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今ある物を最大限に生かし、美観を再生。日本の文化を後世に継承

木材をよみがえらせ、神社仏閣や古民家を再生・保存するプロ

山中康弘

山中康弘 やまなかやすひろ
山中康弘 やまなかやすひろ

#chapter1

「Air鉋」と御本堂美装「匠」の技術で、神社仏閣をよみがえらせる

 「1枚皮をはぐことでよみがえらせるというのが、私たちの売りです」と話すのは、「鳳(はるか)」代表の山中康弘さん。

 一戸建て住宅の防水、シロアリ防除、断熱工事など建築関連事業を展開し、年間約2000棟の施工実績を誇ります。近年は木材保存事業に焦点を当て、「千年の木は千年の氣が宿る」をコンセプトに、神社仏閣や古民家の再生保存に力を入れています。

 「当方では、『Air鉋(エアーかんな)』という特許技術を採用しています。木部の表面を数ミクロン削ることでカビや腐食の原因となる腐朽菌を取り除き、長寿命化を目指すものです。水を使用しない乾式工法で、木の微粒子をぶつけるのでいずれは自然消滅し、環境にも優しいのです」

 薬品を用いた表面溶解法とは異なり、木材本来の色合いを引き出し、美観を高められるのが特長。金属や樹脂など多様な素材にも応用できます。装飾部分や曲面、除夜の鐘、こま犬などの手入れで重宝し、寺の修復では従来の約10分の1の費用で済むそうです。

 「御本堂美装『匠』では、自然由来成分の液剤を使って、金箔や漆が施された装具などのくすみを除去し、輝きを取り戻します。解体する必要がないため工期短縮や費用削減がかないます。エックス線解析、床下ロボット、ドローンなどの非破壊検査で壊さずに内部の状態を把握してベストな方法をご提案させていただきます。外観の前に内部の状態をチェックします」

 山中さんの根底にあるのは、「なるべく今ある物を残し、最大限に生かす」という考え方。神社や寺の保全を通じて、日本に息づく精神や価値観を後世に伝えるという強い意志を持っています。

#chapter2

空き家など住宅を取り巻く社会問題に目を向け、古民家再生にも力を注ぐ

 「私たちが培ってきた知見や、革新的な技術を使えば、社会が直面する難題に光を当て、解決の道を切り開くことができるかもしれない。そんな希望に満ちた思いが動力となり、事業運営の礎にもなっています」と山中さん。「Air鉋」を駆使し、古民家再生にも情熱を注ぎます。

 「アメリカに訪問したのをきっかけに、先人たちが営んできた日本の暮らしの豊かさを再認識しました。最近では、福岡でも1カ月ほど長期滞在をする外国人観光客が多いようです。今後ますます増えるであろう空き家を有効活用し、木や紙、土で作られた昔ながらの住空間を、ぜひ体感してもらいたいと考えています」

 空き家の増加によって街の景観が変わり、不動産の資産性が損なわれます。年々深刻化する問題を解消すべく、山中さんは誰もが潤う施策を模索しています。

 「所有者は、売却や賃貸に出したくても内装などが古いままではニーズがなく、税金の支払いなど維持管理の負担を抱えています。代々続いた実家などを手放したい人から買い取り、傷んだところを繕って再び命を吹き込むことで新たな役割を与え、持ち主や利用者、地域に還元していく『三方よし』を実現していきたいと思っています」

 住む人がいないまま放置された家屋に害獣が発生し、近隣に被害が及ぶことを懸念して音波を用いた対処も講じる山中さん。
 「建物を次代に継承するのもしかり、地域や環境に配慮した持続可能な事業で、世の中に貢献していきたいですね」と語ります。

山中康弘 やまなかやすひろ

#chapter3

日本の文化を守ることが従事者のやりがいとなり、技術力の向上にも寄与

 「Air鉋」は滋賀県に本拠を構える企業が開発した技法で、山中さんは代理店として参画。コロナ禍以降に木材保存事業に軸足を移し、建設業界の人材不足にも打開策を示していきたいと力を込めます。

 「就職世代に働きかけていく上で、『日本の文化遺産を守る役割を果たし、世の中の役に立つ』という大義は、多くの求職者の心に響くのではないかと期待しています」

 事実、社員のいずれもが「文化を残し、100年後につながる仕事」と自負していることからモチベーションが高く、技術の習得も早いと言います。
 「おかげさまで『歴史的に価値のある建造物の修繕を手掛けている企業なら』と、多方面からお声掛けをいただき、請け負う業務の幅も広がっています」

 大学時代はセラミック研究に従事していた山中さん。卒業後はその分野に進みますが会社が解散し、転職を経て1999年に仲間とともに「鳳」を創業しました。

 「事業範囲は福岡県と九州の近隣県で、神社仏閣に関する案件は全国で対応します。古民家については、福岡県を中心に活動を広げる計画です」

 会社名の「鳳(はるか)」は、中国の戦国時代の思想書「荘子」の一節から。平和な時代に翼を広げて飛ぶ鳳凰の雄を象徴しています。
 「当初は偶然つけた社名でしたが、今では私たちの志や取り組みを的確に表していると感じます。皆さんにも、親しみを込めて呼んでもらっています」と笑顔を見せます。

(取材年月:2023年11月)

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専門家プロフィール

山中康弘

木材をよみがえらせ、神社仏閣や古民家を再生・保存するプロ

山中康弘プロ

職人

株式会社鳳(はるか)

神社仏閣や古民家の再生保存に特化。木材の表面を極薄に削り、美観を再生する工法や、自然由来成分の液剤を使用した環境に優しい方法を用いて文化財を修復する。「千年の木は千年の氣が宿る」がコンセプト。

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