建設現場のICT化をサポートするプロ野﨑芳彰

建設現場のICT化をサポートするプロ

野﨑芳彰

ドローンや赤外線カメラなどを駆使し、測量や計測、点検、データ作成に対応

　2016年から国土交通省主導の下で始まった「i-Construction（アイ・コンストラクション）」。建設現場へ、コンピューターやネットワークといったICT(情報通信技術)を導入することで生産性を向上し、きつい、危険といった労働環境を改善する取り組みで、人手不足の解消にも役立ちます。

　近年は、i-Constructionが定める「ICT活用工事」に沿った施工を求める公共入札も目立ってきました。実施方針には5項目あり、「①3次元起工測量」「②3次元設計データ作成」「③ICT建機による施工」「④3次元出来形管理等の施工管理」「⑤3次元データの納品」です。

　案件を請け負う業者にとって、これらに対応することは有用ではありますが、一朝一夕で実現できるようなものではありません。「当方では、いずれのプロセスも一貫してお手伝いすることができます。ICT化を推進していく上で壁にぶつかっている事業者さまは、ぜひ一度お声掛けいただきたいですね」

　そう話すのは、福井県越前市の「Yoc.Links（ヨッシーリンクス）」代表の野﨑芳彰さん。ドローンや赤外線カメラ、レーザースキャナーを駆使し、測量や空撮、計測、点検などを幅広く手掛けています。

　「私は、創業する前まで20年近く建設会社で働いていました。実務についてよく分かっているので、お客さまがどんな情報やデータをどんな仕様で提供してほしいのか理解しています。この点に加えて、収益性を高めるために工程を見直すご相談もお受けできますし、建設用語を交えての専門的な打ち合わせもスムーズに進められます」

仕事の効率化など培った知見を役立てたいという思いから独立

　1978年、越前市で生まれた野﨑さんは、福井工業高等専門学校・環境都市工学科を卒業後、県内の建設会社に就職。現場管理や積算業務、ISO認証（世界基準のマネジメントシステム規格）の取得、社員育成など多様な職務に従事します。

　「要するに『何でも屋』ですね。おかげで、工期に合わせた作業の進め方、見積もりといったお金の算出、人材という資源の生かし方と、さまざまな知識やスキルが身に付きました。また、たくさんの方と関わることもできました。いい勉強をさせてもらったうえネットワークも広がり、私の財産になっています」

　入社当初から、仕事を効率的かつ正確に済ませるために何が必要か考えることが好きだったという野﨑さん。いつの間にか社内屈指のデジタル通になっていたそうです。

　「手描きだった図面を設計ソフトのCADで制作したり、人が各地点に赴いていた測量をドローンで実施したりするだけで、驚くほど生産性は高まります。どうしても採用したいツールがあったときは、会社側と交渉もしていました」

　野﨑さんが自社を立ち上げたのは2018年10月。勤め先ではそれなりの立場に就いていましたが、自分が培ってきた経験知をもっと大勢のために役立てたいという思いが強くなったからだとか。

　「光栄なことに会社からは引き留めていただきましたが、独立したいという気持ちが勝りました。その代わり、業務の引き継ぎは半年かけてしっかりと済ませ、私がいなくても問題ない状態にして退職しました」

農薬散布や森林調査など、農業・林業の分野でも自社の技術を生かしていきたい

　起業に際して不安もあったそうですが、それ以上に先進的なテクノロジーを取り入れた事業に期待と自信があったという野﨑さん。実際、最初のクライアントには自らアプローチしました。

　「ICT化の意義や効果を説明したところ、『ぜひお願いしたい』と快諾してくださいました。ICT活用工事の5項目についてトータルでサポートし、お客さまは大満足。私自身も、思い描いた通りの結果が出てものすごく興奮しましたね」

　野﨑さんにオファーする法人の多くは建設業者ですが、今後、自社のサービスを農業・林業の分野にも応用していきたいとも。例えば、ドローンを使った農薬の散布や森林調査。担い手が減少している業界の一助になればと語ります。

　「現状では、森林に生えた木々の本数やそれぞれの高さ、幹の太さまで計測できます。これだけでもすごいですが、まだ十分とは言えません。各種データを樹木の種類ごとに取得できるようになれば、大きな革命となるでしょう。その技術はもう少しで確立しそうなので、開発動向を注視しながら、当方のノウハウと絡めて新しい提案をしていきたいと考えています」

　現在、野﨑さんは事務員と2人で会社を回していますが、依頼の数が増えてきていることから、徐々にさばき切れなくなることを心配しているそうです。「これからは人材の採用と育成にも力を入れていきます。といっても、いきなり何十人も入れるわけではなく、4～5人の少数精鋭体制を構築していくつもりです」

（取材年月：2023年8月）

建設現場の生産性向上につながるICT技術の導入をサポート

ドローンや赤外線カメラなどを駆使し、測量や計測、点検、データ作成に対応

仕事の効率化など培った知見を役立てたいという思いから独立

農薬散布や森林調査など、農業・林業の分野でも自社の技術を生かしていきたい

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