研究と実践でピラティスの可能性を追求するインストラクター
田沢優
Mybestpro Interview
研究と実践でピラティスの可能性を追求するインストラクター
田沢優
#chapter1
4都府県にスタジオを展開する「ピラティススタジオBB」代表・田沢優さん。ピラティスマシンを使った完全マンツーマンのレッスンを行っています。
「グループレッスンでは効果が出にくかったり、何をやっているのか分からなかったりする方が多く来られますね。最近ではピラティスインストラクターの会員も増えています」
ピラティスは、呼吸と動作を連動させて体幹を整え、姿勢や動きの質を高めるエクササイズです。ジョセフ・ピラティス氏が1940年代にニューヨークでスタジオを開設して以降、ダンサーや一般の方まで少しずつ広がり、無理なく体を再教育できる点が魅力。体を鍛えることよりも、動きの質を整えることを重視しています。
「ある程度理解された方ならグループレッスンもいいですが、初心者だと自分の癖に気づかないまま続けてしまうことが多いんです。そうなると、ピラティス本来の効果が得られません」と田沢さん。姿勢改善、肩こり・腰痛の軽減、シェイプアップなど、レッスンに来る人の目的はさまざまですが、ピラティスの根底にあるのは正しい動き方の習得です。
「例えば腕を上げるだけでも、悪い癖で余計な筋肉を使っていると必要以上に疲れますし、肩幅が広がってしまう場合もあります。体幹だけではなく肩にもインナーマッスルは存在し、肩甲骨を動かす時に肩のインナーマッスルが連動されると、余計な力を使わずに腕を動かすことができるようになります。ピラティスは、そうした身体の使い方を学ぶものなんです」
アメリカ製の高機能なピラティスマシンを多数導入しているのも強みです。マシンによるサポートで、早い段階から変化を感じられるとか。動きが整うことで、姿勢が自然に整い、疲れにくく引き締まった身体へと導かれます。「動きを正せば、見た目も自然と変わるんです」と田沢さんは笑顔を見せます。
#chapter2
レッスンは、一人一人の体の癖を分析することから始まります。動き方の癖は人によって異なるため、結果的にオーダーメードの内容となるのだそう。動きの特徴を見極め、なぜそのエクササイズが必要なのかを丁寧に説明しながら進めていくのが田沢さんのスタイルです。
「最初は肩や体幹、骨盤や股関節など、分かりやすい部位からアプローチします。『腕が軽く上がるようになった』『前屈が深くできるようになった』といった成功体験を積み重ねることで、通うのが楽しくなるよう工夫しています」
中には、オープン当初から続けて、通算1,000回以上レッスンを受けている人も。一般の人からパフォーマンスを追求するアスリートやダンサー、産前産後の女性など、幅広い層が利用しています。
「80代になってから通い始めた方もいらっしゃるんですよ。その方を見ていると、いくつになっても体は変えられると実感しますね」
田沢さんは、外資系コンサルティングファームを経て、プロ野球の「千葉ロッテマリーンズ」に転職。球団の経営改革やデータ分析に携わりながら、学生時代からの運動指導の経験を生かしてトレーナー業を続けていました。2009年に独立し、加圧トレーニングを中心としたスタジオを開業。その後、ピラティスと出会い、「神経と筋肉の連携を高める」という考え方に強く引かれたといいます。
最初に学んだのは、アメリカの理学療法士・教育学博士が構築した「PHIピラティス」の理論。動きの質を細やかに追求するメソッドが、日本人の感覚や価値観にもなじむと感じたからです。
#chapter3
「学びを深める中で、ピラティスというものが自分の中で熟成していき、説得力を持って伝えられるようになった」と田沢さん。
2015年には、フィットネス業界への影響力や社会貢献が評価され「NEXT AWARDトレーナー・インストラクター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。さらに同年、科学的根拠に基づいた指導の基礎を築くため、東京大学大学院に進学しました。
「体系的に知識を深められたのはもちろん、正しい情報の見極め方も身に付きました。海外の論文を直接読み込み、エビデンスのある研究とそうでないものを判断できるようになったのは大きな財産です」
2020年までPHIピラティス東京支部長を務めた後は、より幅広い視点でピラティスの研究を継続。後進の指導にも力を注ぎ、これまでに延べ300名以上のインストラクターを育成してきました。
スタジオ運営においては、新卒採用にも積極的で、正社員率の高い体制をとっています。「私自身、海外のスタジオを巡ることで新しい知見を得てきたので、社員にも自分の目で学んでほしい」と話し、毎年海外研修も実施。社内教育の仕組みも築き上げてきました。
今後は「コネクションズバンド」というツールを活用した画期的なトレーニング法の普及や、エコー(超音波)を使用した骨盤底筋に着目したレッスンの開発にも取り組んでいます。アスリートを指導できるレベルのインストラクター養成も本格化させる予定です。
豊富な知見をもとに挑戦を続ける田沢さん。「ピラティスは一生を通じて続けられるもの。その魅力をこれからも伝えていきたいです」と力強く語りました。
(取材年月:2025年11月)
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Profile
研究と実践でピラティスの可能性を追求するインストラクター
田沢優プロ
ピラティスインストラクター
ピラティススタジオBB
一生の身体のメンテナンスに役立つオーダーメードのレッスンを展開。東京大学大学院で身体科学を修め、海外のスタジオで新しいメソッドを習得するなど、実践と研究の両輪でピラティスの可能性を追求しています
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