バレリーナ育成のプロ
武岡とも
Mybestpro Interview
バレリーナ育成のプロ
武岡とも
#chapter1
ほっそりとした身体にりんとした姿勢。一目会っただけで「プロ」を感じさせる輝きを放つ、武岡ともさん。武岡さんは富山市在住の現役バレリーナで、バレエスタジオ『フェアリーバレエシアター』の代表を務めています。ご主人のミニカー製造会社『武岡自動車工芸』の3階を改築し、2006年に自分のスタジオを開設しました。広さ約80平方メートル、床下にスプリングが施され、膝や腰などにかかる負担が軽減される配慮がなされています。スタジオ名は「人をひきつける不思議な魅力を持つフェアリー(妖精)のような踊り手に育てたい」との思いから名付けられました。
現在スタジオに通う生徒さんの数は約100人。園児から60代の方まで、年齢もさまざまです。プロを目指す人、美容と健康のために楽しむ人など目的も多様。「身体能力が優れている子、表現能力が豊かな子など、それぞれの資質を持っています。劣っているところを見るのではなく、優れているところに焦点を当てる。そうして本人の資質を見極め、一人一人にあったレッスン指導を心掛けています」と武岡さん。「例え小さなことでも、できなかったことが“できるようになった喜び”を知ってほしいですね」と続けます。
#chapter2
武岡さんは4歳の時に富山市の田中秀子さんに師事し、クラシックバレエを始めました。1996年に上京し、東京シティバレエ団研究科などに所属。プロのバレリーナとしてステージに立ちながらさまざまなことを学び、5年後、富山に帰郷しました。「その頃いっしょに汗を流した仲間達は、今でも仲の良い友人です。ずっとつきあいがあり、お互いの舞台や発表会にゲストとして招いたり招かれたりしています」。当時の仲間は、武岡さんにとって今でも「大切な宝物」。同じ目標を持ち、互いを高めていく素敵な関係です。
2010年、第11回『NAMUE(ナミュー)クラシックバレエコンクール金沢』の高校生の部で、フェアリーバレエシアターの生徒さんが1位を獲得しました。同時に、武岡さん自身も優秀指導者賞を受賞。現役のバレリーナであり、さらに指導者としての実力も証明されました。
武岡さんは小2の息子、昂之介(こうのすけ)くんのお母さんでもあります。現役舞踊家・指導者に加え、妻と母親としての顔も持っています。「主婦業との兼業は大変ですが、周囲の助けもあって続けられています。家族には感謝の気持ちでいっぱいです」と優しい笑顔。その昴之介くんも、フェアリーバレエシアターでいっしょにレッスンを楽しんでいます。「このスタジオには、うちの子も含め4人の男の子がいます。男子の人口が少ない中、多い方だと思いますよ。男の子同士仲良くしているのがほほ笑ましいですね」
プロとしての厳しい一面と母親としての慈愛に満ちた表情を併せ持つ武岡さん。そうした人間的魅力も作品(舞台)づくりにつながっているように感じられました。
#chapter3
スタジオでは、後輩バレリーナの高橋侑里さんとともに指導を進め、ほぼ毎日3~5レッスン行われています。年齢や難易度、目標などで細かくクラスが分けられ、一クラス12~20人で構成、1回60分~120分のレッスンが受けられます。「やる気のある人を支援したい」との思いから、価格設定も良心的。週4回以上は同料金でフリーという設定や、たまにしか出られない人のためのチケット制度などが設けられています。自身の体験や経験を生かし、いろいろな角度から生徒さん達がバレエを楽しみ、継続できるよう力を注いでいます。「フェアリーバレエシアターでの発表会は2年に一度。金銭面の負担もありますが、基礎能力の向上に時間をかけたいからです。1年半みっちり基礎をやり込み、その成果を発表する場として、残りの半年を発表会のために費やします」
また月に一度、上京時代に培った人脈を生かし、現役トップダンサーを講師に招いた特別レッスンを用意。隔月で、骨・筋肉の動きから身体の使い方を勉強する「ボディワーク」というプログラムもあります。「富山に居ながらにして、一流ダンサーの指導が受けられます。世界の最前線で活躍するダンサーのプロの動きを目の当たりにすることは、とても良い刺激をもらい、がんばる気持ちにつながるんです」
バレエを通して、たくさんのことを伝えたいという武岡さん。「なんでもそうだと思いますが、バレエも自分自身との闘いです。いったん目指したことをあきらめない強さ、つらさを乗り越える力といった、意志力や心の力をレッスンを通して学んでくれたらと思います」
習い事という枠では収まりきらない、バレエの世界。年齢に関係なく、「向上していく楽しさ」が見つけられる空間です。
(取材年月:2010年10月)
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