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クラブ活動のように数学を楽しみながら、深く考え、探求する力を育成

子どもの「数学力」を育てる数学教育の専門家

植野義明

植野義明 うえのよしあき
植野義明 うえのよしあき

#chapter1

幼児・小中高生を対象にした教室と、誰もが数学の難問に挑戦できる教室を開設

 「日本の小学校では算数と呼びますが、本当は算数も含めたすべてが数学です。当教室は皆さまに数学の面白さを知ってもらうため、『クラブ活動のように数学を楽しむ場所』を用意しています。速く正解を導き出すことばかりに終始せず、友だちや講師と対話を重ね、じっくり考え、言葉にする経験を積んでほしいのです」

 そう話すのは、大学で数学を教えて30年以上、現在も東京大学で非常勤講師として教壇に立つ植野義明さん。東京都国立市で「くにたち数学クラブ」を主宰し、幼児から小中高生を対象にしたガウス教室と、学年や年齢を問わず数学の難問に挑戦できるフェルマー教室を開いています。

 「重点を置いているのは、予想を立てて検証すること。間違ってもいいから自ら考え、自分と違う意見を認めることも大切な学びです。予想したことが正しいかどうか検証する科学的な態度を小さい頃から身に付ければ、受験テクニックに惑わされずに中学、高校、大学でもスムーズに学習を進められます」

 ルールは簡単ながら、やり始めると子どもたちが熱中するような教材を選んでいます。発泡スチロールでお城を作ったり、ペットボトルで砂時計を作ったり、方眼紙と分度器で木の高さを測ったりという工作の授業がたくさんあるのも特徴です。

 「考える力は運動神経・感覚神経と密接に関係しています。『体を動かす、物を見る、触る』をバランスよく行う中で、数や量、形、空間などを捉える数学力の基礎を育んでいきます」

#chapter2

予想を立てて検証する習慣を幼少期に身に付けてもらうため、クラブを設立

 「公式にあてはめて答えを出すのが数学」という、ステレオタイプのイメージを持つ大学生に多く出会ってきた植野さん。幼児期から物事を予測して真偽を確かめる習慣を持つことの重要性を感じ、定年退職と同時にクラブを設立しました。

 「数学は覚えることよりも考えることの方が肝心です。間違っても、後で気づいて直せば良いのです。たとえ公式を忘れても、本質を理解していれば思い出せます」

 植野さんのもとには100人を超える生徒が集い、中には北海道やアメリカから遠隔で受講する学生や、意気軒高に勉学にいそしむ60代もいます。
 
 「国際数学オリンピックの過去問に挑んだり、数検1級を目指したりする中学生もいます。また、大学レベルの数学を学ぶ『中高生のための現代数学』クラスもあります」

 幼児・小学生、中高生クラスなど、いずれも体験は無料で気軽に参加できるのも特徴です。

 「最も生徒が多いのは小学校1、2年生クラスです。幼児クラスから通っている子は予想を立てることが習慣化しているので、小学校から通い始めた子たちも感化され、活発に意見をやりとりしています」

 教室にある積み木やパズルなどのおもちゃを目当てに来る子や、授業で使ったプリントを「家でやるから、もう1枚ちょうだい」という子、他の習い事や受験対策の塾に通いながら息抜きとして通う子もいるそうです。

 「この教室では宿題は出しません。中学生以上のクラスでは録画を配信しているので、録画を見て復習できます」

植野義明 うえのよしあき

#chapter3

保護者に向けたオンライン講座「ママは先生 おうちで数学クラブ」も用意

 「どのクラスも月ごとに『数独』『四色定理』などのテーマを決め、じっくり4週間かけて段階的に発展的な課題にチャレンジしてもらいます」と植野さん。

 四色定理とは、平面上に描かれたどんな地図も4色あれば必ず塗り分けられることを主張する定理です。まず簡単な地図を渡し「何色で塗れるかな?」と問いかけ、子どもたちは予想を立てて取り組みます。

 「4週目には日本地図が登場します。47都道府県ありますから、同じ色が隣り合わせにならないよう夢中になって色鉛筆を走らせます。もし5色使ってしまったなら、どこを直せば4色になるかを考える。失敗しても自分で解決法を探す力がつきます」

 対面授業に通うのが難しい家庭に向けたオンライン講座「ママは先生 おうちで数学クラブ」も開講。保護者が子ども役になって授業に参加し、今度は自分が先生になって習った内容をわが子に教えます。

 「幼児教室では最後にペンギンのペンペンを主人公にしたお話をします。ペンペンはいろいろな困難に直面し、問題を解くことでお話が先に進みます。子どもたちは、一生懸命に計算をしてペンペンを助けます。物語をPDFで配信するので、親御さんがご家庭で実演してお子さんと一緒に学習していただけます」

 子どもは身のまわりのさまざまな事柄に興味を持ち、探求する。人間は本来、生まれながらにして数学が好きなのだと植野さんは言います。

 「学校の成績や受験にとらわれず、それぞれの子どもたちにいま本当に必要な物を届けたいと思っています。ぜひ体験にお越しください」

(取材年月:2024年10月)

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専門家プロフィール

植野義明

子どもの「数学力」を育てる数学教育の専門家

植野義明プロ

数学教室

株式会社くにたち数学クラブ

数学者としてのキャリアを背景に、数学教育の専門家として活動。子どもたちが数学を好きになり、学習に対する意欲を育てることを目指し、学ぶ喜びを感じながら自然に数学的思考が身に付くようサポートしています。

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