地域密着の訪問はりきゅうで高齢者の暮らしを支える鍼灸師天満博貴

地域密着の訪問はりきゅうで高齢者の暮らしを支える鍼灸師

天満博貴

鍼灸や手技、簡単な運動やストレッチを取り入れ筋肉や関節にアプローチ

　「優しく丁寧に皆さまの心と体を癒やします」と語るのは、「天満訪問はりきゅう治療院」の代表・天満博貴さん。一人で出掛けるのが難しい高齢者や障害のある人の自宅や施設に赴き、鍼灸と手技によるケアを提供。東京都品川区を拠点に、大田区・目黒区・世田谷区・港区と幅広いエリアをカバーしています。

　「お伺いした際は、まずその日の心身の状態を確認します。体調に合わせた施術で全体をもみほぐし、筋肉や関節の動きを助けます。筋力などが落ちると体がこわばりがち。少しでも体が楽に動けるようにお手伝いします」

　サービスを受ける際は、初回無料の体験からスタート。顔を合わせて体の状態などを聞き取り、短期・中期・長期の目標を定め、無理のないペースでケアを進めます。

　「必要に応じて簡単な運動やストレッチを取り入れています。継続するうちに徐々に関節が柔らかくなり、手足が動かしやすくなったり、慢性的な痛みが緩和したりといったことが期待できます。起き上がりや立ち上がりなど自力でできることが増え、日常生活における行動の幅を広げることにもつながります」

　また、介護保険サービスでは補えない生活援助にも柔軟に対応。嗜好品や日用品の買い物代行、モーニングコール、雨戸の開閉、電球交換など、利用者や家族の「ちょっと助けてほしい」をかなえる存在としても頼りにされています。

　「サービスは医師の同意書を取得すれば健康保険が適用され、介護保険の支給限度額に関係なく利用できるため、ご家族やケアマネジャーさまからも好評です。各種手続きもサポートし、負担を和らげています」

プロボクサー時代の経験から鍼灸師に。心を解きほぐして信頼関係を構築

　天満さんは元プロボクサー。試合中に右頰を骨折し、一時は引退も考えたものの、鍼灸によるケアを受けたことで復調し、再びリングに立てた経験から現職を志しました。

　「2000年に鍼灸師の資格を取得し、接骨院や訪問マッサージ院で9年間経験を積み、2010年に独立しました。培った技術と知識、細やかな心づかいで、不調にアプローチしています」

　利用者は75歳以上の高齢者が中心。脳梗塞の後遺症や腰下肢の痛みなどで外出がままならない人、転倒リスク・体力の低下が気になる人など、状況はさまざま。約40分の滞在時に、心も解きほぐしています。

　「口数が少ない方にツボの名前をクイズ形式で教えたら、徐々に反応が増えてツボ博士になったり、野球好きの方とは最新の試合結果を評論したり。猫好きの方には私の飼い猫の写真を見せて盛り上がります。出歩く機会が減っている方に“外の空気”を届けられたらと思い、『○○の焼き鳥がおいしかった』なんて私の日常を話すこともありますね」
　　
　本人の興味がある話題、関心を引き出す会話で交流を深める天満さん。コミュニケーションを通じて体調面の微細な変化も捉えています。

　「その方の暮らしや背景を知りながら、じっくり関われるのが訪問の醍醐味。人生の先輩方と接することは“気づき”の連続で、毎日が勉強です。誕生日には好みに合わせてケーキや花、お酒などをプレゼントしています。毎年の節目を大事に紡いで信頼関係を築き、中には15年以上もお付き合いが続く方もいます」

医療・介護職ら、本人中心の“ケアチーム”に鍼灸セラピストの視点を

　「自分でできることは自分でやりたい」など利用者の願いに応えるため、一生懸命に力を尽くすことをモットーにする天満さん。目指すのは「75歳まで現役」。将来にわたり現場に立つため自身の体力維持にも力を入れ、週2回のランニングと週1回のジム通いを欠かしません。さらにボクシングトレーナーも務め、俊敏な身体機能を磨いています。

　「ジムで教えているときも、施術しているときも一人一人に全力で向き合います。毎回、“この時間は目の前の方にとって大切なひととき”という心構えで、仕事に臨む際は玄関で自分のげんこつで3回おでこをたたき、気合を入れてからインターホンを押すのをルーティンにしています」

　歩行が困難だったり、1日の大半をベッドで過ごしたり、介助を必要とする人に数多く関わってきた天満さん。医療職や介護職、それぞれが専門性を持ち寄り、本人や家族を支える“ケアチーム”の中に、鍼灸セラピストの視点とノウハウが加わることで、より一層利用者のコンディションに適したサポートが可能になると考えています。

　「訪問鍼灸ケアを活用してもらうため、地域のケアマネジャーさまや施設職員さまに向けて定期的にニュースレターも発行しています。利用者さんの感想なども紹介しながら、サービスの雰囲気を伝える工夫をしています」

　毎朝神社に立ち寄り、「今日も皆さんが元気で過ごせますように」と手を合わせてから訪問を開始。地域に根ざした活動により、天満さんは利用者の暮らしに寄り添いっています。

（取材年月：2025年6月）

訪問による鍼灸サービスで利用者の目標に寄り添い、心身を細やかにケア

鍼灸や手技、簡単な運動やストレッチを取り入れ筋肉や関節にアプローチ

プロボクサー時代の経験から鍼灸師に。心を解きほぐして信頼関係を構築

医療・介護職ら、本人中心の“ケアチーム”に鍼灸セラピストの視点を

専門家プロフィール

Other Interview