自分らしい生き方を育む障がい者就労支援のプロ
岡本淳
Mybestpro Interview
自分らしい生き方を育む障がい者就労支援のプロ
岡本淳
#chapter1
廿日市市阿品にある商業施設・フジグランナタリーの一角に拠点を置く、就労継続支援B型事業所「リバティーはつかいち」。手作業による温もりある商品づくりに取り組み、宮島に渡るフェリー乗り場に、紅葉をかたどった陶器のはしおきや、折り鶴をあしらったコースター、アクセサリーなど、多くの人々の目に留まるアイテムを届けています。
「平和記念公園に寄せられた千羽鶴を手作業で再生し、新たな商品にアップサイクルしています。一押しは、就労者の一人がデザインしたコースターにミニサイズの折り鶴をあしらった『おりづるコースター』。2023年に広島で開催された第49回先進国首脳会議(G7広島サミット)では、各国の賓客をもてなす場で使用されるなど、国内外に日本人の心を伝えるアイテムとなりました」
そう話すのは、事業所を運営する「オアシスコーポレーション」代表の岡本淳さん。同事業所は「障がいのあるなしに関係なく、誰もが当たり前に暮らせる社会」をめざし、2016年から活動を開始。特別支援学校を卒業した人など、20代から70代までの十数人が所属し、それぞれの特性を生かして作業に取り組んでいます。
「商品生産のほか、ダンボール加工などの軽作業を通じて、自分らしく働ける機会を提供しています。商品としての基準を満たしつつ無理なく取り組めるよう、サポートスタッフが手順を工夫。また家族や地域と連携しながら、日々の体調や心理面もしっかりフォローしています」
技術の修得だけでなく、スタッフや仲間との共同作業から、地域社会の一員として誇りある生き方を育む場ともなっています。
#chapter2
少年時代には、卓球やスキーなどのスポーツに親しんだ岡本さんでしたが、下肢の病気により、10代半ばで身体障害者手帳を取得。その後は公務員として地元の郵便局に勤務しながら、身体障害者福祉協会の事務局長として、地域福祉にも力を尽くしてきました。
「在職中、業務によっては心身に負担を感じることもたびたびありました。また、当時携わっていた福祉協会の活動は、広島という地域性もあり、戦争被害への支援が中心。でも社会参画が難しくなる理由はさまざまです。中でも、障がいのために働きづらい状況にある若者にもっと目を向けるべきではないかと感じていました」
課題に向き合うため、27年間務めた公務員を退職。2016年には事業所を立ち上げ、就労者の気持ちに寄り添いながら、社会とのつながりと個人の成長を大切にする活動をスタートさせました。
「めざしたものは、ここから届けることの意味や価値を尊重すること。そして、誰もが自然に支援の輪に加われることでした」と岡本さん。全国から届く千羽鶴の再利用や商品販売の許可申請などを、1年以上にわたり粘り強く進めてきました。こうした取り組みによって、人々の平和への思いが就労者の手仕事によって新たな商品やサービスへと姿を変え、広島から発信できるようになったのです。
「毎朝、就労者の皆さんに声をかけ、その日の様子をしっかりと見守っています。スタッフも私も、そして就労者も、それぞれの力を生かしながら、毎日少しずつ学び、成長しているんです」
#chapter3
2024年には、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞授与式に参加した際のお土産として「おりづるコースター」などが海を渡りました。他の自治体や公共団体、企業とのコラボ商品としても活用が広がりつつあるほか、平和へのメッセージを添えて、宮島の大本山大聖院でお焚きあげを行うなど、感謝の気持ちや願いを昇華させるアイテムとしても親しまれています。
折り鶴以外の取り組みも広がっています。枯れても新芽が出るまで落ちない「ヤマコウバシの葉」を廿日市市内で採取し、ラミネート加工のカードにしました。一つ一つ手作業で名前を刻印した合格祈願絵馬とセットにして、その人だけのお守りとして提供しています。毎年、お礼の言葉が寄せられるほど、心に残る品になっているそうです。さらに、ミニランドセルをモチーフにした新商品にも挑戦。日常生活で愛用される便利グッズの分野でも、アイデアを次々と形にしています。
「ただ、どんなに話題になり人気商品になっても、製作できる数には限りがあります。どの商品も就業者一人ひとりが得意な分野で、できる限りの力を出し合って作り上げているもの。『細かい作業でも楽しい』『おばあちゃんになっても自慢できるね』と笑顔で取り組む姿は、人として敬うべき本来の営みそのものではないでしょうか」
達成感や前向きな気持ちが新たな力を引き出し、一般雇用にステップアップするきっかけになった例もあるといいます。
「誰かの役に立つ喜びや毎日の気づきは、私たちスタッフも同じです。全国各地の事業所が、誰にとっても無理なく成長できる場になればうれしいですね」
(取材年月:2025年11月)
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Profile
自分らしい生き方を育む障がい者就労支援のプロ
岡本淳プロ
就労継続支援B型事業所運営
株式会社オアシスコーポレーション
障がいのある人が自分らしく働きながら、成長し社会とつながるため、一人ひとりが手仕事やアイデアを出し合い、千羽鶴を再生した商品や名前を刻印した合格祈願絵馬など人々の祈りや思いを昇華させる温もりある一品に
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