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社会性や非認知能力、実行機能の獲得など、子どもが自分らしく「生きる力」を伸ばす療育サービスを提供

「生きる力」を伸ばす療育サービスのプロ

八木佐織

八木佐織 やぎさおり

#chapter1

特性に応じた児童発達支援と放課後等デイサービス「おくらっこくらぶ」を展開

 「子どもたちの『生きる力』を伸ばし、自分らしく咲き行くお手伝いをします」と話すのは、「きざはし」の代表・八木佐織さん。愛媛県今治市で、未就学児を対象にした多機能型児童発達支援と、小学生から高校生に向けた放課後等デイサービス「おくらっこくらぶ」を運営しています。

 「当方はコミュニケーションを通じた社会性の獲得や、自然の中で遊びながら、環境に応じて調和のとれた動作や反応をする感覚統合などに力を入れています」

 八木さんのもとでは、モンテッソーリ教育にヒントを得たお仕事遊びを、自閉症児のために考えられた「TEACCHプログラム」のワークシステムに取り入れた微細運動と、自然の中で大胆に遊ぶ粗大運動とをバランスよく組み合わせた療育を行っています。

 「小学生以上のワークでは数や文字の概念を育て、生活に根差した学力が身に付くよう意識しています。文字への理解が深まると、雨が降ったら傘を差す、人がたくさんいるから静かにするといった思考能力の向上につながります。また将来の就労を見据え、実行機能を働かせ自ら座って作業に集中できる力も養います」

 ワーク後の歩行訓練は、職員と手をつないで公園まで歩いたり、近隣の野山を散策したり、体を動かしながら、相手のスピードに合わせて歩く術を体得します。

 「小さい子には公園の写真を見せて『ここに行けるよ』『滑り台があるよ』と声を掛け、楽しんで歩けるように励まし、中高校生には自ら考えて歩くことを促しています。成長に伴い、職員に導かれていた子たちが年下の子の面倒を見るようになり、一番前を歩く職員と離れないよう歩くこともできるようになります」

#chapter2

活動を通じて人と人が寄り添うための「コミュニケーションの入り口」を育む

 感覚統合では、視覚や聴覚といった感覚を脳で分類し、交通整理のごとく渋滞しないように整えます。障害によって統合がうまくいかないと、例えば人の話を聞くときに別の物や音が気になって集中できないことがあります。

 「当方は、山や川、海などに出掛け、木々の葉や清流、波が奏でる音、土や砂、水、石などの感触を体感することで五感を刺激し、思いっきり体を動かす中で立つ、歩く、走るといった動作やバランス感覚を鍛えます」

 未就学児の自由遊びでは、職員が適切に介入しながら子どもの様子を見守ります。

 「おもちゃの取り合いや、ちょっとしたけんかを経験することも必要です。他者と関わり、甘えたり我慢したりを繰り返す中で、困ったときに『助けて』が言えるようになります。人と人が寄り添うために一番大事な『コミュニケーションの入り口』を育みます」

 他にも、先生のピアノに合わせて楽器の演奏やダンスをしたり、長期休暇には調理体験やちぎり絵を楽しんだりすることも。

 活動を通じて子どもの情緒や行動が少しずつ落ち着き、保護者も子どものストレスを和らげる方法などが分かり、家族に笑顔が増えることがうれしいと八木さんは語ります。

 「利用者でない親御さんの相談にも応じ、将来のことを一緒に考えたり、必要な機関につないだりすることも多いです。『親身にアドバイスしてもらえ道筋が見えてきました』と言ってくださることもあり、信頼を寄せてもらえるのは大変ありがたいですね」

#chapter3

不登校の子どもと保護者のためのコミュニティー「のちはれスペース」も用意

 保育士と介護福祉士の資格を持ち、保育園や老人保健施設に勤めた八木さん。子どもたちの発達を支える放課後等デイサービスの存在を知り、かねてより「障害児教育に関わりたい」と考えていたことから児童発達支援管理責任者の資格を取得し、療育に携わるように。2021年に「おくらっこくらぶ」を立ち上げました。

 学校生活になじめない子どもの一助になればと、不登校の子どもと保護者のためのコミュニティー「のちはれスペース」も用意。座談会や料理教室、イベントなど、子どもが外に出る機会を設けるほか、当事者同士が悩みを共有し、情報交換する場となっています。

 自身も3人の子を持ち、長男は発達にでこぼこがあり、次男と長女は一時、不登校だったと言います。
 「次男が不登校のとき、近所の児童民生委員さんがお話を聞いてくれて心が軽くなりました。転校を機に登校できるようになり、報告とお礼に伺うと『お礼はいらないのよ。その代わり、あなたの後に続くお母さんたちをサポートしてあげてね』と言われ、わが子を案ずる皆さんのお力になりたい一心で事業を始めました」

 八木さんは多様な個性を持つ子どもたちを迎え入れ、自らの経験も生かして保護者の思いをくみ取ります。

 「今は子育てに役立つ情報がインターネットで手軽に入手できますが、書かれている内容通りにいかず焦りや不安を感じることもあるでしょう。昔の井戸端会議のように人と人が顔を合わせて話すことで、お子さんやご家庭に合ったヒントを見いだしていただければ幸いです」

(取材年月:2024年11月)

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専門家プロフィール

八木佐織

「生きる力」を伸ばす療育サービスのプロ

八木佐織プロ

障がい児通所支援事業

一般社団法人きざはし

多機能型児童発達支援及び放課後等デイサービス「おくらっこくらぶ」を運営しています。コミュニケーションを通じた社会性の獲得や、自然の中での遊びによる感覚統合などに力を入れています。

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