家具と家族をつなぐ提案型インテリアコーディネートのプロ岡本貴広

家具と家族をつなぐ提案型インテリアコーディネートのプロ

岡本貴広

“対面”による提案型インテリアショップで、天然素材を用いた家具を展開

　オンラインショッピングが普及し、大半を自宅で買える時代になりました。特に大型家具はネットでの購入率が右肩上がりで推移し、多くのメーカーがECサイトを有しています。

　素材の持ち味や空間になじむたたずまいを体感してもらうため、対面販売を大切にしてきたのは富山市の「ミヤモト家具」。代表の宮本豊彰さんは創業以来、提案型インテリアショップを提唱し、現在は富山市に3店舗・金沢市に2店舗の系列店を構えるまでに。ここでしか出会えない品を求めて全国から顧客が訪れます。

　「子どものときに貼ったシールなどを見て、当時の親御さんの苦々しい表情や空気感まで、まざまざと思い出されることはないでしょうか。私どもは見るたびに暮らしの記憶がよみがえり、愛情を持って末永くお使いいただける本質にこだわった良質な家具をご用意しています」

　そう語るのは常務取締役であり、全国各地のパートナーショップを含め20店舗の展開をしているオリジナルブランド「SOLID Furniture Store」の店長を兼任する岡本貴広さん。テーブルやチェア、ソファ、チェストなどを展開し、傷や経年も味になるよう、木材や本革、帆布など厳選した天然素材を使用。木部に浸透し、塗膜を形成しないオイル仕上げを施すことで質感をそのまま生かし、新品をヴィンテージにする過程を楽しむことができます。

　「SOLIDは福岡県の家具メーカーであるナガノインテリア工業と共同開発した家具ブランドです。100%無垢材、天然素材にこだわり、インダストリアルモダンなテイストで、天然木の力強いデザインながら温もりが感じられる製品が特長です。今日もお客さまのストーリーが生まれていくのだと思うとワクワクしますね」

「家族の思いを紡ぐ家具を届けたい」。迷い多き20代を経て見つけた居場所

　学生時代から憧れていたインテリア業界に就職し、キャリアを積み上げてきた岡本さん。かつて自分の生き方を模索した時期もありました。

　「大学を卒業後、数社に身を置きましたがどの会社もしっくり来ず。転職を重ねた20代でした」

　思い描いていたような仕事ができず、違和感をぬぐえず理想を追う自分をいつしか責めるように。お客さまに心から喜んでいただきたい、仕事に誇りを持ちたい。そう思い、負のループから脱却しようと応募したのがミヤモト家具でした。

　「『親から子へ、子から孫へ代々継承され、家族の思いを紡ぐ本物の家具を届けたい』という考えに惹かれました。入社前に訪れた本店では、スタッフからも仕事への誇りが感じられ、うらやましくて。後はないつもりで面接に挑み、代表に熱意が伝わり採用をいただけた際は感無量でした」

　同社の強みは、企画・製造・修理・配送、すべての部門を有していること。販売員が要望を汲み、製造現場へ共有。商品を届ける配送担当が「心待ちにしていた」といった顧客の声を社内にフィードバックするサイクルにより、どの部門も「お客さまに喜んでいただけている」と実感が得られるそうです。

　「お客さまの希望に近いものを売るのではなく、“理想通り”の家具を実現できる体制があると自負しています。例えば、良質な素材の数々や、200種以上の生地から選べる椅子やソファ。機能性も審美性も満たしてこそ、長くご愛用いただけるのではないかと思います」

暮らしに寄り添ったコーディネートで、一人一人の「120点」を目指す

　住宅展示場や店舗などのインテリアコーディネートも手掛ける岡本さん。テーマに合わせた美しい空間を演出することも得意ですが、原点は住宅コーディネート。部屋作りの定石にとらわれず、「お客さまだけの120点」を目指しています。

　「プランニングの際は、お客さまが『どんな暮らしをしたいのか』を追求。例えば一家団らんでテレビを見るのが好きなら大きなソファを主役にするなど、その方なりの“豊かさ”から逆算してご提案します」

　家具を長く使うことでもたらされる温かみが家庭の安らぎにつながり、「自分の帰る場所」と感じられる空間を作る土台になると言います。

　「メンテナンスも自社工場で対応しています。テーブルの磨き直しや、棚の組み直し、ソファの張り替えや中材の入れ替えまで網羅しているので『預ける前よりきれいになった』とお声をいただくこともあり、うれしい限りです。売って終わりではなく、お手入れを通してお客さまの人生を見守っていけるのは幸せなことです」

　誠心誠意のサービスで「モノを永く使う文化を創ること」をミヤモト家具で働く自身の大目的に掲げている岡本さん。今後の事業にも熱意を見せます。

　「代表の原点である『宮本タンス店』を復活させようという動きがあります。代表が思い出ごと慈しみ、何世代も引き継がれる“本物”の家具の着想を受けた場所。一度は潰れてしまったタンス屋を社員みんなで継ぎたいと思っています。目指すは、日本で一番おしゃれなタンス屋です」

（取材年月：2025年5月）

愛情深く世代を超えて慈しまれ、家族の記憶が色鮮やかによみがえる家具を提案

“対面”による提案型インテリアショップで、天然素材を用いた家具を展開

「家族の思いを紡ぐ家具を届けたい」。迷い多き20代を経て見つけた居場所

暮らしに寄り添ったコーディネートで、一人一人の「120点」を目指す

専門家プロフィール

Other Interview