迷いや生きづらさの根源に向き合う夫婦問題カウンセラー三枝照子

迷いや生きづらさの根源に向き合う夫婦問題カウンセラー

三枝照子

「夫とは、妻とは、結婚生活とは」の思い込みに囚われた心を解きほぐし、生きづらさの根源にアプローチ

　「結婚生活の中で、パートナーとの小さな気持ちのすれ違いや生きづらさを感じていませんか。苦しみの要因は相手だけにあるのでしょうか。あなたが本当に守りたいものは何なのでしょう」

　そう問いかけるのは「夫婦カウンセリング　ティダテラス」のカウンセラー、三枝照子さん。オンラインをメインに年間200組を超えるカップルの悩みに寄り添い、解決の糸口を探ります。

　「夫婦間で多く見られるのは、パートナーの無自覚な言動による小さな不満の蓄積やコミュニケーション不全、感情のコントロール不足などによって起こるトラブル。それらは表面化した事象の一部に過ぎません。相談者の中に長年隠されてきた別の要素が心に深く関係しているケースも少なくないのです。相手への対処法ではなく、人生を生きづらくしている根本的な要因にたどり着けるまでお手伝いします」

　心理学や脳科学、東洋思想などをベースに、「夫とは、妻とは、幸せな結婚生活とはこうあるべき」という思い込みに囚われた心を解きほぐしていきます。

　特に関係修復を望む声が多く、即効性やテクニックを求める傾向にある男性に向けては、カウンセリングに加えてオンラインコミュニティーも設けています。

　また、中小企業の組織力強化や人間関係の円滑化にも貢献。福利厚生や研修セミナーを通じて、メンタルヘルスの分野でも支援を行っています。経営者やビジネスパーソンが、職場の課題を家族関係と同じ視点で考えるとともに、仕事のモチベーションアップにもつながる生き方のヒントを提供しています。

創作活動をライフワークに、次世代の子どもたちの成長と笑顔を願う

　イラストレーターや絵本作家として30年以上、子どもたちの心の成長に触れる作品を描いてきた三枝さん。アメリカでの生活や3人の子育ての間も、途切れることなく創作活動を続けていたそう。

　「子どもにとって、家族は自分の命が無条件で守られる“ベースキャンプ”のようなもの。無条件に愛される経験は、どんな形であってもその後の長い人生において大きな支柱になります」
　創作活動やカウンセラー活動の前に、母として、娘としての立場を持つ三枝さんが、最も大切にしたいと願っているのは、次世代の子どもたちの笑顔を守ることです。

　「例えば、仕事など他の世界を持つ親の元で感じる寂しさや、祖父母や身近な家族との折り合いが良くない様子から覚えた不安など、小さな傷が長く心に残ると感じている人も多いのではないでしょうか。中でも両親の関係が常に緊張状態にあると、『自分のせいかもしれない』と感じてしまう子どもがいても不思議ではありません」
　
　相談者の中にも、セッションを重ねる中で、そんな子ども時代の記憶が垣間見える人も少なくないとか。
　「負の記憶は、心の水面に落ちたインクのように広がって、やがて水底に染み跡を残してしまうことがあります」
　三枝さんにとって、絵本制作もカウンセリングも、「連鎖するマイナスサイクルを断ち切り、子どもたちが大人になる過程で、自分に価値を見いだせる居場所を失わないようにするため」の取り組みです。

　実は、三枝さん自身も結婚生活に迷いを覚えた一人。
　「続けるかやめるかの二者択一しかない」と思考が停滞しかけたときに体験したカウンセリングが、視点を変えるきっかけになりました。苦しみながら自分たちらしい夫婦の形を探り、今も心地よい関係を築いていくプロセスにあると言います。

オンラインコミュニティー「ハズバンド・ブレイク」を主宰、男性同士で語り合い自身を知る場に

　三枝さんのもとには「自分に対する怒りや怯えの理由がわからない」「突然、妻が出て行ってしまった」「そんなにひどいことをしたとは思えない」といった男性の戸惑いの声が多く寄せられています。

　「妻にとっては毎日の不満が積み重なった末に限界に達した状態でも、男性には“青天の霹靂（へきれき）”。突然、子どもに会えず、生活も不便になって初めてただ事ではないと慌てるケースがほとんどです」
　
　そうした体験を共有する男性同士が意識を転換するきっかけになるよう、三枝さんはカウンセリングと並行して、オンラインコミュニティー「ハズバンド・ブレイク」を立ち上げました。少人数制で、ニックネームとアバターでの参加が可能。弁護士やセラピストなどさまざまな分野のオブザーバーがゲスト参加することもあります。

　「世代も背景も関係なく語り合うことは、自身を客観視し、感情のメカニズムを知り、感情をコントロールするトレーニングにもなるでしょう」

　三枝さんとの出会いをきっかけに「夫婦間だけでなく、人生そのものをより良くするヒントが詰まっているようだった」「自分の在り方に漠然と感じていた迷いや生きづらさの要因が明らかになり、人生が変わりました」といった声も。

　自分目線で生きることを選択し始めた人々の、そんな言葉を糧に、三枝さんはそれぞれの家族の明日を探す道のりに寄り添います。

（取材年月：2025年6月）

夫婦間の問題のみならず、人生にプラスとなる考え方のエッセンスを見つける場に

「夫とは、妻とは、結婚生活とは」の思い込みに囚われた心を解きほぐし、生きづらさの根源にアプローチ

創作活動をライフワークに、次世代の子どもたちの成長と笑顔を願う

オンラインコミュニティー「ハズバンド・ブレイク」を主宰、男性同士で語り合い自身を知る場に

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