相談者自身の力を引き出すカウンセリングのプロ藤沢敏幸

相談者自身の力を引き出すカウンセリングのプロ

藤沢敏幸

夫婦やカップル2人で受ける「カップル・カウンセリング」を通じて、より良い人生をサポート

　各線広島駅から徒歩約10分の所で「カウンセリング・オフィス藤沢」を主宰するのは、教育現場などに赴き、安田女子大学栄誉教授も務める藤沢敏幸さん。心理療法のエキスパートとして、特に力を入れているのが夫婦やカップルで受ける「カップル・カウンセリング」です。
　
　「もともと私は、子どものカウンセリングやセラピーを主としていました。落ち着きがない、学校に行かないなど、子どもの不安や不調を追究していくと、親や家族の在り方、関わり方といった問題にぶつかります。心理学の知識や技術を用いて、親御さんたちの心にアプローチする必要性を感じ、カップル・カウンセリングを始めました」

　2人同席を基本とするのは、1人では一方だけの言い分になってしまい、相手の意見や考えなどが見えてこないから。どちらかが相談に抵抗を感じている場合などは、最初は1人で来てもらい、今後の方向性を検討します。
　「話を聞きながら、どうすればパートナーが前向きになってくれるかを導き出していきますが、その過程でカップルのコミュニケーションの課題が見えてきます。当方の働きかけによって、そろって来所されるようになったケースもあります」

　また、避けては通れないのが性に関するすれ違い。なかなかきちんと話ができる場所は少ないため専門的に取り上げています。
　「夫婦の場合、関係が改善することを目指していますが、話し合いをする中で、別居あるいは離婚した方がいいという結論に至る場合もあるでしょう。関係修復だけが目的ではなく、それぞれがより良い人生を送るためのサポートをいたします」

事実婚のカップルや恋人同士も対象。新しい視点を得て関係性が好転することも

　カップル・カウンセリングは、夫婦だけでなく、事実婚のカップルや恋人同士も対象となっています。
　「お互いにとって、本当にこの人でいいのかどうかを見極めるお手伝いをします。海外では『結婚前カウンセリング』が普及していますが、日本ではまだなじみがありません。もっと広まれば、こんなはずではなかったという事態を減らせるのではないでしょうか」

　さまざまな事情を抱える人と接する中で心掛けているのは、相手の声に耳を傾けることです。
　「近年うつ病にかかる方が増えていますが、その大きな原因は対人関係などの心理的なストレスです。当方では、ご本人が置かれている状況や気持ちをじっくり伺うため、カウンセリングは1回につき60～90分、カップルの方は必ず80～90分の時間を取ります」

　目の前の人に真摯（しんし）に向き合うため、「1日に2組もお見えになったらヘトヘトになりますよ」と藤沢さん。傾聴を大切にし、具体的な解決方法を提案することはあまりないと言います。

　「その人が持っている自然治癒力のようなものを引き出せるよう、手を添えていくのです。一度経験されたら分かると思いますが、自分の心の中を吐き出して聞いてもらうだけで、ずいぶん楽になり役に立つものです。その点には自信を持っています」

　相談者からは、「新しい視点を得られた」「目からうろこ」「自分の態度や行動がいつのまにか変わり、家族や周囲との関係性が好転した」といった感想が寄せられるそうです。

子どもから高齢者まで、多岐にわたる経験がカウンセラーとしての幅に

　大学で臨床心理学を専攻した藤沢さんは、広島市の情緒障害児治療施設に開設時から勤務しました。
　「まだ発達障害という言葉もなく、小児の心理療法を行える人材も少ない時代に、子どもたちの心理治療に14年間携わりました」

　その後、安田女子大学に移り教員に。臨床心理学の講義や、臨床心理士および公認心理師の養成に従事する傍ら、現在のオフィスを開設。大学に出勤しない日に、相談者を迎え入れていました。
　2020年の大学退職を機に本格的に軸足を移し、スクール・カウンセラーや、県警の少年育成官に対するアドヴァイス、若手の心理士を指導するスーパービジョンなど、多岐にわたる活動を続けています。

　こうした多方面での経験が、「カウンセリングの幅を広げるのに役に立っている」と語る藤沢さん。子育てに関する心配ごと、職場や家庭の人間関係、男性特有の性的な悩みなどにも応えています。

　「今後は、私より少し先輩の団塊世代のメンタルヘルスにも目を向けていくつもりです。これまでのご自身の人生を振り返りながら、アイデンティティーを確立させていくライフレビューにも取り組んでいきたいですね」

　つらさや苦しさを抱えている人の力になりたいと願う藤沢さん。「心の健康は人が幸せに生きていくために、とても大事なことです。お金や時間を使って心をケアすることにもっと積極的であっていいでしょう。カウンセリングは人対人ですから相性もあります。ぜひ、ご自分に合うカウンセラーを見つけてください」と呼び掛けます。

（取材年月：2022年10月）

相談者自身の力を引き出すカウンセリングで、パートナーとの関係や対人関係で生じた悩みや不安をケア

夫婦やカップル2人で受ける「カップル・カウンセリング」を通じて、より良い人生をサポート

事実婚のカップルや恋人同士も対象。新しい視点を得て関係性が好転することも

子どもから高齢者まで、多岐にわたる経験がカウンセラーとしての幅に

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