ドローン活用を通じて地域や企業の課題解決を支援するプロ髙橋直人

ドローン活用を通じて地域や企業の課題解決を支援するプロ

髙橋直人

ドローン活用で作業の安全性と効率が向上。さまざまな実証実験にも協力

　「人手不足に悩む地方こそ、ドローンをもっと活用してほしいですね」と語るのは、青森県むつ市に拠点を構える「三協工業」代表の髙橋直人さん。ドローンを用いた構造物の点検調査や国家資格講習、ドローンでの撮影などを行っています。
　　
　例えばビルの外壁点検では、足場を組んで人を登らせるとなると人件費も日数もかかります。ドローンなら数日で終えられ、転落事故のリスクを大幅に減らすことができます。高性能カメラや専用ソフトを活用することで、より正確で効率的な点検が可能となり、施工記録や報告書のDX化にもつながります。
　
　また髙橋さんのもとでは、船底や養殖設備、ダムの取水口など水中ドローンによる調査にも対応しています。
　「潜水作業は体への負担が大きく、作業時間にも制約があります。ドローンならバッテリーを交換しながら長時間調査でき、作業員を守りつつ必要なデータをしっかり収集できるのが大きな強みです」

　自治体との協働にも積極的に展開。赤外線カメラを搭載したドローンで密漁者を監視したり、苗木を運んで険しい山地での植林を支援したりと、多彩な実証実験を実施。複数の自治体と災害支援協定を結び、行方不明者の捜索や被災状況の記録にも役立てられています。

　「人が立ち入れない場所こそ、ドローンが役立ちます」と髙橋さん。今後もさらなる活用法を提案したいと意欲を見せます。趣味のハードエンデューロレースや釣りなどを通して地元の山や海を熟知していることも強みで、現場での精度の高い判断や提案を支えています。

設備メンテナンス経験を生かし、ドローン事業やスクールを展開

　髙橋さんは、埼玉県内の建設会社を経て独立。青森へ帰郷後は、原子力施設の設備メンテナンスを手がけてきました。30年以上の経験を重ねる中で、設備点検や安全管理に関する幅広い知識を身につけてきたことが、今のドローン業務にも生きていると話します。

　転機となったのは、メガソーラーのメンテナンスを依頼された時でした。現場監督から「脚立を立てて一つ一つ撮影すると数カ月かかるが、ドローンなら一気に効率化できる」と勧められたのです。資格取得を目指して講習を受けるうちに、ドローンスクール運営会社の社長と意気投合。同社が請け負った点検の仕事に携わるようになりました。

　一般的なドローン会社はドローン技術には詳しいものの、調査や点検の撮影に生かすための建設や設備の知識があまりありません。図面を理解して打ち合わせを行い、的確に検査項目を処理するには現場経験が必要不可欠です。

　2022年には自社でドローン事業部を立ち上げ、点検・撮影業務に加え、ドローン導入を検討する企業や自治体へのコンサルティングも開始。さらに国土交通省の登録講習機関として、二等無人航空機操縦士の国家資格に対応したスクールも開設しました。夜間飛行や目視外飛行、農薬散布などを行う際に必要な技能認証にも対応しており、測量や非破壊検査など工業系に強い全国組織の下北分校として運営。現場経験に基づいた実務直結のカリキュラムを提供しています。

ドローンを通じて地域活性化や人材育成にも貢献

　スクールには幅広い層の受講者が集まります。フリーランスや副業でドローン撮影を始めたい人、地域の安全を担う消防隊員や警察官、そして近年では就職活動の武器として資格取得を目指す若者までさまざま。　
　「先日も高校卒業を控えた学生が夏休みを使って資格を取得しました。『同年代でこの資格を持つ人は少ないので、自信を持って強みを伝えられる』とうれしそうに話してくれました」と髙橋さんは目を細めます。

　地域の教育委員会やイベント主催者とも連携し、体験会を数多く開催。子どもたちからも人気があり、過疎化が進む地域の高校では「ドローンを学べる学校」という特色を打ち出すことで、生徒募集や地域PRにもつながっています。

　「講習を通じて生徒の意欲を引き出し、キャリア形成や将来を考えるきっかけを提供できれば」と髙橋さん。受講生には機体選びや購入相談にも応じています。「価格も性能も千差万別で、業務内容に合わない機体を買ってしまう人も多いんです。私も何度も失敗しました。だからこそ、導入前にぜひ相談してほしいのです」と力を込めます。

　消防や自治体に向けては、ドローンを使った救助活動や捜索計画の立て方を含めた提案も行っており、実務に直結する内容を提供。相談件数は年々増加し、地域の安全体制づくりにも寄与しています。

　「ドローンにはまだまだ可能性があります。人手不足や安全面の課題解決にとどまらず、地域活性化や観光PR、次世代育成にも役立つ存在になるはずです」
　髙橋さんはドローンを活用しながら地域の新たな未来を切り開こうとしています。

（取材年月：2025年9月）

人手不足の解決から地域活性化まで、ドローン活用で地方に新しい未来を拓く

ドローン活用で作業の安全性と効率が向上。さまざまな実証実験にも協力

設備メンテナンス経験を生かし、ドローン事業やスクールを展開

ドローンを通じて地域活性化や人材育成にも貢献

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