メタバースのある新たなライフスタイルを提案するプロ豊永真由美

メタバースのある新たなライフスタイルを提案するプロ

豊永真由美

「メタバース」は年齢や性別、肩書、国や地域を越えて活動できる仮想空間

　インターネット上に構成された3次元の仮想空間で、自分の分身となるキャラクター“アバター”を操作して空間内を散策したり、他の人とコミュニケーションを取ったりできる「メタバース」。2021年ごろから世界的なIT企業が参入し、オフィス会議やプレゼンをしたり、展示会、ショップを展開したり、多様なサービスが提供されています。

　「MetaBloom（メタブルーム）」の代表・豊永真由美さんは、主にミドルシニア女性を対象に、メタバースを活用した新たなライフスタイルを提案しています。

　「長く第一線で活躍してきた女性が定年を迎えた後、培ってきたスキルや経験を生かせる場が少ないのではと常々感じていました。メタバースは、年齢や性別、肩書、国や地域など、既存の枠組みを越えて活動できるのが特色です。定年前後の女性に仕組みや使い方などを学んでもらうことで、セカンドキャリアやセカンドプレイスの構築に役立ててもらうことを目指しています」

　活用事例を学ぶ入門編、簡単な仮想空間やアバターを制作する基礎編、実践的な応用編、卒業生のオンラインコミュニティーといったプログラムを用意。初心者からでもノウハウを身につけることができます。

　「年齢を重ねて体力が低下しても、パソコンやスマホが操作できれば生涯現役もかないます。私の母も、80歳を超えてメタバースに挑戦したんですよ。趣味の写真の展覧会を開くのが望みでしたが、会場の手配や搬入など負担も大きく二の足を踏んでいました。プラットフォームの選定や企画の仕方を手ほどきし、念願の写真展を開催できて喜んでいました」

女性起業家支援事業で最優秀賞に選ばれるなど、高い評価を得て独立を決意

　豊永さんは子どもの頃、部品を接続して電子回路の実験ができる電子ブロックに夢中だったそうですが、3代続けて銀行員という家系だったことから、大手都市銀行に就職。外資系銀行や投資顧問会社にも勤め、金融分野でキャリアを積みました。

　「パソコンやインターネットは、ずっと趣味として触れていました。メタバースも出てきてすぐに興味を持ち、いろんなプラットフォームに遊びに行きました。日本では、ゲームやアニメから入る若い人が比較的多いのですが、海外では、参加している人の年齢層も職業も幅広く、実生活では出会えない人とも気軽に交流できる点に魅了されました」

　築いた人脈を生かして、メタバース内のさまざまなイベントに参画。経験を周囲に話すと、「自分もやってみたい」という反応が多く、企画した体験会にも次々と人が集まります。

「自由なバーチャルの世界を味わうと、またやってみたいという人がほとんどでした。多くの人に体感してもらうため、2022 年、初心者の女性に向けたコミュニティーを立ち上げました」

　2024年に神戸市女性起業家支援事業に参加。「定年女子」と「メタバース」、新たな知識を得る「リスキリング」を掛け合わせた事業計画を発表したところ、最優秀賞に輝きました。

　さらに同年、公益財団法人大阪産業局が実施するビジネスプラン発表会「LED関西」にエントリー。500人を超える応募者の中から10人のファイナリストに選出。高い評価に背中を押され、起業を決意しました。

メタバースで社会課題の解決を。自治体や企業への研修やコンサルも実施

　豊永さんが設立したコミュニティーのメンバーの中には、スキルや資格を生かし、メタバースでセミナーやキャリアコンサルティングなどを行う人もいます。面と向かって話しにくいことも、アバターを通すので心理的な負担が和らぎ、相談事業は特に相性がいいそうです。

　「お子さんが不登校でメタバース内の学校に行っている方は、『子どもが、みんなで修学旅行をして楽しかったと話しているけれどよく分からない』と悩まれていました。当方がレクチャーして体験してもらったところ、『本当に一緒に旅行した気分になれるんですね。わが子の気持ちが分かり安心できました』との感想が寄せられました」

　メタバースには、子育て支援のひろば、難聴や聴覚障害の子どもやその家族らのコミュニティーなどもあります。対面が難しい状況でもつながって孤立を防ぎ、社会課題の解決にも寄与できると提言します。

　「実生活では越えづらい障壁も、仮想空間なら一歩踏み出せるかもしれません。困っている人に手を差し伸べられる場を作れる人が増えることも期待しています」

　大阪労働局が「バーチャルわかものハローワーク」を開設し、若年層の就業をサポート。観光名所を巡るなど地方創生でも採用されつつあり、豊永さんは、地方自治体や企業への研修・コンサルティングにも取り組みたいと考えています。

　「無料の体験会はスマホがあれば参加できます。どこからでも誰でもアクセスできる世界に触れて、可能性を感じていただきたいですね」

（取材年月：2025年5月）

「定年女子」のセカンドキャリアを、「メタバース」を学ぶプログラムでサポート

「メタバース」は年齢や性別、肩書、国や地域を越えて活動できる仮想空間

女性起業家支援事業で最優秀賞に選ばれるなど、高い評価を得て独立を決意

メタバースで社会課題の解決を。自治体や企業への研修やコンサルも実施

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