日本画・表装の技術で表現を支える制作のプロ
岡崎拓
Mybestpro Interview
日本画・表装の技術で表現を支える制作のプロ
岡崎拓
#chapter1
掛け軸の制作・販売を手掛ける「偕拓堂アート」では近年、アニメやキャラクタービジネスに関わる企業との協働プロジェクトにも注力。出版社や玩具会社、ゲーム会社などからの依頼を受け、キャラクターの世界観を、額装や表装という長期保存を前提とした形に仕立てる事業を展開しています。
代表取締役の岡崎拓さんは、「キャラクターを単なる印刷物やグッズとしてではなく、修復しながら受け継げる美術作品として成立させるのが、私たちの仕事です」と話します。
アニメやキャラクターコンテンツは、いまや日本を代表する一大産業であり、文化の一つ。世界中にファンを持つ作品を扱うからこそ、制作には細心の注意が求められ、出版社や玩具会社、ゲーム会社が制作パートナーを慎重に選ぶのは当然のことでしょう。そうした中で、美術作品としての表現力とともに重視されるのが、信頼です。
「商談の際には必ず工房を案内し、絵画制作における伝統的な技術、掛け軸の合理的な構造や、修復を前提とした保存の考え方、作家や職人の技術を直接見ていただいています。例えば掛け軸は、両端を織り込むことで本紙よりもわずかに厚みを持たせ、巻いて保管した際に作品そのものが擦れない構造になっています。また、裏打ちに用いる和糊も、将来の修復を見据えて剥がせる強さに調合されています。きれいに仕立てるだけでなく、直しながら受け継ぐことを前提とした作りです」
こうした合理性や保存思想、作家や職人の手仕事に価値を見いだし、プロジェクトが動き出すケースも少なくありません。
#chapter2
岡崎さんは2012年、同社の代表に就任。常に向き合ってきたのは、「どうすればこの仕事を長く続けていけるのか」という問いです。それは同時に「長年培ってきた日本の伝統技術をどうすれば次の時代に残していけるのか」という問いでもありました。
「営業活動で全国の販売店を訪ね、掛け軸や美術品を取り巻く市場が年々縮小していくのを肌で感じました」と岡崎さんは振り返ります。従来と同じやり方を続けていては、技術の継承が難しくなる。その危機感こそが、経営判断の出発点だったといいます。
キャラクタービジネスの分野に目を向けたのも、こうした問題意識からです。長年培ってきた技術力と制作体制があったからこそ、新たな挑戦への道が開かれました。
同社には、滲みを抑えて絵絹にインクジェット印刷を施す特許技術や、純度の高い金箔を用いて文字やデザインを素材に転写する「本金箔押し」による表現が受け継がれています。さらに、企画から作画、表装、検品・仕上げまでを自社で一貫して担い、年間約5万点に及ぶ表装を手掛けてきました。品質を保ちながら安定した供給が可能な点は、大きな強みです。
また、掛け軸や美術品の卸事業を通じて、全国はもとより海外にも取引先を持ち、作品を安全に届けるための流通や品質管理の知見を蓄積。地道な積み重ねがあるからこそ、キャラクタービジネスにおける協働プロジェクトも、突発的な挑戦ではなく、これまで築いてきた地力の延長線上にある取り組みだと言えるでしょう。
#chapter3
「伝統を守り、受け継ぐ」「次世代を担う、作り手を育む」「現代の生活にとけこむ、新しいアートの開発」。同社が掲げる三本の矢は、理念を掲げるためだけのスローガンではありません。
その根底にあるのは、「日本の伝統技術の担い手が、その技術を仕事として続けていける環境を残したい」という切実な思いでした。
掛け軸や日本画を取り巻く市場が縮小する中で、技術だけを守ろうとしても、仕事がなければ人は育ちません。技術を未来へつなぐには、まず雇用を生み、描き手や職人が絵で生計を立てられる土台を整えることが欠かせない。その考え方が、取り組みの軸になっています。
現在、偕拓堂アートには10名以上の日本画家が社員として在籍。単発の制作にとどまらず、作家が継続的に仕事と向き合える場を用意している点は、同社の特長です。
育成の進め方にも工夫があります。入社後は約1年をかけて、企画、制作、表装、営業など社内の工程を経験し、最後には自身が考案した作品をクラウドファンディングに出品。作品を世に届けるところまでを一貫して体験できる仕組みです。作品の制作だけで終わらせず、「どのように価値として成立させるか」までを学ぶことが、作家として自立する力につながると、岡崎さんは考えを示します。
「技術は、使われ続けてこそ残っていく」。その言葉には、伝統を守るだけでなく、次の時代へとつなげていこうとする強い意思が込められているのです。
(取材年月:2025年12月)
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Profile
日本画・表装の技術で表現を支える制作のプロ
岡崎拓プロ
日本画制作・表装
株式会社偕拓堂アート
日本画・表装の伝統技術を基盤に、企画から作画、制作、検品・仕上げまでを自社で一貫対応。キャラクターやアート作品の世界観を尊重し、長期保存や修復も見据えた美術表現を、安定した品質で形にします。
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