PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

経営や人材育成、支援困難者へのアプローチなど、障がい者福祉に携わる事業者や支援者へアドバイス

障がい者福祉法人の経営や支援の改善を助言する専門家

清水謙一

清水謙一 しみずけんいち

#chapter1

利用者のやりがいや地域交流をかなえ、世の中に求められる活動を提案

 東京都町田市に根差し、就労継続支援B型事業所、グループホーム、短期入所施設、生活介護事業所、相談支援事業所などを運営する「社会福祉法人まちだ育成会」。働く場や社会参加の場、生活の場、困りごとをくみ取る場を提供してきた理事長の清水謙一さんは、施設を統括する傍ら、障がい者福祉に携わる事業者や支援者に向けたアドバイスを行っています。

 多い相談の一つが、支援が困難な人へのアプローチ。清水さんは20年以上にわたり現場に携わった経験に加え、大学教授の指導のもと研究発表にも取り組み、行動心理の面からも障がい者福祉について理解を深めました。障がいの特性に合わせた声掛けやサポートの仕方など、豊富な知見をもとに研修講師も務め、寄り添い方を伝えています。

 「経営においては、利用者さんにどんな仕事であればやりがいを持ってもらえるか、収益も安定し工賃を多く払えるか、悩まれるようです」

 同法人には紅花を育てている就労支援事業所があり、種まきや収穫、紅花を使った染め物などを行う年間プログラムを始め、好評を得ているとのこと。シイタケを栽培している事業所では、自然豊かな立地を生かしてカブトムシ採集の体験会も開いています。

 「何でもそろっている現代は、モノを消費するより体験に価値を置くというトレンドから着想しました。利用者さんも接客したり、自分がやっている作業を教えたり、外部と交流しながら生き生きと働いています。時代の流れを捉え、いま世の中で求められていることと自分たちが興味のあることを掛け合わせた活動を探るお手伝いをします」

#chapter2

ラグビーに打ち込みキャプテンも務めた経験から、チームビルディングにも強み

 清水さんは、高校、大学でラグビーに打ち込み、高校時代は日本一も経験。7年間ラグビー漬けだったため、違う分野に挑戦したいと思案し、親の勧めで福祉施設を訪れ進路として選びます。

 大学卒業後は神奈川県内の社会福祉法人に就職。かねてより人間の行動心理に着目していたこともあり、障害のある人との関わりが楽しかったと振り返ります。

 「思いも及ばない行動でも、その方なりの理屈があるんです。理由をいくつか推測して観察したり検証したりする中で、この心理だからこの行動をとるというのが見えてくるんです。原因が分かれば、利用者さんができるだけ安定した気持ちで過ごせるよう対策を講じることができます。言葉を発することができない方でも、心が通じ合えたと感じる瞬間があるんですよ」

 20代後半で「まちだ育成会」に転職。法人内の各施設で経験を積み、2024年に理事長に就任します。土日はラグビーの社会人チームで競技を続け、キャプテンを務めてメンバーを率いてきたことが、組織づくりに役立っていると言います。

 「組織が良い状態の時もあれば、悪い時もあるでしょう。低迷の兆候が見えたタイミングで、チームの目標を確認することが大事です。一人一人の力を底上げするのも不可欠で、どこまで指示を出して、どこから自分たちで考えてもらうのか。主体性を促すコーチングの手法でグループワークを実施することもあり、個と集団の力を引き出すチームビルディングについて助言ができるのも、当方の強みです」

#chapter3

多様な人材を採用し、地域課題の解決にも貢献できる施設づくりに注力

 福祉業界では人材確保も課題の一つで、清水さんも試行錯誤してきました。採用、育成、定着というステップの中で、一番時間とお金をかけるべきは採用と話します。

 「優秀な人材を得るには、まずは応募者を増やす施策が必要で、福祉分野以外の人材にもアピールできる求人窓口を設けることが有効でしょう。多様な人材の起用が、組織の活性化にもつながります。自分たちの強みや目指す姿を見つめ直し、発信することが人を集める糸口となるはずです」

 清水さんらは、農作業をする就労支援施設を複数展開し、農業に興味がある人も応募してくるとか。今後は地域づくりに関心がある人にも採用を広げたいと考えているそう。

 「社会福祉法人は、行政と民間の間に立つ事業体を生かして、地域課題にアプローチすることが求められています。例えば、当方では利用者のための送迎車を活用して、高齢者の買い物支援もしています」

 さらに、地域に開かれた施設づくりの一環として、重度障がい者を対象とした生活介護事業所の建て替えを計画しているとか。

 「釜でご飯を炊くとか、手間暇かけた暮らしの場を予定しています。不便だからこそみんなで創意工夫し、コミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。地域の人にも気軽に来ていただき、利用者さんと自然な形で関わってもらえる仕組みを作っていきたいですね」

福祉事業所のあり方を見据えさまざまな取り組みをする清水さん。今後も、実践から得たノウハウを広く伝えていきたいと語ります。

(取材年月:2025年5月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

清水謙一

障がい者福祉法人の経営や支援の改善を助言する専門家

清水謙一プロ

障がい者福祉サービス

社会福祉法人まちだ育成会

町田市内で8カ所の施設を運営。支援が困難な人へのアプローチ、事業所の経営安定、人材育成、工賃アップにつながる就労支援、地域に開かれた施設運営など、障がい者福祉の課題に対してアドバイスします。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

MYBESTPRO