新たな先祖供養の形と後悔のない選択を示す墓じまいのプロ佐藤和徳

新たな先祖供養の形と後悔のない選択を示す墓じまいのプロ

佐藤和徳

行政手続きのお手伝いなど高齢者や遠方に住む人に寄り添ったサービスを展開

　北海道北東部に位置する紋別郡遠軽町。「佐藤石材店」は1949年の創業で、地域に根差して約70年の老舗。代表の佐藤和徳さんは、祖父から父へと受け継がれてきた同店を、現代のニーズに合わせて発展させてきました。石材の加工・販売、霊園の維持・管理、仏壇や仏具の販売など、幅広く事業を営んでいます。

　「近年はお墓を建立する数より、『子や孫に負担をかけたくない』『跡継ぎがいないから』など、閉じる数の方が多くなりました。各家庭から寄せられるお声に応えるため、当方では『お墓じまいの専門店』として、皆さまのお気持ちに寄り添ってお手伝いをしています」と佐藤さん。

　家族の散在、継承者の不在のほか、維持管理の難しさなど、さまざまな理由がありますが、若者が地元を離れなかなか戻ってこない過疎地においては、特に問題が深刻化していると指摘します。

　「墓じまいにあたっては、墓石を撤去して墓所をさら地にし、使用権を自治体や寺院などに返還しますが、お骨を取り出し、別の場所に移すには行政手続きを要することが多いです。当方では、役所に提出する改装許可申請のやり方や、工事の進め方などをご案内しております。気軽に外出ができない高齢の方や遠方に住む方のために、手続きのお手伝いや各所への同行もしています」

　佐藤さんは情報発信にも努め、動画サイト・YouTubeで墓じまいについて分かりやすく伝えています。
　「動画では一連の流れだけでなく、必要な書類の実物を見せて説明していますので『内容が理解しやすい』と、実際にご覧になった方がお越しになるケースもあります」

まずご遺骨の行き先を検討することが大切。地域で異なる墓の撤去費用も算定

　「ご自身の両親や、親御さんそれぞれの父母と、旅立たれた方々との接点がお墓です。全国各地で人の移動が容易になる中、お墓だけ動かせないのは時代に即していません。墓じまいは、決してご先祖をないがしろにしている訳ではないのです。先人をしのぶ場所を変え、思いを引き継ぐ、新たな先祖供養の切り口の一つと捉えてほしいですね」

　佐藤さんは、墓じまいに先立ち「遺骨の行き先」を検討することを提案。主な選択肢は、「新しいお墓の作成」「寺院等の納骨堂への移転」「自治体運営の合葬墓への埋葬」の三つです。
　中でも合葬墓は、北海道でも需要が増えており、永代使用料を支払うことで、行政により長期的に管理してもらえる利点があります。遠軽町にも近年、新規で合葬墓が設立され、自身も管理組合員として積極的に関わっています。

　遺骨を納める先が決定した後は、段取りを進めます。佐藤さんを含む自社の作業員が現地に赴き、お墓の掃除やお参りをした後、墓石を丁寧に取り除き、土を入れてきれいにならします。

　「お墓は、その土地の習わしやしきたりといった風俗習慣によって形状が違うため、面積や工法によって撤去費用が変動します。道内は、凍結対策で基礎が鉄筋コンクリートなどでしっかりした作りになっており、重機が必要になる場合が多いです。区画が狭い場合は作業の難易度が上がるため、費用も高めになりますね。遠軽町で墓じまいする際の具体的な費用や手続きについて相談に乗りますので、ぜひご来店ください」

墓じまいで肩の荷を下ろし、新たな人生のスタートを切るために尽力

　幼少期から石工職人だった父の背中を見てきた佐藤さんが、3代目に就任したのは2016年のこと。23歳で父を亡くした後は母が代表を務め、現場を中心に家業を支えてきました。現在は弟と妻と共に、石材店の伝統をつないでいます。

　地元の人たちの墓じまいを手助けする中で、以前は「より所が無くなり、喪失感が生まれるのでは」と感じることも。考え方を変えたのは、ある女性の手続きに同行したことがきっかけだったと言います。

　「立派なお墓を持つ一人暮らしのご婦人で、閉眼法要には遠くから息子さんたちも来てくれました。お子さんに『これからは、おのおのが暮らす先でやっていくんだよ』と伝えていたのが強く記憶に残っています。お墓があったためにずっと息子たちのもとに引っ越せずにいましたが、お墓をしまうことで、心の呪縛が解かれ、肩の荷が下り、新たな出発ができたんだと気付かせてくれたんです」

　石の仕事が好きで、「これからも石材業に携わり続けたい」と語る佐藤さん。解体後に、家紋が刻まれた石碑部分をプレートにしてプレゼントするオプションなど、顧客の思いをくみ取るサービスも模索をしています。

　「身寄りがなく、自分が亡き後のことを託す後継者がいないものの、墓じまいするのは気がひけるという方、また自分の代で建てるかどうかを迷う方もいらっしゃるでしょう。建てることもしまうことも全てはご先祖を偲ぶ気持ちから始まります、後悔のない選択をするためにも当方がサポートいたします」とメッセージを送ります。

（取材年月：2023年11月）

先祖供養の一つとして墓じまいを提案し、後悔のない選択をサポート

行政手続きのお手伝いなど高齢者や遠方に住む人に寄り添ったサービスを展開

まずご遺骨の行き先を検討することが大切。地域で異なる墓の撤去費用も算定

墓じまいで肩の荷を下ろし、新たな人生のスタートを切るために尽力

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