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「元気がない時だけではなく、いつでも元気をもらえる場所に」次世代の薬局づくりへの挑戦

地域医療や防災・交流の拠点となる次世代の薬局をつくるプロ

宮本誠二

プロフィール
窓口

#chapter1

相談や買い物、情報収集など「処方箋がなくても訪れたい場所」を目指して

 広島県内に調剤薬局9店舗を展開する「MSファーマシー」。代表で薬剤師の宮本誠二さんは、従来の「病気になったときだけ行く場所」という薬局のイメージを改め、「処方箋がなくても訪れたい場所」への転換を模索しています。

 「診察してもらうほどではないけれど気になることがあるとき、日頃の健康管理についてアドバイスがほしいときなどに、病院以外でも気軽に立ち寄れる場所があれば心強いですよね」

 2018年、1号店の舟入南薬局を開局以来、待合室を美容院のような居心地の良い空間に整備。グリーンや病気のパンフレットを配し、市販薬やサプリメントのほか、飲み物や栄養補助食品などをそろえ「また行きたくなる薬局づくり」に努めています。

 「発熱などでお薬を受け取りに来られた方が、わざわざ食材を買いに別の場所へ行かずに済むよう、冷凍食品の自動販売機を設置している薬局もあります。買い物や世間話だけでも大歓迎ですよ」

 薬機法をはじめとする制度や情報は日々変化しています。その変化に遅れず対応するため、宮本さんは常に「一歩でも早い情報収集」を意識。電子処方箋の導入に加え、医師が1回の診察で出した処方箋を薬局で一定回数、再診なしで利用できる「リフィル処方」も対応しています。

 経営理念は「挨拶、笑顔、感謝」。利用者への接遇を徹底するのはもちろん、現場スタッフ一人一人が働きやすい環境づくりや、スキルアップの機会も重視。専門性の向上に加え、幅広い学びや趣味を応援し、誰もが活力を持って働ける薬局を築いています。

#chapter2

人生を通して燃え尽きることなく努力し続ける姿勢で、進化する店舗づくりに挑戦

 奈良県・広島県の調剤薬局やドラッグストアで、薬剤師として17年以上現場経験を重ねてきた宮本さん。少子高齢化や医療保険制度といった社会課題に直面しながら、薬局の存在意義を問い続けてきました。
 「薬局と別の何かを合わせた新しい価値を創造したい」と独立を果たしますが、2店舗目となる医院併設店舗は医院閉院により1年で閉局。大きな挫折を味わいました。

 「25歳で打ち立てた人生計画に沿って堅実に進めてきた歩みが、脆くも崩れ去って負債だけが残りました。しかし、立ち止まっている時間はありません。覚悟を決めて、複数店舗運営に舵を切り、とにかく各方面へ働きかけ続けました」
 
 困難を乗り越えられたのは「ブレずに迅速な決断を重ねたことに尽きる」と振り返ります。

 現在掲げる人生の目標は、「年収1,000万円以上」「100坪の家を持つ」「子どもが自分を超える姿を見届ける」。一見すると、野心的に映りますが、その根底にあるのは「人生を通して燃え尽きることなく努力し続ける」という宮本さんの哲学です。

 「あえて数値で示す目標には、仕事や学びを怠らず、優れた能力を持っている人に対し、自分自身もその領域に近づくことを生涯抱き続けるという、継続を課す意味を込めました。また子どもたちに簡単に超えられるような自分であってはならないという覚悟でもあるのです」

その言葉通り、学びを重ねて専門性を高め、新たな挑戦に立ち向かう姿勢を貫いています。

#chapter3

複数店舗のネットワークを生かし、防災・交流の拠点として地域のニーズに応える

 「地域医療の一翼を担う薬局は、町のインフラの一つ」と考え、地域密着薬局だからこそできる取り組みを追求してきた宮本さん。

 スタッフ一人一人を公私にわたって支援し、独立開業を後押しする体制も整えています。将来的には相互に人材を融通しあうなど、新たなビジネスモデルも構想中。さらに、豊富な知見を広く提供するべく、書籍の執筆や一般市民対象の講演会に登壇するなど、個人としても積極的に活動しています。

 一方で、志を同じくする近隣の3店舗と連携し、定期的に共同で研修や勉強会を開催。「薬局へ行こうプロジェクト」にも参画し、地域医療の要や交流拠点としてだけではなく、防災面でも地域に貢献できる仕組みづくりを進めています。

 「まずは顔を知っていただこうと、お祭りへの出店を企画しました。軟膏容器を子どもたちに人気の釣りゲームにアレンジし、中に入れたデコレーションシールで自分だけのオリジナル容器を作ってもらえるようにしています。幅広い世代が楽しみながら薬局に親しんでいただけるような工夫も凝らしました。遊びを通じて、白衣や薬局をより身近に感じてもらえたらうれしいですね」

 「MSファーマシー」の社名には「みんな、幸せ」「未来、創造」「身近な、相談場所」といった思いが込められています。

 「元気がない時だけではなく、いつでも元気をもらえる場所に」。次世代の薬局を目指す宮本さんの挑戦は、これからも続きます。

(取材年月:2025年8月)

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専門家プロフィール

宮本誠二

地域医療や防災・交流の拠点となる次世代の薬局をつくるプロ

宮本誠二プロ

薬剤師

株式会社MSファーマシー

利用者と従業員、地域の幸せな未来のために「処方箋がなくても訪れたい場所」を目指し、学びと挑戦を止めず、進化する薬局づくりに挑戦。複数店舗のネットワークで防災ほか地域のニーズに応える

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