新体操を通じて子どもの「やり抜く力を」育む新体操指導のプロ宮下やよい

新体操を通じて子どもの「やり抜く力を」育む新体操指導のプロ

宮下やよい

一般コースと、フィンランド発祥の「AGG」を取り入れた競技コースを用意

　「運動を通じてどんなことも乗り越える力を養い、可能性を切り開くお手伝いをいたします。子どもたちには自分らしく光を放ち、キラキラと輝く未来をかなえてほしいですね」

　そう語るのは、札幌市で「新体操教室Kira」を主宰する宮下やよいさん。未就学児から高校生までを迎え入れ指導を行っています。

　一般コースは10人程の少人数制で、体軸を取り入れ一人一人の素質を伸ばすセミパーソナルレッスンを実施。競技コースでは、フィンランド発祥の美的団体競技「AGG」を取り入れたグループレッスンを展開し、2022年にはマレーシアで開催された国際大会で優勝するなど実績を積んでいます。

　「AGGはリボンなど手具を使わず4人から16人で演じます。ダイナミックでしなやかな表現力が求められ、芸術性が高く、年齢カテゴリーがあるのが特長です」

　教室のコンセプトとして「GRIT＝やり抜く力」を掲げ、自ら目標を定め、主体性をもって取り組む過程を大事にしています。

　「物事に積極的になるなど、お子さんの変化に喜んだ親御さんのクチコミで、一時期生徒数が120人を超えました。もっと一人一人の子どもと向き合いたいと考え、また短い期間で反復すると体が覚える吸収力が何倍も違うため、週2回の少人数制クラスを編成しました。実際吸収スピードは早いですね」

　宮下さんのもとには「運動が苦手だった子が、跳び箱が跳べるようになった」「サッカーでふらつかなくなった」「ケガが多かったけれど転ばなくなった」と感謝の声が寄せられるそうです。

小さな成功体験を積み重ね、自分を信じることがチャレンジにつながる

　保育園の課外体育からスタートした宮下さんの教室は、2年目で生徒数が急に増えたと振り返ります。

　「病気で運動ができずにいた男の子が、課外体育を始めてから縄跳びや跳び箱など、いろんなことにチャレンジするようになったという話が、保護者の間で広まっていたそうで、『ぜひうちの子もお願いしたい』と申し込みをいただきました」

　宮下さんは、子どもが本来持っている身体能力から伸び悩む原因と伸び代を見極め、「自信を持っていいよ」と励ましながら、小さな成功体験を積み重ねることを重視。自分を信じることがさまざまな挑戦につながるのだと、生徒から気付かされることが多いと言います。

　とある地方大会で全員入賞を狙えるという勢いの中、一人だけ入賞を逃したとき。一番をとった子が「一緒に写真を撮ろう！」と、負けた悔しさの中にいる仲間を思いやる姿を見て胸が熱くなったそうです。

　「AGGを取り入れた頃、日本ではあまり知られていませんでした。入会した生徒たちは当時小学生で、ここまでよくついてきてくれたなと思います。コロナ禍ではレッスンもできず、競技大会も中止となりました。高校生になった生徒たちは先が見えない不安の中で一人も辞めることなく一緒に耐え、戦ってきた同志です。日本、そして国際舞台に向け情熱をかけて練習し、『出るためにどうすればいいのか？』と研さんを重ね、初の海外遠征と国際大会優勝を果たしました。純粋に、ひたむきに成し遂げていく姿勢を生徒たちから教えられましたね」

喜びも悲しみもすべて栄養にできるように、さまざまな経験から学びを提供

　「選手としての時間より、その後に続く生活の方が長い。己を大切に、自分の人生をしっかり歩んでいける人を育てる指導者になりなさい」。これは宮下さんが20代時に師匠から授かった言葉で、生徒と向き合う上で指標にしています。

　「頑張ってやり遂げた喜びも、思い通りの結果にならない悔しさもまるごと栄養にして、教室での時間が、本当にやりたいことが見つかった時のリハーサルになればと願っています。子どもたちの人生が豊かになるように、仲間と切磋琢磨したり、一緒に達成感を味わったり、時には挫折したり、さまざまな経験から学びを提供できる教育者でありたいですね」と宮下さん。海外遠征も含め、競技を通じて視野を広げ、自分の選択肢を増やしてほしいと語ります。

　年齢に合わせた体づくりをするため、体軸トレーナー・ファシリテーターといった資格を保有。体軸はダンスや他スポーツでパフォーマンスを上げる際にも役に立っているとのこと。

　今後は幅広い世代にノウハウを生かしたいと、2024年7月には大人を対象に、体軸を自分で整える「セルフコンディショニングコース」も開設へ。他チームや友人ら100人以上に講座実施し、分かりやすく、伝わりやすいプログラムを用意しています。

　「生活スタイルの変化で姿勢が乱れている方、運動不足の方など、自分の体をご自身で調整することで心も体も健やかに過ごしていただければ幸いです」

（取材年月：2024年5月）

困難を乗り越えるしなやかで強い心身を育み、人生の可能性を広げる土台づくりを

一般コースと、フィンランド発祥の「AGG」を取り入れた競技コースを用意

小さな成功体験を積み重ね、自分を信じることがチャレンジにつながる

喜びも悲しみもすべて栄養にできるように、さまざまな経験から学びを提供

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