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子どもたちがのびのびと力を発揮できるよう、体からあふれる“自信”をプレゼント

子どもの自己肯定感を育む保育のプロ

河野仁美

河野仁美 かわのひとみ
河野仁美 かわのひとみ

#chapter1

自他を尊重し、幸せな関係を築く「自己肯定感」を育む保育を展開

 自己肯定感とは、自らを認め、ありのまま受容する感覚のこと。自己肯定感が高い人は物事に前向きで積極的に行動することができ、充実感や幸福感につながることが知られています。
 しかし「日本の若者は自己肯定感が低い」と言われ、関係省庁や国内外の機関が行った意識調査でも、生きづらさを抱える若者の姿が浮き彫りになっています。

 「『自己肯定感が高い』とは、自分の良いところも悪いところも受け入れ、自分軸を持つということ。失敗を恐れず、自分を信じる力を伸ばすには、知識や評価を与える前に子どもの“心”を育てることが重要だと考えています。卒園までの最長6年間を通じ、子どもたちに体からあふれ出すほどの自信をプレゼントしたいですね」

 そう語るのは、保育士として25年以上のキャリアを持ち、社会福祉法人「わおん会」が福岡県宗像市で運営する認定こども園「いちごいちえん」の副園長を務める河野仁美さん。
 福岡市にある系列の認可保育園「ストロベリーヒルズ」とともに、2018年から「子どもファースト推進活動」にまい進。若者がのびのびと力を発揮できる社会を目指し、乳幼児期から自己肯定感を育む保育に取り組んでいます。

 「子どもは身近な大人と関わる中で『愛されている』と実感することで自信が芽生え、『存在が受け入れられている』と感じることで人に対する信頼感が育ちます。自信があれば困難に立ち向かうチャレンジ精神が養われますし、他人と比べて自分を卑下したり、ねたんだりすることなく、お互いを尊重しあって良好な人間関係を築くことができます」

#chapter2

指示ではなく問いかけで、子どもが自分で考え、行動する力を育む

 河野さんは管理職としてスタッフをまとめながらクラス担任も続け、子どもたちの自信を引き出す接し方を追求してきました。
 「まずは気持ちを受けとめます。子どもから発せられる『やりたくない』『怒っている』などネガティブな感情でも、全ていったん受け止めるよう心掛けています」

 一方で、「時には過干渉にならず見守ることも大事。愛情たっぷりに子どもを甘えさせることと、大人の都合で甘やかすことは違います」と話します。
 「例えば朝の身支度で、子どもが『自分で靴下を履きたい』と言い出した場合、『時間がないからママがやるね』と手を貸したくなりますが、ここは我慢。意欲を尊重して待つことでやる気が湧き、諦めずにやり遂げる姿勢が身につきます」

 子どもが自分で判断し、実行する習慣をつけるため、「できる限り指示や命令を出さない」も日頃から意識しているそうです。
 「牛乳をこぼした子に『拭きなさい』と指示するのではなく『こぼれたね。じゃあどうする?』と質問すると『片付けるから先生に手伝ってほしい』と言い、『次はこぼさないでね』ではなく『次からどうする?』と聞くと『両手で持っていくようにする』と答えたことがありました。本人に委ねることで、自主性や思考力が育ちます」

 また、かける言葉にも気を配り、「頑張って」とは言いません。
 「子どもたちはいつも一生懸命。すでに全力投球していますから、『頑張っているね』と本人や周囲に伝えることで、お互いを認め合う雰囲気が生まれます」

#chapter3

園内外でセミナーを開催し、保護者・地域に“子どもファースト”を普及

 「いちごいちえん」では、音感教育、スイミング、体操、英語、サッカー、硬筆教室など、子どもの興味を広げるカリキュラムを展開。子育て支援の一環として「いちごクラブ」も用意し、月に1度、未就園児の親子に園を開放し、月替わりのレクリエーションを行っています。

 「どの活動も『できた』『できない』で評価したり、他の子と比べて順位付けしたりせず、その子なりの変化を見つけて声をかけるようにしています。例えば跳び箱なら『勢いよく助走できるようになったね』など、細かいことでも見逃さずに伝えます」

 河野さんは個々の成長を後押しする具体的な事例を、日々の職員会議や園内研修でスタッフらと共有。保護者向けにはコミュニケーションアプリを活用し、画像を添えて発信しています。最近では、園のSNSを通じた育児相談も増えてきました。

 「先日は、第2子が生まれたばかりの保護者さまから、上のお子さまへの愛情の伝え方についてご相談いただきました。子育てに悩んでいる保護者さまに、私たちの思いやノウハウを知っていただくため、今後は園内外でお話しする機会を増やしていきたいですね」

 家庭、保育園、子育て支援センターなど、子どもに関わる大人が一人一人の主体性を大切にし、挑戦をサポートすることで子どもの心が安定し、自己肯定感が高まると考える河野さん。在園児の保護者をはじめ、地域の子育て関係者、保育士・幼稚園教諭を志望する学生などに向け、セミナーなどを開催していきたいと展望を描きます。

(取材年月:2024年7月)

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河野仁美

子どもの自己肯定感を育む保育のプロ

河野仁美プロ

保育士

社会福祉法人わおん会

前向きに充実した人生を送る上で基礎となる「自己肯定感」は、乳幼児期の大人との愛情ある関わりで育ちます。子ども一人一人の気持ちを尊重する保育で、自信や自主性、考える力、他者への信頼感などを育みます。

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