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農法にとらわれず工夫を重ね、適正価格で美しい野菜を提供。成功事例を示し「農」の再生を使命とする

脱サラ農業の工夫と成功事例提供で地方再生を支援するプロ

嶋﨑剛志

嶋﨑剛志 しまざきたけし

#chapter1

野菜のおいしさは“見た目”で決まる。鮮度、つや、張りのある、旬の味覚を食卓へ

 微生物、有機肥料、化成肥料、農薬など、あらゆる手法を適切に使用し、美しくおいしい野菜を育て、「農」の再生を目指す「こうづけの里」の代表取締役・嶋﨑剛志さん。群馬県前橋市の農園で栽培しているのは大根、春菊、枝豆、オクラの4品種で、主に関東エリアの農産物直売所「食の駅」や「地産マルシェ」で販売しています。

 「私の野菜には『こうづけの里』のシールが貼られているので、見かけたら、手に取ってみてください。有機・無農薬栽培ではありませんが、色・形よく、張り・艶もあり、見るからに健康で美味しそうな野菜だとわかると思います。しかも、お手頃な価格です」

 実際に自身の収穫物を大手食品メーカーの関連機関で成分評価したところ、栄養価やうまみ成分の数値が高く、多くのサンプルを試食してきた研究員たちも「おいしい野菜は見た目が美しい」と結論付けました。有機や無農薬の農法では手間とコストがかかり、一般の農家にはハードルが高いため、自社の取り組みを広めて農業を盛り上げたいと話します。

 「有機野菜などは販売価格が高く、なかなか売れないのも事実です。人間も病気になれば薬を服用するように、正しく農薬を使えば病害虫の被害を減らせ、有機肥料と化成肥料の適切な組み合わせは野菜の健康を守ります。他の農家と一緒に、育てやすく、味もよく、適正価格の野菜を消費者に提供することが私たちの役割だと思っています」

#chapter2

海外を飛び回る商社マンから一念発起。日本が元気を取り戻すには一次産業の復活から

 嶋﨑さんは大学を卒業後、海外を飛び回ることに憧れて化学品専門商社に就職。夢をかなえ、電子資材の取引で韓国や香港に駐在します。

 「当時から微生物の可能性を農業に生かす事業を構想していましたが、経営陣は化学分野に注力していたこともあり、なかなか実現しませんでした。そこで微生物系の土壌資材を扱う仲間と独立し『こうづけの里』を立ち上げました。ほぼ思い通りの26年間の商社マン人生を送り、その経験を通して、革新的な技術や商品・人・仕組みを見抜く力と、事業構築力は相当に磨かれたと自負しています」

 また、海外生活を送る中で気付いたのは日本の魅力。長い歴史や文化・伝統を守りつつ、極めて高度な科学技術力も併せ持つ日本の素晴らしさを再確認する一方、最近の日本は活気がなく、衰退していく様に心を痛めていたと言います。

 「日本に再び活気を取り戻すためには、地方の一次産業、特に農業の再生が不可欠と考え、思い切って就農・起業しました。私のような新参者がほどほどに頑張って成功し、道筋を示すことで同世代や若者が参入してくれることを願います。確かに農作業は体力が必要で、定期的に休むことも難しいですが『土や野菜と触れ合える』『人間同士の駆け引きが不要』『規則正しい生活が送れて心身の健康に良い』といったメリットも多い職業です」

 仕事の醍醐味はたくさんの食卓を楽しませていると感じること。販売店に「こうづけの里」の特設コーナーができ、消費者から「枝豆が最高でした」と手紙が届いたり、飲食店から「大根を10本予約したい」との問い合わせが入ったりすると、手放しでうれしいと話します。

#chapter3

農業はライバルの少ない“ブルーオーシャン”。農地を借り受け栽培方法も研修

 前橋市の認定農業者に選ばれ、近年は農家と就農希望者のマッチングも支援している嶋﨑さん。「引退するので農地を貸したいが、知らない人だと不安」という前者と「農業にチャレンジしたいけれど何から始めればいいのか分からない」という後者の間に入り、さまざまな相談に応じています。

 「例えば高齢の稲作農家と、米作りに挑戦したい(現)電気工事士を引き合わせ、2024年度から一緒に田んぼでのお米作りを開始しました。初年度の収穫量も好調で、2025年度は作付面積を拡大していきます。農業は補助金もあり、ライバルの少ない“ブルーオーシャン”なので、ぜひ興味のある方は連絡してほしいですね。現代の農業に必要なのは古き良き時代のやり方に縛られない斬新なアイデアです。決断が難しければ私の法人でアルバイトから始めることも可能です」

 参入にあたっては、農地やビニールハウス、農機具などを借り受け、どんな作物を育てるのか一緒に検討し、栽培方法について研修。販路も紹介しています。YouTubeやSNSが発達した今、インターネットでも優れた農法を学ぶことができ、情報発信もできると続けます。

 嶋﨑さん自身は、ビニールハウスを借り受け、メンテナンスして活用したり、地元の伝統野菜「時澤大根」の復活プロジェクトに参画したり、新たな取り組みも始めました。

 「地方を中心に飲食店の閉店も目立ち、何とか力になりたいので自分の野菜を使ったお店も展開したいと考えています。規格外の野菜も惣菜に加工するなど手を加えることで価値を高め、フードロス削減にもつなげていきたいですね」

(取材年月:2025年2月)

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嶋﨑剛志

脱サラ農業の工夫と成功事例提供で地方再生を支援するプロ

嶋﨑剛志プロ

農業法人

農業法人株式会社こうづけの里

色・形良く、艶・張りもある美しくおいしい野菜を育てるため、微生物、有機肥料、化成肥料、農薬など、あらゆる手法を適切に使用。低コストで価値ある野菜を顧客に届け、農業と地方の再生、事業継承にも取り組みます

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