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守りたいのは「5年後10年後のその人らしい姿」。女性の健やかな未来を支えるために

生涯を通して女性の体を見守る婦人科腫瘍専門医

飯塚千祥

飯塚千祥 いいつかちあき
飯塚千祥 いいつかちあき

#chapter1

専門医が早期の診断、治療へと速やかにつなげる地域のかかりつけクリニック

 東急東横線・自由が丘駅から徒歩2分、ショップやカフェなどが入るビルの2階にある「自由が丘ちあきレディースクリニック」。

 院長の飯塚千祥さんは、長年大学病院で子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、子宮筋腫、子宮内膜症といった婦人科診療に従事。婦人科がん治療の最前線で数多くの手術や臨床経験を積んできた、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医の一人です。

 「がんが進行してからでは専門病院でさえ、できることには限界があります。地域のクリニックには、予防や定期的なチェックを通して早期の診断、治療へと速やかにつなげていく役割があるのです」

 同院では、子宮頸がんの精密検査に対応した機器を備え、検査から診断までの体制を整えています。必要に応じて日帰りでの処置にも対応しており、他の医療機関から紹介を受けるケースもあります。

 飯塚さんと同じく婦人科腫瘍専門医である副院長をはじめ、内分泌や東洋医学、生殖医療など、異なる専門領域を持つ医師たちが在籍。手術経験に基づく視点を持つ医師が初期段階から診断に携わることで、速やかに正確な診断と、体への負担が少ない治療方針の提案を可能にしています。

 また、助産師・薬剤師・看護師・保健師といった医療資格を持つ女性スタッフが連携し、チーム医療を実践しています。がん診療や治療後のケアにとどまらず、小児期・思春期の月経の悩み、妊娠、更年期など、女性のライフステージごとに変化する心身の不調や不安に対して、生涯を通して向き合います。

#chapter2

医療の最前線から、予防の大切さを伝えるために開業を決意

 飯塚さんは大学病院で10年以上にわたり、執刀医・指導医として勤務し、数多くの婦人科がん手術に携わってきました。高度な治療に取り組む一方で、「医学の進歩だけではがんになる人を減らすことは難しい」という現実を実感したといいます。

 「がんの予防や早期発見の大切さを伝えられる立場として、専門知識を持つ医師がもっと身近な存在となり、その道案内を担うべきだ」という思いから、2019年に開業を決意。その背景には、今もなお心に残るできごとがありました。

 「妊娠中に子宮頸がんが見つかり、進行が早まってしまった患者さんがいました。出産後、可能な限りの治療を行いましたが、残念ながら命を救うことができませんでした。子宮頸がんの中には、ワクチンで予防できる型もあります。がんになる前の段階で、医療者がもっと関われていればと、強く思いました」

 この経験を通して、予防や早期発見につながる取り組みの重要性を再認識。「自分の体を知ることの大切さ」を伝えたいという思いが、診療の原点です。2024年にはクリニックを移転・リニューアル。先端医療の現場で奮闘してきた飯塚さんの姿を知り、志を同じくする同期や後輩が、一人また一人と集まり、診療体制はさらに充実しています。

 また、飯塚さんは後進の育成にも積極的です。専門医を目指す若手医師たちが、試験前対策のアドバイスを求めてたびたび訪れるとか。

 飯塚さんの懐の深さにひかれるように、第一線の医療の担い手が、自分らしい働き方もかなえながら、それぞれが持てる力を最大限に生かせる場にもなっています。

飯塚千祥 いいつかちあき

#chapter3

かかりつけ医であると同時に、医療を越えた領域にも挑戦し続ける

 飯塚さんのもとでは、幅広い世代の女性に対応するため、多角的な専門性を生かした診療が行われています。
 
 「例えば、お子さんの初潮が遅れている場合は、小児科ではなく婦人科の領域です。不妊の可能性があるご相談には、生殖医療の経験を持つ医師が、不安や疑問に丁寧に向き合います。更年期の不調には、東洋医学の知見も活用するほか、閉経前後のデリケートゾーンの違和感には、炭酸ガスレーザーを用いた治療法も導入しています」
 
 こうした取り組みを通して、飯塚さんは「がんのリスクを回避するためにも、全ての女性にもっと自分の体を知ってほしい」と、呼び掛けます。
 
 近隣ショップの下着やコスメサンプルが目に楽しい、ゆったりとした待合室。内診では、事前の丁寧な説明や看護師のケアと合わせて、腹部を温める工夫や器具の配慮もされており、「痛い」「怖い」というイメージを和らげる環境づくりにも努めています。

 「子宮頸がんの切除自体は、それほど難しい手術ではありません。しかし、その部分は、その方をこれまで形作ってきた大切な一部。『新たな命を紡ぐ』という本来の機能を残せる究極のラインを探るのは、ある意味、医療を越えた領域と言えるかもしれません。私たちが守りたいのは、5年後10年後のその人らしい幸せな姿なのです」

 幼い頃から生命や人体に興味を持ち、医師を目指して一直線に歩みを進めてきた飯塚さん。家族から「後ろを振り返らず前ばかり見ていた」と言われたように、その眼差しは、女性たちの健やかな未来に注がれています。

(取材年月:2025年7月)

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専門家プロフィール

飯塚千祥

生涯を通して女性の体を見守る婦人科腫瘍専門医

飯塚千祥プロ

医師

自由が丘ちあきレディースクリニック

婦人科腫瘍専門医を含む複数の専門領域の医師が連携し、がん予防の取り組みや、初期診療から子宮頸がんの精密検査や日帰り手術まで対応。女性のライフステージに寄り添い、安心できる診療をめざします

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