住宅の全館空調システムのすべてを知り尽くした専門家水上保徳

住宅の全館空調システムのすべてを知り尽くした専門家

水上保徳

個人宅向け全館空調の修理・メンテナンスを承ります

　25年ほど前、大手電機メーカーはこぞって個人宅向けの「全館空調システム」を開発・販売していました。全館空調システムとは、住宅の小屋裏などに一つの空調システムを設置して、そこから冷房や暖房の風を家中に流し込むしくみのこと。これを利用することによって各部屋では、エアコンなどを使わずに年間を通じて快適な室温の中で暮らすことができます。しかし、その後それらを取り扱っていたほぼすべてのメーカーが事業から撤退。全館空調システムを設置している家庭ではさまざまな問題が起こっているといいます。

「全館空調システムは専門的な知識のいる装置ですから、壊れても街の電気屋さんでは簡単には直せません。また私の経験上、他の家電製品などと比べて、日々の利用の中でもトラブルが発生する確率が高く、元来はしっかりとしたアフターフォローをしていくべき商品だといえます」。そう教えてくれたのは株式会社かんしゃの水上保徳さん。水上さんは、大手電機メーカーの販売店担当者として長年にわたり全館空調システムを扱ってきた経験を活かして、全国でも珍しい全館空調システムの設置だけでなく、メンテナンスや修理も請け負う事業を展開。ホームページを開設したところ、全国から問い合わせが来るようになったといいます。「それだけ全国に困っている人が多いということですよね。寄せられたお問い合わせには、可能な限り対応させていただきます。先日も鎌倉まで行ってきました」

幼い子どもを残して妻が他界。救ってくれたのは社会でした

　水上さんには3人のお子さんがいます。その内同居しているのは長女と次男の2人。長男は、重度の身体障がい者として施設で暮らしています。「長男が障がいを持って生まれてきたと分かったときには、正直、何故自分が…という気持ちになりました」と当時のことを振り返る水上さん。その後に生まれた次男も軽度の知的障がい者。幼い娘を抱え、さらに障がいをもった二人の息子からは手が離せない中、サラリーマンとしても働き盛りの時期を迎えます。当然のように、その生活はすぐに限界に達し、退職を余儀なくされてしまいます。「そんな私を拾ってくれたのが、以前お世話になっていた会社の社長でした。子どもたちを病院に連れていくなど、働き方には融通を利かせてもらいました。あの時は本当に助かりました」。しかし、その会社も経営者が代わり、次第に業績が悪化したことにより、後に「地獄のような日々だった」というハードワークの日々に。さらに最愛の妻がクモ膜下出血で急死するなどの不幸が続き、再び、転職を迫られます。そんな中、水上さんに再び救いの手が差し伸べられます。「大手電機メーカー時代の上司が立ち上げた会社に呼んでもらうことができました」

　この新しく入った会社で、大きな転機となる出来事に合います。顧客からの紹介で、青年経営者研修塾に入塾することになったのです。青年経営者研修塾には、多くの個人事業主や社長などが参加しており、自己の成長と社業の発展に向け、さまざまなプログラムをこなします。そこで多くのことを学ぶうちに、「自分を助けてくれた世の中に恩返しをするような仕事がしたい」と考えるようなったという水上さん。そして立ち上げられたのが、株式会社かんしゃです。

事業を発展させることで、障がい者雇用につなげる

　もともと株式会社かんしゃの立ち上げのきっかけとなったのは、身体障がい者が利用する放課後等デイサービスに不満を感じたことでした。「正直、自分ならもっとこうするのに…という想いはありましたね」。しかし、この分野での実績がない水上さんがいきなり新規参入するのは難しく、最終的には、“世の中の困っている人を助ける”という理念のもと、経験のある全館空調システムのメンテナンス会社としてスタート。しかし、今でも想いの半分は、障がい者支援にもあるといいます。「子どもが障がい者だったことで、これまで社会には随分と助けられました。だから、これからは私がその恩返しをする番だと考えています」

　水上さんが描いている今後の目標は、2つあります。一つは、自社の事業が成長することで障がい者が働ける場を提供していくということ。もう一つは、放課後等デイサービスの運営です。「いずれの夢も、今はまだ現実的な話ではありません。だからこそ日々の業務としては、一件でも多く、全館空調システムでお困っているお客さまを助けたい。それが今の私にできる最大限の恩返しだと考えています」。自分の受けた恩を返すために、まずは自分にできることからチャレンジしていく。これまで水上さんが多くの人に助けてもらったのは、その誠実な人柄によるところもありそうです。

（取材年月：2019年9月）

助けていただいた世の中に、恩返しするために独立

個人宅向け全館空調の修理・メンテナンスを承ります

幼い子どもを残して妻が他界。救ってくれたのは社会でした

事業を発展させることで、障がい者雇用につなげる

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