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桐生発のスカジャンブランド「キリジャン」を通じ、「機どころ」の誇りと技術を世界へ発信

繊維のまち・桐生の伝統と技術が光る縫製のプロ

岡部利明

岡部利明 おかべとしあき
岡部利明 おかべとしあき

#chapter1

養蚕から縫製まで一貫し、群馬シルク×横振り刺繍の「キリジャン」を展開

 江戸時代の絵師、葛飾北斎の「赤富士」や「神奈川沖浪裏」、伊藤若冲の「群鶏図」、緒方光琳の「燕子花図」など。艶やかなシルク生地に、ダイナミックかつ繊細な刺繍が施されたスカジャンのオリジナルブランド「KIRIJUM(キリジャン)」を展開するのは、群馬県桐生市の「トラストインターナショナル」の代表・岡部利明さん。浮世絵や屏風絵などをモチーフに、アート作品のような一着を作り上げています。

 「職人が足元のペダルで速度を調整しながら、一針ずつ手で図案を描く『横振り刺繍』で糸を幾重にも重ね、立体感や色の濃淡、線の強弱を生み出しています。波や羽など細かい柄が前見頃のファスナーを閉めても、左右の袖にもピタリとつながるよう、縫製には和装の高度な技法『絵羽(えば)』を用い、模様が途切れず一幅の絵画のごとく仕上げています」

 素材は地元・群馬産のシルクで、自ら養蚕に携わり原料から生産。美しい光沢、軽くなめらかな肌ざわりに保温性も備え「見た目以上の良さが袖を通すと伝わる」と、30万円を超える価格にも関わらずリピートで買い求める愛好家も。

 日本の美が息づくデザインと着心地の良さが評価され、著名人が着用するほか、東京の百貨店、大阪・関西万博、ドバイのイベントなどでも大きな反響を呼びました。

 「桐生は古くから織物のまちとして栄えてきました。培われた高い技術で、駐留する米兵土産として神奈川・横須賀で人気だったスカジャンの多くを手掛けてきた実績があります。『機どころ』の粋を集めたキリジャンを、桐生発の伝統工芸として国内外へ発信したいですね」

#chapter2

「桐生ものづくり協同組合」として地域の仲間と協業する体制も構築

 岡部さんは桐生工業高校を卒業後、電気・機械の大手メーカーを経て25歳で独立。運送業で起業し、群馬県に多く在住するブラジル・ペルー系の人材を生かす派遣事業にも乗り出します。

 「繊維関連の会社が集結する桐生は『ミシンがあれば仕事ができる』と聞き、マシン5台を購入して未経験ながら縫製業界に参入。ノウハウを独学しながら、スカーフやネクタイといった小物を中心に多様なアイテムを請け負うようになりました」

 複雑な柄合わせや、国内小ロットから中国での大量生産まで幅広く対応し、保管や配送まで一貫して担う物流体制も完備。難易度の高い試作や納期など、顧客の要望・相談にも柔軟に応え業容を拡充してきた岡部さん。2010年、外国人技能実習生の受け入れを推進していた「桐生繊維製品協同組合」の理事長に就任します。

 「外国人の派遣事業で、煩雑な入管手続きやビザ申請の知見を持っていたことからお声がけいただきました。2015年には『ものづくり協同組合』へ改組し、製造業を中心にビルクリーニング業や農業、介護などさまざまな事業者が加わりました」

 技能実習制度では「優良な管理団体」の認可を取得し、登録支援機関としても幅広い領域で人材不足をサポート。一社では困難な案件でも、仲間の協力で実現する組織へと進化しています。

 「受託製造の場合、個数や単価が発注元に左右されます。自社の強みを生かした商品で『攻めの経営』に転じたいと考えて誕生したのが、桐生の絹と職人技を掛け合わせた『キリジャン』です。横振り刺繍やリブ編みなどは、組合の専門会社さんの力を借りています」

#chapter3

情報発信&交流基地「玉上」や「オリーブプロジェクト」で地域を活性化

 岡部さんらは、2023年4月、桐生市本町の重要伝統的建造物群保存地区にある江戸末期の蔵「玉上(たまがみ)」を、「桐生ものづくり協同組合」の事務局として再生。歴史あるたたずまいで観光スポットになっていることから、組合員の商品を展示したり、活動内容を紹介したり、繊維の産地・桐生の魅力を伝える情報発信の拠点にもなっています。

 「組合のメンバーと取り組んだオープンファクトリー事業では、横振りミシンを巧みに操る様子を間近で見学できる実演、好みの生地を選びパッチワークのように刺繍で留めるトートバッグづくりの体験会などを企画。桐生の技を体感できる場として好評を博しました」

 夜には地元の酒蔵や鮮魚店と連携した交流会「玉上酒場」も開催。街全体を盛り上げています。

 「事務局は、ギャラリーとして地元の若い人たちや移住者の皆さんがイベントを行う際にも貸し出しています。地域内外の人が集い、出会いの輪を広げる場としてぜひ活用してほしいですね」

 岡部さんは地域振興の一助になればと、耕作放棄地にオリーブを植えるプロジェクトにも参画。農園として再利用することで景観を美化し、オイルやお茶といった特産品を作ることでビジネスや雇用を創出し、次世代へつなぐ計画です。

 「桐生には1000年以上続く織物の歴史と文化があります。先人の技術を絶やさず、地場産業を活性化させることが私の使命です。伝統を守り、世界へ届けることは、故郷への最大の恩返しだとも思っています」

(取材年月:2025年12月)

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岡部利明

繊維のまち・桐生の伝統と技術が光る縫製のプロ

岡部利明プロ

縫製

有限会社トラストインターナショナル

複雑な柄合わせなど高い縫製技術を誇り、多様な商品に対応。保管や配送まで一貫した物流体制も整っています。柔軟な視点と、桐生ものづくり協同組合の人脈の力で、幅広い試作や納期、量などに対応します。

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