親と子の絆を紡ぐ人形作りの専門家
原英洋
Mybestpro Interview
親と子の絆を紡ぐ人形作りの専門家
原英洋
#chapter1
「ふっくらとしたかわいいお顔はどこかわが子に似ているようで、心が和みます。お子さまが多くの人に愛され、末永く幸せに過ごせるように願いをこめて、お気に入りを見つけて自宅に迎えてほしいですね」
そう語るのは「ふらここ」の代表・原英洋さん。東京・日本橋に位置する本社ビルの1階と2階にショールームを構え、雛人形をはじめ五月人形やブライダル人形を展示。ネットを中心に全国に向けてオリジナルの人形を届け、累計販売数は約6万件に及びます。
「ぬくもりあふれる人形づくりを目指し、『ふらここ』という柔らかい響きの社名にしました。奈良時代から和歌で使われる春の季語で「ぶらんこ」を意味し、雛祭りが春の行事ということもあり、ぴったりだと思いました」
これまで「祖父母から孫への贈り物」というのが一般的でしたが、今では顧客の9割は20〜30代の子育て中の母親。支持される理由は「かわいらしさ」にあります。
「昔ながらのお雛さまは細面でキリッとしていますが、私たちのお人形はあどけない赤ちゃん顔をしています。華やか、おしとやかな表情など、お顔の種類は20種類あり、名前は『ことこと』『そよそよ』などの繰り返し言葉で、お子さまもなじみやすいネーミングにしました」
ブライダル人形は新郎新婦が両親へ贈るギフトとして制作。利用者からは喜びの声が寄せられると言います。
「結婚披露宴で、夫婦となったお二人が親御さんに大切に育ててくれた感謝と、これからも元気に暮らしてほしいという願いを込めて贈呈されます。小さい頃の面影を感じる人形で、ご家族の思いが紡がれるのはうれしい限りです」
#chapter2
祖父は人間国宝の人形師、母は女流人形師という家系に生まれた原さん。「海外からの輸入品の方が洗練されている」という風潮があった高度経済成長期の中で育ち、伝統産業を継ぐことに抵抗があったと振り返ります。
「学生の頃から文章を書くのが好きで、恩師の助言で作家を志しました。物書きの勉強のため出版社に就職しますが、2年もたたずして父が急逝しました」
夢が頓挫し、家業を切り盛りする毎日にぼうぜん自失としていた原さん。自分が作家として成し遂げたかった「人の心を癒やしたい」という気持ちを人形で表現するため、奮起します。
「頭番のすすめもあり24歳で専務取締役に就きました。従業員の相談を受けることも増えて自らの立場を再認識し、経営学を勉強するために朝3時に起きて出社前にマネジメントなどの本を読み、土日はセミナーに参加する日々を約10年過ごしました」
接客の中で「かわいらしさが求められている」と時流の変化を感じ取った原さんは、新しい人形作りを提案しますが、伝統に新風を吹き込もうとする試みに周りは猛反発。2008年、自分が理想とする人形作りを実現するため独立します。
「手元の資金をかき集めて、なんとか雛人形を250組作ったのですが、最初は全く売れませんでした。ところが年が明けて正月休みが終わるころから急激に注文が入り、なんと2週間で全て完売してしまったのです。得た資金で急いで五月人形を200組作ったところ全て売れ、感激するとともに時代のニーズに合っていると実感しました」
#chapter3
かわいらしい人形も、今では一つの市場ができていると手応えを感じている原さん。これからも、時代に好まれる人形作りを展開していきたいと意気込みます。
「ライフスタイルが変わり、雛祭りや端午の節句に関心が薄い方もいらっしゃるかもしれませんが、起源は古く1000年以上の歴史があります。いにしえの文化が今でも生活に根付いている国は珍しいでしょう。現代を生きる皆さまに寄り添ったお人形を作り、脈々と受け継がれた文化を未来につなぐことに、大きな意義を感じています」
「ふらここ」に在籍する二十余人の社員は、原さんを除き全員女性。平均年齢は30歳で、顧客層と重なる世代です。
「私たちのお人形が親しみやすいのは、女性によるデザインだからです。お顔もおててもあんよも丸みを帯びているのが特長で、『かわいい』と思えるものづくりを女性は感覚的にできます。優しくてあたたかい作風が、私たちの最大の強みだと自負しています」
「親と子の深い絆作りに貢献する会社」をビジョンに掲げる原さん。わが子に愛情を伝え、家族みんなで大事にいつくしむ人形を手掛けていきたいと目を輝かせます。
「節句行事が連綿と続いているのは、親が子を思う心はいつの世も変わらないからだと私は考えています。子どもの健やかな成長を祈って毎年人形を飾りお祝いする習わしは、とてもすてきだと思いませんか? おじいちゃんおばあちゃんも集うよい機会になりますので、後世に文化を残していきたいですね」
(取材年月:2025年4月)
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Profile
親と子の絆を紡ぐ人形作りの専門家
原英洋プロ
人形の製造・販売
株式会社ふらここ
「かわいらしさ」を追求した雛人形、五月人形、ブライダル人形で、親と子の深い絆作りに貢献。時代に合わせて変えていくことをポリシーに、その時代に好まれる人形作りを続けていきます。
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