和風建築のプロ
松木哲雄
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和風建築のプロ
松木哲雄
#chapter1
屋根の中間がゆるやかに盛り上がり、軒で反り上がる「むくり屋根の軒反り屋根」の和風建築。京都・清水寺などにも用いられている工法によって生み出された優美な曲線は、まるで芸術品のよう。一般住宅でありながら、圧倒的な存在感を放っています。
木造建築会社「住まいの松木」(甲府市住吉1丁目)の代表松木哲雄さんが造り上げるのは、そんな隅々にまで匠の技を感じさせる家です。大工でありながら一級建築士の資格を持ち、日本に古くから伝わる建築工法「規矩術」(きくじゅつ)を習得。特に技術力が必要な曲線の表現で、高い評価を得ています。
この道40年の松木さんは、和風建築や古民家の再生をはじめ、和洋折衷建築、洋風建築のほか、社寺建築や門、塀など幅広い建築を手掛けてきました。設計から施工、メンテナンスまで、松木さんが責任を持って携わるのはもちろん、確かな腕を持つ職人一人ひとりに直接、細かな施工図で指示を出しています。
「昔ながらの伝統を生かした和風建築に現代の技術を組み合わせ、快適で住み心地の良い家造りに努めています」と松木さん。妥協を決して許さない職人肌ですが、気さくな人柄で何度でも打ち合わせを重ねながら、お客さまと一緒に理想の家を造り上げていきます。
#chapter2
松木さんの父親は、「大工まち」といわれた身延町下山地区出身の大工で、家系は代々、宮大工の技術を受け継いできました。従って、松木さんが高校卒業後、家業を継ぐのはごく自然なことでしたが、「大工をやりたいというよりも、勉強が苦手だから父親の後を継ぐことにしました」と謙遜します。しかし、いくつかの工務店で働いた見習い時代から技術力を見込まれ、さまざまな現場を経験していくうちに大工としての自覚と責任感が芽生えたそうで、「一人前の大工になるために、遊ぶ間もないほど一生懸命働きました」と当時を振り返ります。
転機は29歳の時。働きながら受験した一級建築士に一発合格したことでした。「天職だからこそ、苦手な勉強にも必死で取り組むことができた!」と実感。その後、独立して「住まいの松木」を創業しました。「大工の経験があるからこそ描ける設計図がある」と設計力には絶対的な自信を持っています。
さらに、規矩術との出合いも、松木さんの建築に対する考え方を大きく変えました。「規矩術は、鎌倉時代に確立されたといわれる大工の数学術です。知れば知るほど、先人の知恵に魅了されていきました」。松木さんは規矩術についての書物を読み漁り、独学で習得。現在は規矩術を理解している大工は少ないそうですが、「規矩術があれば、どんな建築も自在に対応することができます」と胸を張ります。
#chapter3
松木さんは現在、古民家の再生や社寺建築にも力を入れています。築400年の古民家を任されたときは、柱だけにして基礎から造り直し、二重ガラスなどを違和感なく取り入れて、建物の風情を残しながら快適な住まいへと生まれ変わらせました。
また、社寺建築では、年代が分からないほど古い建築物を担当することもあるそうで、「古い建築に携わると、昔の人たちの仕事ぶりが見えてきます。良い所は自分の仕事に生かして、現代の建築の中に蘇らせています」と話します。格子戸や明かり床などの部材も、松木さんが建物に合わせて設計。和風建築を知り尽くしているからこそできる細やかな仕事がお客さまに喜ばれています。
松木さんが手掛ける和風建築には、着工から完成まで1年以上を要するものもあります。時間をかけて丁寧に造り上げることへのこだわりを聞くと、「職人ってそういうもの。人から笑われるようなものは造りたくないという誇りと意地があります」。笑顔とともに、明快な答えが返ってきました。
(2017年7月取材)
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株式会社 住まいの松木
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