美しい文字を書く指導と、書道の楽しさを伝える書道家
原倫子
Mybestpro Interview
美しい文字を書く指導と、書道の楽しさを伝える書道家
原倫子
#chapter1
「実は、子どもの頃は文字を書くのが苦手でした。学校や家でよく指摘を受けていたので、自分の字にコンプレックスがある人の気持ちが分かります。また、私はもともと左利きで、小学校高学年から文字は右利きへ転向しました。生徒さんの利き手に合わせて、硬筆、毛筆、篆刻(てんこく)を手ほどきできるところが、ちょっと珍しいんじゃないかなって思います」
そう笑顔で語るのは、「原書道教室」の原倫子さん。岡崎市内で「男川教室」と「やはぎかん教室」を主催し、就学前の幼児から90代まで幅広い層が足を運びます。
「小学生のお子さんなどは、手本にならってお稽古するほか、書き初めなど学校の課題や公募展に向けて練習することもできます。鉛筆を持ち始めて間もない小さいお子さんは、自己流のクセがつかないように、鉛筆の持ち方からスタートします」
以前は毛筆が中心だったそうですが、小さいうちは、まず鉛筆を正しく持って、筆圧を調整しながら自在に線を描く運筆力を養うことが重要と考え、硬筆のレッスンも始めました。
「『とめ、はね、はらい』や文字の形、バランス、書く流れが分かるように、ひらがなを4分割にしたオリジナル教材を作成し、きれいな文字を書くための基礎が身に付くように工夫しています」
生徒の希望や目的に応じたコースを用意している原さんは、大人向けに、芳名帳や手紙などに美しい文字をつづる日常書やペン字もレクチャー。「石に文字を彫る篆刻は、ご自身の作品に押す落款(らっかん)として活用できるのでおすすめです」と呼び掛けます。
#chapter2
「父や親族が趣味にしていたことから、書道は私にとって身近な存在でした。年齢を重ねると共に、線1本で表現する世界にのめり込み、この道に進むことを決めました」と原さん。
書道の教員免許を取得できる京都教育大学に進学し、教授の助手として指導者の立場を経験。卒業後は自分の教室を立ち上げ、講師としてキャリアを積む中で大学院にも通い、教養を深めました。
「夫の転勤でアメリカへ移住することになり、いったん閉室しましたが、現地で日本語を専攻している学生さんにボランティアで書道を教えていました。興味を持ってくれた子も多くて『ずっと続けたい』『書くのが楽しい』と言ってもらえたことがうれしくて、励みになりましたね」
日本へ帰国後、子育てが少し落ち着いたタイミングで、原書道教室を開設し、本格的に再始動します。気の赴くままに筆を走らせる狂草(きょうそう)や篆刻など自身の作品づくりのほか、展覧会に出品する生徒のサポートにも力を入れています。
「かつての私がそうだったので、うまく書けないという悩みはよく分かります。それぞれの習熟度やペースに配慮しながら、目指すゴールまで伴走します」
一人一人に親身に寄り添う原さんの姿に、信頼を寄せる人は少なくありません。入室する際には靴をそろえたり、きちんと正座をしてあいさつしたり、礼儀作法も重んじているため、「子どもの行儀がよくなった」「姿勢がよくなった」との声が保護者から寄せられるそうです。
#chapter3
講師として20年以上活動し、数多くの子どもに接してきた原さん。「成長を間近で見守ることで、私自身いろんな気付きがあり、得るものが多いですね。これは大人の方も同様で、生徒さんから学ぶことがたくさんあります。個性が豊かで、柔軟な感性を持っているみなさんから、日々刺激をもらっています」と語ります。
「付き合いが長くなると、文字から精神状態が読み取れるようにもなります。元気いっぱいで躍動感にあふれていることもあれば、どこかさびしげな印象を受けることもあり、喜怒哀楽が反映されるのが書道の面白いところです」
教室では、作品として完成度を上げる技術だけでなく、その時々の感情を文字に乗せる楽しさも伝えているそうです。例えば、穏やかな心持ちで臨んだ場合と、荒々しくたかぶった勢いで挑んだ場合では大きな違いがあり、その差が分かるようになると言います。
「自分の作品を見て『この時はこんな気分だったな』と振り返ったり、人の作品からは『当時はこんな心情だったんだろうな』とイメージを膨らませたり。『字は心の表れ』という言葉がある通り、筆が生み出す機微を感じ取ってほしいですね」
背筋を伸ばし、一心に取り組むことで集中力が高まり、自分に向き合う時間にもなります。また、納得のいく出来栄えの時は達成感もあります。
「奥が深く、懐が広いのが書道です。私の教室が、その魅力に触れ、思い思いに書に親しんでいただける場になることを願っています」
(取材年月:2022年9月)
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Profile
美しい文字を書く指導と、書道の楽しさを伝える書道家
原倫子プロ
書道家
原書道教室
書道歴30年以上。原書道教室にて、硬筆、毛筆(漢字と仮名)、篆刻の3部門の講師を担当。子どもには硬筆と毛筆できれいな文字が書けるように、中高生や大人には、書道の面白さを伝える専門家。
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