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生産性の向上につながる、食品メーカーの製造ラインを設計・製作

食品生産ラインに必要な諸機械を設計・製造するプロ

大本圭介

大本圭介 おおもとけいすけ
大本圭介 おおもとけいすけ

#chapter1

分業制ではなく、案件ごとに担当者を立てて各工程を担い完成まで一貫して対応

 バナナやミカンの皮をむく、1トンものイチゴのヘタを1時間で切り取る、ブドウから種だけを取り除くなど。繊細で手間暇のかかる業務を的確にこなし、生産性を上げる設備機器を展開するのは、広島県三原市の「森川鉄工所」です。

 食品メーカーを対象に、製造ラインの設計から製作、設置、メンテナンスまでトータルに対応。1946年の創業以来、長年にわたって培ってきた技術力とノウハウで、顧客の要望を形にしてきました。

 「既製品というものはほとんどありません。お客さまから『こんなことはできない?』とのお声が掛かると、その都度プランを構築しています。全国で1台しか入れていないオンリーワンも多々ありますよ」

 そう話すのは、同社の代表を務める大本圭介さん。経営者として会社を切り盛りしながら、自ら設計も手掛けます。

 「設計は奥が深く、その瞬間に浮かんだアイデアが唯一無二の正解というわけではないんです。もしかしたら、自分のコンディションが違えば、全く別のやり方がひらめくかもしれない。専門性はもとより、発想力を頼りに一から組み上げていく作業が魅力だと感じます」

 1台の製造装置が完成するまでには、図面の作成や加工といった、いくつものプロセスがあります。大本さんのもとでは、分業制を敷かずプロジェクトごとに担当者を立て、全ての工程に携わるのが特長です。「効率的ではないかもしれませんが、一つの案件を最後まで同じ者が担うことに重点を置いています。一貫して受け持つことで、お客さまのニーズを細やかに反映すことができますからね」

#chapter2

大学で建築を学び、親戚である先代に誘われ入社し33歳で社長に就任

 1968年、東広島市で生まれた大本さん。高校を出るまで地元で育ち、その後は九州の大学で建築学を学びます。学生時代から建設会社でアルバイトに励み、「大学卒業後はさらに実務を重ね、将来は自分で設計事務所を開きたい」と展望を描いていました。

 ところが卒業間際のある日、親戚でもある同鉄工所の前代表、森川忠良さんに「いずれは後を継ぐつもりでうちに来てくれないか」と誘われます。

 自分で役に立てることがあればと、次期社長候補として赴くことになりましたが、決して偉ぶるようなまねはしまいと、心に誓ったとか。「人の上に立つのであれば、周りの社員たちより知識も経験も豊富でなければいけません。知識は努力次第で手に入るので一生懸命勉強しましたが、経験は一朝一夕では身に付きませんから、社外の先輩経営者たちに積極的に教えを請いました」

 自己研さんに努めてきた大本さんが代表に就任したのは、入社から10年がたった33歳のとき。先代からの急な打診で驚いたと言います。「当時は専務の立場で、ナンバー2として伸び伸び職務に取り組んでいましたし、身に余る話でもあったので、正直あまり乗り気ではなかったんです。ただ、妻に相談してみたところ、『どうせやるなら早い方がいいよ』と。その一言に背中を押されて決断しました。同じポジションに甘んじていても成長はなかったでしょうから。30代半ばを迎えようとしていた私にとっても『いいタイミングだった』と、今では思っています」

大本圭介 おおもとけいすけ

#chapter3

2023年1月に新工場を開設。レーザー加工を内製化するなど業務を拡充

 2001年に大本さんが社長、森川さんが会長になり新体制がスタートしましたが、その2年後に森川さんが病気で急逝。「突然のことでした。もしかしたら自分の体のことを分かっていて、交代を急いだのかもしれません」と振り返ります。

 森川鉄工所の命運を託された大本さんは、早朝から深夜まで必死に働きます。「1年間のうち、360日は工場に来ていました。今同じことをしろと言われても無理です。若かったからできたことでしょうね」

 事業運営にまい進し、「お客さまに頼られる存在でありたい」と語る大本さん。モットーは、どんなに難しい仕事の依頼もむげに「できません」と断るのではなく、まずトライすること。ただ、設計・製造自体は可能であっても、予算との兼ね合いから商談が進まなくなるケースも珍しくないそうで、試行錯誤の日々を送ることも。

 少しでも顧客の期待に応えたいと、2023年1月に三原市久井町に新工場を開設。新たにレーザー加工機を導入して外注の手間やコストを省くとともに、従来の2.5倍の作業スペースを確保しました。「2021年から、お客さまに大きな宿題をいただいていました。できるだけ早くそれを完成させたいと考えていたところ、今回、事業再構築補助金の採択を受けることができましたので、規模の拡充に至りました」

 七十余年の歴史を持つ鉄工所を率いる重責と誇りを胸に、「これからも生産ラインに関する課題に向き合い、お客さまと一緒に解決に取り組んでまいります」と力を込めます。

(取材年月:2023年1月)

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大本圭介

食品生産ラインに必要な諸機械を設計・製造するプロ

大本圭介プロ

食品製造装置メーカー

株式会社森川鉄工所

長年食品メーカー向けに生産に必要な機械設備の設計・製造を手掛けてきました。経験のない難しいご要望でも技術的にあきらめず、柔軟な発想と培ってきた技術力で対応します。2023年1月に新工場が稼働しました。

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