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現代医学と東洋医学の視点を融合し「個別統合医療」を推進、がん治療にも活用

次世代へ医療の可能性を広げ“人”に寄り添う漢方内科医

鈴木邦彦

プロフィール

#chapter1

一人一人の体質や生活習慣まで含め、心身の不調を総合的に見立てる漢方生薬治療

 東京都渋谷区広尾に2024年開院した「K.Clinic HIROO」は、漢方生薬治療を軸に、現代医学と東洋医学の視点を組み合わせながら、幅広い不調の相談に対応する自由診療のクリニックです。

 院長の鈴木邦彦さんは、30年以上の臨床経験を持つ一般内科・漢方内科医。院内には、漢方専門薬剤師や鍼灸師の資格を持つ看護師など複数のスタッフが在籍し、調剤室では厳選された天然生薬を徹底管理。患者の体質や症状に合わせて処方する漢方煎じ薬のほか、免疫治療や鍼灸施術も行っています。

 「近年、医療界では一人一人の症状に合わせた『個別統合医療』が注目されています。痛みや不安、ストレスといった心身の不調を、体質や生活習慣まで含めて総合的に見立てるのは、東洋医学の概念そのもの。より“人”に寄り添った治療のあり方とも言えるでしょう」

 がん治療に関して、漢方薬で外科手術や薬物療法などに伴う副作用の緩和や、体調管理、心理的・社会的サポートに対応し、患者様とその家族を含めた療養生活の質の向上を目指す「漢方がんサポーティブセラピー」も行っています。

 鈴木さんは、がんの支持療法に漢方生薬治療の可能性を探求しながら、さらに踏み込んだアプローチを実践しています。

 さらに、痛みや不調を緩和するだけでなく、病気に積極的に立ち向かう手段として、体内の免疫細胞「NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)」を活性化させ、自らの力でがん細胞への攻撃を可能にする先進的医療の一つ「がん免疫治療」(理研免疫再生医学が独自に開発した新たながん免疫治療)にも積極的に取り組んでいます。

#chapter2

日々の生活に寄り添いつつ、より広い視点から医療に貢献する道を模索

 仙台で創業100年を迎える老舗薬局の家に生まれ育った鈴木さん。父親の代から漢方生薬を扱っており、幼い頃から独特の香りや調剤の様子に親しんできました。
 
 「漢方薬の奥深さを知る父の勧めもあり、西洋医学の知見も取り入れた漢方を専門にする医師を志しました。医師となって3年目からは、北里研究所附属東洋医学総合研究所漢方診療部に勤務し、慢性の難治性疾患や悪性腫瘍といった、長期的な対応が必要となる患者さまと向き合ってきました」

 臨床と並行して後進の指導にも尽力するなか、自身も長年、胃腸の虚弱や冷え症に悩まされてきた経験から「冷え症」を研究。1997年には当時はまだ一般的ではなかった「冷え症専門外来」を開設しました。

 「冷えは頭痛やめまい、便通異常、慢性的な痛みの要因となることがあります。一般病院では治療対象とされていなかったのですが、相談に訪れる人は少なくありませんでした。患者さまと二人三脚で体質改善を目指すなかで、次第に表情が和らいでいく姿に医師としてのやりがいを感じましたね」

 「医学や科学技術が進歩しても、がんをはじめとする難しい病気に苦しむ方は後を絶ちません」と鈴木さん。国の最先端医療として理化学研究所と千葉大学が開発したNKT細胞治療を通して、体内の免疫細胞のひとつである「NKT細胞」に関する研究に触れ、漢方の領域から先端的な治療に関わる可能性を見出しました。

 「漢方の枠を超え、より広い視点から医療に貢献したい」との思いから独立し、新たな挑戦に踏み出しています。

#chapter3

進化する医療技術と自然界の恵みを融合、未知数の可能性を次世代へつなげる

 「冷えの感覚やすぐに疲れて体調を崩しやすいなど、症状があっても病名がつきにくい不調は、近年では『未病』と呼ばれ、一般外来でも健康管理の一環として、対応が進められています。人によって不調のあらわれ方はさまざまで、生活リズムや季節の変化、心の状態など、多様な要因が重なっていることもあります。こうした不調に対し、長期間の服薬でも体への負担が少ない漢方治療を取り入れる医療機関も増えています」

 前職で「コロナ後遺症外来」に携わった際には、未知の病気に対して、東洋医学が大切にする「自己免疫力や自然治癒力に目を向ける視点」への注目が再び高まっていることを実感したと言います。
 鈴木さんは、暮らしの中でできることとして、毎日の食事を見直す「食養生」の基本的な考え方と取り入れるポイントを紹介。食品選びの工夫などを、ブログや講演会などで発信しています。

 「東洋医学には『心身一如』という言葉があります。体と心を切り離さず、一体として調和を図る健康観は、今こそ私たち現代人が意識したいものではないでしょうか」

 中国の伝統医学をベースに日本独自に発展させた漢方内科。同院では、未来を担う医師の育成にも力を注ぎ、漢方専門医を志す若手医師の受け入れ態勢も整えています。

 「テクノロジーや医療技術が目まぐるしく進化するなか、古来より自然界の恵みを活用してきた漢方生薬の力も、まだ十分に使いきれているとは言えません。その未知数の可能性を引き出す研究を追究し続け、次世代へと受け渡していきたいのです」

(取材年月:2025年8月)

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Profile

専門家プロフィール

鈴木邦彦

次世代へ医療の可能性を広げ“人”に寄り添う漢方内科医

鈴木邦彦プロ

医師

K. Clinic HIROO

漢方生薬治療を軸に現代医療の視点も取り入れた総合的な診療、食養生の提案で、心身の幅広い不調に向き合う。がん治療に伴う生活全般のサポートケアに加え、「がん免疫治療」にも積極的に取り組む

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