人生の最期に音楽を。故人らしい時間を演出する葬儀演奏のプロ
石﨑雅菜
Mybestpro Interview
人生の最期に音楽を。故人らしい時間を演出する葬儀演奏のプロ
石﨑雅菜
#chapter1
「親しい人たちで執り行う家族葬や、お通夜を行わない一日葬など、お葬式の形は多様化しています。私たちは“音楽”を通じて故人さまをしのび、在りし日に思いをはせ、旅立ちのお手伝いをしています」
そう語るのは、「Mana Musica Art Works(マナムジカアートワークス)」の代表・石﨑雅菜さん。山梨県を拠点に、冠婚葬祭の会場へ演奏者を派遣する事業を展開。自らもピアニストとして活動し、葬礼の場における演奏は15年を超える経験があります。
「それぞれの希望をくみ取るセレモニーが定着しつつも、まだ生演奏は珍しいのも事実。ご遺族から依頼されても『演奏家につてがない』『音響機器がない』と慌てる葬儀社さまは少なくありません。お葬式は前もって予定が立てられないため特にプレイヤーの手配が難しいのですが、当方は必要なものをすべて準備いたします」
数多くの葬儀会社と提携してきた実績があり、最短で葬儀前日の依頼に応じてきた石﨑さん。機材の持ち込みから設置、音響調整まで手掛け、会場に負担を掛けないスムーズな進行をかなえてきました。
楽器はピアノ、フルート、バイオリンの中から選択でき、独奏や三重奏なども可能。クラシックからポップスまで定番曲のオーダーリストを用意していますが、リストにない曲でもリクエストをお受けすることを最大のサービスとしています。
「曲目は演歌やロック、アニメソングなどバラエティー豊かで、故人さまらしさが感じられます。初めての曲を数日で仕上げるのはプロでも大変な作業ですが、人生のエンディングにたむける音楽を奏でられることに誇りを持っています」
#chapter2
3歳からピアノとバイオリンを習い、音楽に親しんできた石﨑さん。音楽大学に進学するも、クラシック以外も学びたいと専門学校へ。さまざまなジャンルを弾きこなすセンスを糧に、冠婚葬祭会場の専属ピアニストとして歩み始めました。
「地元・山梨を拠点にさらに多くの皆さまのご用命にも応えたいと考え、2022年に独立開業しました。観光ホテルのミニコンサートや地元企業の式典、ワイナリーのパーティーなど、地域らしさがあふれる案件も増えてきました」
仕事の幅が広がっても、原点である葬送演奏には思い入れがあり、父を亡くしてから最期の儀式にかける思いはますます強くなりました。
「葬儀場には1000回以上足を運んでいますが、故人さまの式は一度きり。自分が遺族になって身をもって感じ、ますます気が引き締まりました。少しでも慰めになればと、演出のご要望には可能な限り対応しています。悲しみの中にも温かさを感じてもらえたら幸いです」
音楽は言葉を超え、五感を揺さぶる力があると実感する石﨑さんは、「音楽葬」も提案しています。
「読経の代わりに故人さまが好きだった曲に耳を澄ませたり、喪主さまのあいさつでは思い出の曲で参列者の方が故人さまとの日々を振り返ったりと、式次第のすべてを音楽を中心として構成します。完全オーダーメードで、自分らしさを重視する時代のニーズにも合い、大切な人の思いを最大限尊重し見送りたいというご遺族の気持ちにも寄り添うもの。新しいお別れのスタイルとして多くの人に知っていただきたいですね」
#chapter3
近年は地域貢献にも注力する石﨑さん。2023年にプロジェクトが発足した創作舞台「Sakuya」では企画から携わり、奏者としてもストーリーの一翼を担っています。
「Sakuya」は、三味線や和太鼓のような伝統楽器と、ピアノ、バイオリンといった洋楽器によるオリジナル音楽と舞踊、映像を融合させた作品。日本の神話と歴史をつづった古事記に登場する女神「コノハナサクヤヒメ」の神話をベースに、富士山信仰など、古来より語り継がれてきた精神を山梨の人々に届けようとする試みです。
「2024年の初演では、多くのお客さまから『地元・山梨の文化的価値を再発見できた』『自分たちのルーツに誇りを感じた』と感想をいただきました。セリフがないので子どもと大人が同じ目線で見て、いにしえの世界観を体感できるのも魅力。日本中に広がり、さらには世界へと目を向け、地域振興・観光促進の一助になればと願っています」
芸術による地域活性化に加え、音楽家が活躍できる場を創出することも目標の一つだと言います。
「本来、音楽は自由で柔軟なものなんです。冠婚葬祭や地方創生事業のように、音楽が力を発揮するシーンは多岐にわたります。イベントや施設への慰問など、あらゆるシーンで生演奏の素晴らしさを感じていただければ、音楽家が求められる機会も増えていくでしょう」
セレモニーを主軸に音楽の可能性を追求する石﨑さん。美しい旋律であまたの人の心を癒やし、地域の未来を明るく照らしていきたいと語ります。
(取材年月:2025年7月)
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Profile
人生の最期に音楽を。故人らしい時間を演出する葬儀演奏のプロ
石﨑雅菜プロ
ピアニスト
Mana Musica Art Works
葬儀演奏歴15年超の実績で、機材搬入から選曲まで柔軟に対応。最短前日の依頼にも応え、故人の人生が感じられる音楽で心温まる別れの時間を演出。近年は舞台や地域活動も手がけ、音楽の力を社会に広げています。
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