが、デイケア施設で勤務していたこともあります。外出が難しい利用者が多いことを知り、ボランティアで髪の毛をカットしたこともありました。

 「サロンと同じように『カラーやパーマもしてあげたい』と考え、施設にシャンプー台を設置してほしいと頼みましたが無理でした。その様子を見ていた当時の上司から『美容室ごと持ってくれば?』と言われ、なるほどその通りだと。すぐに調べたところ広島の人と連絡が取れ、当時3歳だった娘を連れて夜行バスに乗り、見学に行きました」

 移動美容車は、注文してから製造するので時間がかかります。資金も必要だったので、デイケア施設で働きながら介護福祉士の資格を取得。2003年に晴れて始動しました。

 「人はどんな状況でも『美しくありたい』と願っています。だから、入浴スペースの一角で、鏡も見ずにただカットをするようなことはしたくない、というのがポリシーとしてあります」

 長年にわたる活動の中では、利用者との別れもありました。「とてもおしゃれなご婦人で、毎月ヘアケアをしていました。ある時、体調が悪くなり病院に移られましたが『どうしてもパーマをかけたい』と一時退院して、施設に戻ってこられました。以前のようにお手入れをした後、すぐに入院。そして帰らぬ人になってしまいました」

 自分の寿命を知り、髪を整えたかったのかもしれないと振り返る山本さん。最後の最後まで、可能な限りその人の思いに寄り添いたいと語ります。

#chapter3

「ありがとう」と深く感謝され、やりがいのある仕事だということを若い世代にも伝えたい

 「何時間もかけて運転した後に、何人もの方に対応するのは体力がいります。中には、意思疎通ができなかったり、座っていることができずに立ち上がってしまう方もいます。けがをさせてはいけませんし、常に配慮が求められますが、これほどやりがいを感じるものは他にありません」と山本さん。

 「きれいになってサッパリすると、みなさん『ありがとう』と拝むようにおっしゃるんです。心の底からお礼の言葉を言ってもらえる経験は、そうそうできるものではないでしょう」

 時には、利用者から「いい仕事をしているね」と励まされることもあるとか。「大変なこともありますが、お客さまや私どもを受け入れてくださる施設があるからこそ、がんばることができています」

 移動美容車のほかにも、高齢者や障がいがある人でも足を運びやすいようにスロープなどを施した「美粧院なごみ」も開いています。

 「車いすを使っている方が、気兼ねなく通える美容室が少ないんです。バリアフリーの施設は増えていますが、美容室はシャンプー台が一段高くなっているのでご家族のサポートが必要だったり、障がいがある方は他のお客さまの迷惑になるからと入店を断られることもあります」

 誰もが心置きなくサービスが受けられる空間を大事する山本さん。「若い美容師さんに続けてもらうためにも、この業界を目指す人のためにも、お客さまに深く感謝され、毎日が刺激にあふれる仕事だということを伝えていきたいですね」と前を見据えます。

(取材年月:2022年9月)

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専門家プロフィール

山本恵子

高齢者施設を移動美容車で訪れ、望む髪型をかなえる美容師

山本恵子プロ

美容師

株式会社彩

介護福祉士の資格を有し、高齢者や障がいがある方に適切に対応しながら、顧客が望む髪型をかなえる。カットだけではなくカラーやパーマも可能。できるだけ顧客の意思を尊重して「その人らしさ」を大切にする。

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