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熟練の技術と豊富な経験で、家庭からホールまでのピアノを調律

熟練の技術と経験豊富なベテランピアノ調律師

内田三郎

ピアノ調律師 内田三郎さん
ピアノ調律の作業風景

#chapter1

ピアニストとの二人三脚

 ピアノの調律を「ピアニストと二人三脚で作り上げる仕事」と語る調律師の内田三郎さんは、40年以上ものキャリアを持つベテラン調律師です。地元浜松市のピアノ製造工場で4年間ピアノの製造について技術を修得し、1971年頃からは関東に拠点を移して家庭のピアノから学校やコンサートホールなど、あらゆるピアノの調律に携わってきました。

 これまでたくさんのピアニストの調律を手掛けてきた内田さんは「ピアニストがピアノを介してどう音楽を表現していきたいのかを受け止め、それに対してどう調律していくのか」ということを常に意識しながら仕事をしています。

 「それぞれピアニストによって(ピアノに対する)向き合い方が異なるため、まずはその人について知ることが大切」と内田さん。初めて担当するピアニストであれば、事前にCDを購入して研究するなど、ピアニスト一人ひとりと正面から向き合い「ピアニストの意見をまずは受け止め、そこから出来ることと出来ないことを見極めていく」と言います。演奏者と技術者とでは知識も感覚も異なるため、漠然とした表現の中からその真意を汲み取らなければならないことも多く「時に意見の食い違いが生じることもある」とも。そうした中で大切になるのが「コミュニケーション」だと教えてくれました。

 二台として同じピアノはなく、それぞれの(ピアノの)個性をつかみながら、ピアニストの要望に応えていく調律師。音を〝聴く〟という技術に加えて、内田さんは相手の要望を〝聞く〟ということも大切にしています。こうした内田さんの調律に対する真摯な姿勢は、多くの信頼関係を築くだけでなく、プロとしての意識の高さを感じさせてくれます。

#chapter2

「調律」「整音」「整調」へのこだわり

 内田さんの調律に対する一番のこだわりは「調律・整音・整調の三拍子全部そろって、どういう形に持っていけるか」。メーカーや古さに関係なく、どんなピアノであっても、技術と時間を惜しまず、ピアノの限界を探っていく。そうした姿勢を、日本で初めてピアノの設計をしたと言われている師の大橋幡岩氏と、スタインウェイに関して日本を代表するコンサートチューナーの杵淵直知氏から学びました。

 「調律」は、音程を88鍵にわたって弦の張力を変えながら、ハーモニーの響きのバランスを整えていく作業。それに対して「整音」は、針を入れたりしながらハンマーフェルトの形や状態を整えていくことで、音楽を語る上で必要な音の伸びや太さ、輝きといった音色や音質を作っていきます。また、弾き応えなど鍵盤を通じてアクション(打弦装置)のタッチの調整を行うのが「整調」。それらすべてが整った上で「コンサートを聞きに来てくれた人と、演奏の感動を〝分かち合う〟ことができた時、仕事に対するやりがいを感じる」と内田さん。ご自身の仕事の結果としてコンサートを聞くことで「足りないものは次へと生かしていきたい」と多くの経験をしてきました。

 調律を担当したお客さまからお礼のハガキやメールをもらうこともあり「自分の信念に基づいてやった結果」だと振り返る内田さんの調律に対する姿勢は、プロとしての意識の高さに加えて「また内田さんに調律をお願いしたい」と思わせてくれる理由の一つなのかもしれません。

 内田さんは現在、プロのピアニストだけでなく、家庭でのピアノの調律も多く担当し「そうした専門的な内容を言葉で伝えることは難しくても、作業をした後では分かってもらえることが多い」と話します。専門性が高い調律という仕事は、人によって受ける印象も言葉による誤解もさまざまで「(言葉で伝えることは)調律以上に難しいと感じることもある」と笑顔を見せる内田さん。しかし、確かな技術は「音楽を楽しみたい」とするたくさんの人の耳と心とを満足させることができるのではないでしょうか。

ピアノ調律の作業風景

#chapter3

スタインウェイに想いを乗せて

 内田さんが営む「ウチダピアノ調律所」には、内田さんの強い想いの詰まった、日本では珍しいニューヨーク製のスタインウェイ(CD319<製造番号475304>)が置かれ、「音の抜け感や材質の違いをぜひ感じ取ってほしい」と、試弾も受け付けています。

 20世紀最大の巨匠ピアニストと言われているウラディミール・ホロヴィッツの来日コンサートの思い出を笑顔で語る内田さん。ホロヴィッツが好んで使用していたと言われるニューヨーク製のスタインウェイをホールに持ち込み、「いつか演奏会を開いてみたい」という夢があるのだそう。「その響きをぜひ多くの人に聞いてもらいたい」と想いを募らせます。

 調律という仕事は、「判断基準も人それぞれであり、評価しにくい部分が厳しさであり、難しさもある」と話す内田さん。しかしそうした中で、内田さんがこれまで培ってきた確かな技術と豊富な経験は、演奏者の理想に近づくことができ、納得のいく音づくりを担ってくれることでしょう。

(取材年月:2012年8月)

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内田三郎

熟練の技術と経験豊富なベテランピアノ調律師

内田三郎プロ

ピアノ調律師

ウチダピアノ調律所

40年以上の実績と経験を持つベテラン調律師で、家庭用からコンサートホールまであらゆるピアノの調律を行う。また、調律のみならず、ピアノに関する相談に広く応じており、演奏環境をトータルでサポートできる。

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