精神障害者とケアする人を支えるライフカウンセラー
西岡惠美子
Mybestpro Interview
精神障害者とケアする人を支えるライフカウンセラー
西岡惠美子
#chapter1
生きづらさを感じている人の心の声を、メールやLINE、ZOOMなどのツールを通して受け止める「惠然庵(けいぜんあん)」。
心理カウンセラーの西岡惠美子さんが、2021年に立ち上げたオンラインカウンセリングの場です。
「ストレスフルな現代、メンタルヘルス対策の重要性も浸透してきているかに見えますが、うつ病に代表される精神障害を抱える当事者はもちろん、側にいるパートナーや家族へのサポートはいまだ十分とは言えません」と話し、「ケアする人のケア」に力を注いでいます。
うつ病などの精神疾患と診断された本人を前にしたとき、家族には「自分にも原因があるのではないか」「治る病気なのか」といった衝撃が走ります。
「さらに大きくのしかかるのは、医療費や生活費、教育費といった家計の収支です。一家の大黒柱であればなおのこと、家族全員の心理環境にまで影響を及ぼしかねません」
西岡さんのカウンセリングの特徴は、向き合う人に対して傾聴のみにとどまらないこと。日常の困り事などに応える、精神保健福祉士の有資格者であることから「暮らしを営む上でどのような支援制度が利用できるのか」「就業や社会復帰の方法は」といった社会福祉の視点から具体策を提案。心と生活の安定や、個人の生き方とも言えるライフキャリアの構築を目指します。
「心を立て直す工程では、ほとんどの場合、休職による収入減などの問題に直面します。本人や家族が今後の人生設計を考える上でも、精神面と生活面にアプローチすることが大切で、欠くことのできない両輪なんです」
#chapter2
「実は私自身が、うつ病の夫を持つケアラーの一人。現実を突きつけられた時の戸惑いや将来への不安を一通り体験してきて、現在も家族として心の病と共生している当事者なのです」
エンジニアだった西岡さんの夫は、結婚して数年後のある日、突然うつ病と診断されます。
「思いがけない病名に驚くばかりでした。すぐに襲われたのが、経済的な不安。誰にも相談できず、頼みの綱の主治医も治療以外のことは専門外です。途方に暮れていたら、夫が自分で障害年金などについて調べ始めたんです」
当時、精神障害者に向けた支援制度は整備の途上。派遣社員だった西岡さんは生活の基盤を固めるため、正社員に転向します。
「うつ病は、当時でも特別珍しい病気ではありませんでしたが、公的制度があること自体知らなかったんです。障害なんだと納得するまでには相当時間もかかりました」と明かします。
要件を満たしていれば医療費が助成されるといった仕組みはあるものの、「自動的に支給されるものではなく、自ら行動しなければ適切に活用もできない」という現状にも気づかされます。
誰かの一助にもなるような職場を志望し、障害者雇用の現場に出向いて作業補助に従事するも、受け入れ先企業が限られる上、家族によるフォローが前提だったことも。
「働きたい人が希望の仕事に就き、キャリアアップもできるよう後押しできないものか」と思案した先に、真に役立つ情報などを発信するカウンセリングルームの開設がありました。
#chapter3
対面に近いビデオ通話や、言葉でやり取りするチャットと、それぞれの心情に配慮したコミュニケーションを大事にする西岡さん。就職や恋愛、人間関係などで悩み、自分自身の価値を見失ってしまった人たちも、心の重荷を預けるためにアクセスします。
「相談者自身がすでに答えを持っていることもあれば、本人も気づかない感情に起因していることもあります。絡まった糸をほどきながら、ご自分の本当の姿を見つけ出せるよう、今できることからお手伝いしています」
今後の取り組みとして、オンラインまたはリアルな場でのセミナーも準備中とのこと。仕事やプライベートにおけるモチベーションアップや、心が疲れていると感じた時のセルフケアの方法などをテーマに、自己成長のきっかけを提供していきたいと言います。
また、同じ精神障害を持つ人同士で対話する「ピアカウンセリング」の導入も検討。
「お互いに支え合い、心理的自立を促すのに加え、有償で行うことで就労の機会の創出にもつなげていきたいですね」と笑顔を見せます。
「目の前に心のケアを必要とする人がいると、家族はどうしてもその人中心の考え方にひきずられてしまいます。私たちの場合は、ペットのウサギが夫婦の会話をとりもってくれました。暗闇の中を進むように見えても、必ずどこかに抜け出す術があることを忘れないでください」と西岡さん。
「失ったものがあったとしても、家族だからこそ、思い出をしみじみと語ることもできるのですから」
(取材年月:2022年9月)
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精神障害者とケアする人を支えるライフカウンセラー
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惠然庵(けいぜんあん)
家族にとって辛いのは、いつまでも回復の気配が見えない時。その時家族が出来る日常の関わり方を工夫し、うつ本人のやる気をアップする方法をご提案しています。
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