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アーティストの思いを伝え、感動を届けるためチーム一丸となって音響を制作

音響技術を次世代に伝承するサウンドクリエイター

武田安記

武田安記 たけだあき
武田安記 たけだあき

#chapter1

コンサート、演劇、ミュージカル、ダンスショーなど幅広く音響業務を担当

 「アーティストが思い描く音を提供し、感動を届けるのが私どもの役目。皆さんの世界観を余すことなく表現できるよう力を尽くします」

 そう語るのは、サウンドクリエイターとして三十余年のキャリアを持つ武田安記さん。音響会社「ライブデザイン社」のカンパニープレジデントとして約90人の従業員を統括しながら、自身も技術者として現場へ足を運びます。

 「音響業務は、音を入れるタイミング消し方、音量や音質を設計するプランナー、機材を操作するオペレーター、音の響きや機材管理を行うエンジニアなど、多くのプロで成り立っています。専門的なスキルと同じくらい重要なのが『コミュニケーション能力』です。会場や演目によって求められるものが異なるので、クライアントの希望をくみ取り、臨機応変に対応する必要があります」

 コンサートや演劇などは大勢のスタッフが携わります。意思疎通を図ってコンセプトやイメージを共有し、一丸となって取り組むことが良質な作品づくりの鍵となります。

 「当社は創業以来『人とのつながり』を大切にすることで成長してきました。演者も裏方も全員がチームになれるよう、どの現場でも笑顔と周囲への思いやりは欠かせません。実際にクライアントからは、技術力とともにホスピタリティを高く評価していただきます」

 他方面から引き合いがあり、2023年度は1000件以上のオファーがありました。ライブやミュージカル、クラシックコンサート、舞踏・ダンス、アイススケートショー、企業の式典など案件は多岐にわたり、ジャンルを限定せず広く請け負っています。

#chapter2

スタジオ部門が仲間入りし、コンテンツのナレーション録音や効果音などを制作

 高校時代バンド活動に励み、音の魅力を最大限に引き出す音響の仕事に心をひかれた武田さん。ノウハウを学ぶため専門学校に進み、卒業後は劇団へ入団。舞台音響に5年ほど従事します。

 「縁あって、当社の母体である『エス・シー・アライアンス』に声を掛けてもらい入社しました。劇団では演者と裏方の垣根がない環境に身を置いていたため、『人と人をつなぎ、心と心をつなぐ』という企業理念に深く共感しました」

 時に感性や創造力などを要する興行業界では、個人の実績が認知されやすい傾向にありますが、武田さんは「共同体」としての力を重視。メンバーが手を取り合い、一致団結して一つのステージを作り上げます。

 「私たちが現在こうして仕事ができるのは、各世代が技能を磨き上げ、惜しみなく次世代に継承してくれたおかげです。自分たちだけで成し遂げた成功ではなく、先人たちの努力あってこそだと従業員一同が忘れないようにしています。技術も功績もみんなで共有すべきです」

 昨今の動画配信ブームにより、音響の需要は高まっています。2019年には母体企業の社内カンパニーとして独立していたスタジオ部門が、ライブデザイン社の新セクションとして参入。これまでの業務に加え、テレビCM、VP(ビデオパッケージ)などのナレーション録音、効果音や音源制作を手掛けるようになりました。

 「個人でも音響が作れる時代ですが、映像を効果的に演出するサウンドデザインはプロの技量が明確に表れます。豊富な経験知に基づいて、訴求力の高い上質なコンテンツ作りのお手伝いができればと思います」

武田安記 たけだあき

#chapter3

舞台や演奏会などイベントを主催する企業・団体も実現に向けてサポート

 近年、武田さんはエンターテインメントの現場にうれしい変化を感じています。興行業のプロダクションに加え、企業や各種団体が文化事業として舞台や演奏会を開くケースが増えているとのこと。しかし、イベント会社や音響会社につてがなく、出だしで苦戦することが多いそうです。

 「初めての場合、何から始めるべきか悩まれると思います。当社では漠然とした企画でも相談に乗ります。まずは日時や会場、予算感をお伺いし、最短で一週間後の催しから承ります。私どもで受けられない場合もアイデアを出したり、他の業者を紹介したり、実現に向けてできる限りのアドバイスをいたします」

 大半のイベントには予算や時間などの制約が存在します。トライアンドエラーにより改善を加え、置かれた状況で最適な音を奏でるために創意工夫を凝らすのが面白さだと言います。

 「音響の仕事を続ける理由は『喜びにあふれたお客さまの表情をじかに見られるから』に尽きるでしょうね。業種も会社も違う面々がひとつのチームとなり、観客の感動を引き出せた達成感は何度経験しても新鮮です」

 アーティストの理想を形のない「音」に落とし込めるのは、リスペクトがあってこそ。熱い情熱を持って現場に立つ武田さんは、今後について次のように語ります。

 「これからも求められることに応えられる企業でありたいですね。要望をかなえるためにも知識と技術を養って次の世代に引き継ぎ、自分たちが受けた恩恵をクライアント、そして観客に還元していきます」

(取材年月:2024年7月)

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専門家プロフィール

武田安記

音響技術を次世代に伝承するサウンドクリエイター

武田安記プロ

サウンドクリエイター

株式会社エス・シー・アライアンス サウンドクラフト ライブデザイン社

先人より譲り受けた技術と豊富な知識が強み。アーティストの思いをくみ取り、音をデザインし、感動を届ける。現場では人とのつながりを重視し、ステージに携わる全員が一丸となって業務に取り組めるよう支援する。

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