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Mybestpro Interview

材料選びから販売方法まで、街で見かける数々の食品をプロデュース

食品に関する研究開発に特化したプロ

菊池玄

菊池玄 きくちひかる
菊池玄 きくちひかる

#chapter1

素材やレシピを考え、商品の風味や食感、コスト、日持ちもコントロール

 食品関連の企業が新商品の開発や既存商品の改良を行うにあたり、原材料選びからレシピの作成、販路開拓までプロデュースしている「食品研究開発所」。

 代表の菊池玄さんは「今まで技術提供した商品は市販されているため、皆さんも口にしたことがあるかもしれません。素材の風味や食感、コスト、日持ちなどをコントロールするのが私の仕事です」と話します。

 例えば、ファストフード店の人気メニュー・餅入りパイも手掛けたうちの一つ。“本物”の餅を使うと製造時に切断するのが難しく、焼き上げる際に膨らみ過ぎて形が崩れ、時間がたつと硬くなって食べられなくなるという課題がありました。

 「しかも季節限定品につき、短期間で大量生産できることも必須でした。スピーディーに市場に出すため、モチモチとした食感や程よい伸びはそのままに、原材料や作り方を変え、扱いやすい代用の餅を作り出しました」

 ほかに、フルーツゼリーの開発も。家庭で一般的に使われる寒天は透明度が低く、ゼラチンは常温で溶けてしまうのが難点でした。菊池さんは、微生物代謝由来の多糖類であるキサンタンガムなどのゲル化剤をブレンドして凝固。中の果物がよく見えるように工夫すると共に、常温での保存もかなえ、口に入れると体温で溶けるようなゼリーを完成させました。

 「甘味料や保存料、着色料といった食品添加物の効果的な使い方も得意としています。添加物はよく悪者扱いされますが、食品ロスの低減、安心・安全の担保や私たちがおいしさを感じるために重要な役割を担っています。こうした事実を伝えることも私に与えられた大切な使命でしょうね」

#chapter2

大切にしているのは「モノづくりは人と人で成り立つ」の意識

 菊池さんは大学院時代、腸内環境について研究。卒業後は食品添加物の開発を専門とする大阪のメーカーに就職し、約20年にわたり研究者として従事しました。

 「通勤に片道2時間もかけていました。バスと電車に揺られる中、食品の知識を深めようと専門書や参考書を読みあさり、週に3、4冊を読破していました。また、実験室にいるよりも外で誰かと話すほうが好きで『モノづくりは人と人で成り立つ』と考えるようになりました」

 コロナ禍でリモートワークが浸透し、自宅でも十分に仕事ができると認識してからは独立を意識するように。会社に相談すると快く背中を押され、退職後も外部顧問として協力してほしいと打診されます。

 「本当に感謝ですよね。前社だけでなく、以前から親交のあった大手商社からも顧問契約の話をいただきました。現在も、多くの仲間と相談し合う中で新しい案件が生まれています。まさに『モノづくりは人と人で成り立つ』ですね」

 近頃は製造ラインの改善をアドバイスする機会も多いとか。設備を変えて提案したレシピとの適合性を高めたり、食品衛生管理の手法であるHCCP(ハサップ)に認証されるためのマニュアル作りや従業員教育を引き受けたりもしています。

 「原材料の選定から食品工場の運営まで、幅広くコンサルティングできることが強みです。安心・安全を担保した上で風味や食感の向上とコストダウンを両立させるのが得意で、関わる人の全てにメリットをもたらすことにたけていると自負しています」

菊池玄 きくちひかる

#chapter3

新たな顧客と出会い、未知の課題に向き合うことが自身と業界の成長に

 菊池さんは2024年で50歳に。人生の折り返し地点に到達し、蓄えてきた知識や技術の継承も意識するようになっていると話します。

 当面の目標は、自身と開発所の知名度を高めて新たな顧客と出会い、未知のプロジェクトに挑むこと。「これまで取り組んだことのないような課題を解決してこそ、自らの成長と業界の発展につながる」と考えています。

 「多くの人と接点を増やし、ネットワークを築いていくため、世間への露出を図っています。お客さまの業種や業態の幅を広げて現状を客観的に見ていけば、消費者の要望も明確に分かり、次の新商品の誕生につながりますよね。求められているものを届けていくためにも、皆さんの“お困りごと”を知ることが今の私にとって重要なのです」

 また、食品添加物の役割を正しく伝えることにも注力したいとか。インドをはじめ、アジアやアフリカの国や地域を中心に地球規模で人口が増加する中、食料の確保や製造、保存、流通させる方法について目を向けることは不可欠であり、食の安心や安全を守るためにも添加物の活用が鍵になると言います。

 「専門に研究している立場からすると、必要な添加物が入っていない商品を見ると『おいしいのかな』『品質が保たれているのかな』などと疑問に感じてしまいます。日本の加工食品はクオリティーが高く、例えば冷凍食品とレストランの料理を比べるテレビ番組もありますよね。添加物が食卓に幸せをもたらしていることも、改めて周知していきたいです」

(取材年月:2023年12月)

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専門家プロフィール

菊池玄

食品に関する研究開発に特化したプロ

菊池玄プロ

食品コンサルタント

合同会社食品研究開発所

食品および飲料の新商品開発や既製品の改良に際し、原材料の選定からレシピの提案、製造ラインの適正化、販路の開拓までプロデュースが可能。特に、風味や食感の向上とコストダウンの両立を得意とする。

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