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音楽教育と運動指導の資格を持つ講師が“演奏できる身体づくり”をサポート

音楽演奏向上のために体の使い方を指導するプロ

相原尚美

相原尚美 あいばらなおみ
相原尚美 あいばらなおみ

#chapter1

子どもからプロミュージシャンも通う音楽演奏とボディーワークを結びつけたレッスンを展開

 「歌唱で自分の声を響かせ、楽器で音を作り出す上でも体の動きが土台となります。音楽のイメージを自在に描き出すためにも“演奏できる体づくり”をしましょう」

 そう呼び掛けるのは、広島市で「Consolo Music Studio」を主宰する相原尚美さん。中学・高校の音楽教員免許と、スポーツや日常生活における姿勢や動作を整えるメソッドを開発した、日本コアコンディショニング協会認定のアドバンストトレーナー資格を保有しています。

 「教室には、グランドピアノのほか、ストレッチポールやバランスボールを用意しています。体操やエクササイズなどのワークを行いますので、動きやすい軽装でお越しくださいね」

 相原さんはピアノとボーカルを中心に、月2回・4回の通常コース、コンクールや受験対策、短期集中コースなどを展開。体づくりでは、年齢や音楽のキャリア、ジャンル、楽器の種類を問わず幅広く迎え入れ、子どもからプロのミュージシャンなど老若男女が訪れます。

 「当方では体の正しい使い方を覚えることを重視し、演奏と『ボディーワーク』を結びつけたレッスンをしています。全身を支える背骨まわりの筋肉を緩めて可動域を広げ、手足と連動させていく感覚を身に付けます」

 「ボディーワーク(bodywork)」とは、1970年代アメリカで発祥した「体と心は一つ」といった考え方。手技や動きを通じて「body」に働きかけることで、自分自身の体について認識を高め、改善を目指すものです。身体表現を伴う音楽や演劇などに広く応用され、海外では芸術大学や音楽大学でも取り入れられています。

#chapter2

学校現場で演奏時の体の使い方に興味を持ち、大学院で研究論文も発表

 「例えば緊張で声が高く浮いてしまう時は、体の重心も上がっています。『うわずらないように』と頭で考えるより、下半身の安定にフォーカスします。自分でコントロールできるフィジカルな部分を先に整えることで、思考が後からついてくることもあります」
 
 相原さんがボディーワークと出会ったのは、中学校や高校に勤めていた頃。吹奏楽部顧問として指導方法を模索する中、自身に腱鞘(けんしょう)炎が、生徒に顎(がく)関節症が生じ、演奏時の体の使い方に興味を持ちます。

 仕事の傍ら講習会に参加。心身の緊張にアプローチするアレクサンダー・テクニーク、身体構造や機能などを理解するボディ・マップ、合理的に力を発揮する古武術などを学び、指導に生かしてきました。

 家庭の事情で公立学校の教諭を退職したことを機に母校の広島大学大学院に入学。10年余りの学校での音楽指導経験と院での研究成果を論文にまとめました。

 「調査により、音楽演奏者の約8割が肩や腰に違和感を抱えていることが分かりました。文献でも局所性ジストニアや腱鞘炎などの傷害で、ミュージシャンが悩んでいることが判明しました。スポーツと同様、音楽も体を酷使し、ケガや不調につながる恐れがあります。アスリートのケアについては研究が進む一方、音楽分野ではあまり目を向けられていない。なんとかしなければと思いました」

 非常勤講師として学校現場に復帰した後、“演奏できる身体づくり”を広く伝えるべく、2014年に教室を開設しました。

相原尚美 あいばらなおみ

#chapter3

首都圏への出張レッスンや動画配信も開始。海外にも体の使い方を伝えたい

 「プロもアマチュアも悩みは同じ」と相原さん。音楽演奏時の痛みや違和感で、マッサージや整体などの対処で一時的に楽になっても再びぶり返すということがあります。

 「技術を磨いているにも関わらず、思い通りのパフォーマンスができないというのも課題です。音は“結果”なので、音を紡ぎ出す“過程”である動きを見直すのが重要。身体的な負担も演奏も、体の使い方を変えることで良い結果が期待できます」

 相原さんは、楽器を奏でたり発声したりする様子を確認した後、立ち方や重心の位置をレクチャー。「音が全然違う!」と驚く人も多いとか。

 「演奏がうまくいかないことで苦しい思いをしている人に、視点を変える機会を持ってほしいと、首都圏への出張レッスンや動画配信も始めました。YouTubeには海外からもコメントが届き、音楽は国境を越えるけれど、音楽家の体の悩みも世界共通なのでは?と気づきました」。

 英語も勉強中で、演奏テクニックに適応できる体の使い方を伝えるとともに、海外では知られていない日本の音楽や楽曲も届けていきたいと意気込みを語ります。

 「教員時代から含めると、音楽を教えて約30年。指導しながら自分自身も音楽演奏が楽しいと感じます。SNSなどで、100歳近い方がピアノを弾く姿を拝見することもあり、私も80歳まではピアノを弾くのが目標の一つです。生涯にわたって現役でいるには体が資本。良い音を出すためのアドバイスを通じて、長く、楽しく演奏を続けるためのサポートをしていきたいですね」

(取材年月:2023年11月)

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専門家プロフィール

相原尚美

音楽演奏向上のために体の使い方を指導するプロ

相原尚美プロ

ミュージック・インストラクター

Consolo

ピアノ・歌中心の音楽指導に運動生理学や機能解剖学に基づいたワークを入れ、音楽演奏を楽しむ方々に「演奏できる身体づくり」を目指したレッスンを提供。年齢・性別・音楽歴・ジャンル・プロ・アマを問わず指導。

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