事業承継と成婚をサポートするファミリービジネスアドバイザー村田弘子

事業承継と成婚をサポートするファミリービジネスアドバイザー

村田弘子

後継者のパートナー探しと、士業者との連携でスムーズな事業承継をサポート

　「手塩にかけて育て、守ってきた事業を未来につなぐには、後継者であるご子息やご息女が『誰といつ結婚するか』は課題であり、企業理念や御家の歴史を受け継ぐにふさわしいお相手を見つけねばなりません。私は事業承継と家族の承継を包括的に捉え、跡継ぎに悩む経営者のお役に立ちたいと思っています」

　そう語るのは、「事業承継結婚推進機構」の代表・村田弘子さん。ファミリービジネスアドバイザーとして「しあわせ相談倶楽部良家のご縁の会」を主宰し、お見合いから交際、成婚、そしてスムーズな事業承継に至るまでの一連の支援を行っています。

　「後継者がいる場合は、節税対策や株式の分散リスクへの対応が専門家からアドバイスされますが、後継者がいない場合はM＆Aにより自社が合併・買収されることになりかねません。他者に委ねるのではなく、お子さんに引き継ぐことを願う方がほとんどですが、同族経営の基盤となる創業家の結婚問題を解決するためのプラットフォームが、現状では不足しているんです」

　これまで跡継ぎ探しは、地域の有志が水面下で仲立ちを担ってきました。しかし、仲人の高齢化が進む中、創業家と対等に話し合える人物や、信頼して身上書を預けられる立場の人が少なくなっているそうです。

　「当方は、加盟する結婚相談所の会員や独自の人脈から、審査を通じてよきパートナーをご紹介します。さらに士業の方と連携してきめ細やかにコンサルティングし、財産の相続や信託に関する『家督承継サポート』や、後継者育成や経営資産譲渡に関する『事業承継サポート』もいたします」

創業70年の会計事務所に嫁ぎ、3代目を期待されたことが婚活支援の原点

　村田さんがファミリービジネスアドバイザーとして活動するきっかけは、自身の経験にあります。創業70年の会計事務所の2代目に嫁ぎ、「子どもを3人以上、男子を必ず跡継ぎに」という命を受けたと言います。

　「サラリーマン家庭で育った私にとって、創業家の跡継ぎ問題がこれほど深刻だとは想像もしていませんでした。顧問先にお伺いした際に、奥さまから『うちの子どもに良い人はいないかしら』と内密に相談されることもありました。自分と同じように、人知れず悩んでいる方は少なくないと分かったんです」

　「食事がのどを通らない」「夜も眠れない」と、子どもの結婚を心配する母親たちの声に共鳴。3代目を期待され奔走した自らの姿と重なり、一人一人の事情や心情に寄り添いたいと一念発起。「しあわせ相談倶楽部」を立ち上げ、地域の実業家や地主、士業、医師の家庭を対象に仲人業を始めました。

　若い世代はマッチングアプリを活用する婚活が増えていますが、「社長の御曹司がお嫁さんを探している」など情報が外に出るのを嫌がる傾向にあるため、気軽に使えない側面もあるとか。

　「地元のうわさを避けるために、パートナーを他県で探してほしいと望まれる方も少なくありません。すてきなお子さまなのに、ご縁が薄くなってしまうのがもったいないことです」

　地域に根差し橋渡しをしてきた村田さんは、各地で伴侶を求める親子の存在を知り、2024年に「事業承継結婚推進機構」を設立。全国規模で用命に応えています。

人生や社運がかかった後継者の婚活を応援し、地域や社会の活性化に貢献

　「新たな門出を迎えるお二人の幸せが最も重要であり、お相手の実家が営む商売や家のしきたり、地域や従業員らとの関係について理解が不十分だと、結婚後にミスマッチが発生することがあります。パートナーを見つければ終わりという簡単な話ではなく、それぞれの人生や社運がかかっているので、適性や資質を見極めることを心掛けています」

　成婚後も「ばあや」として夫婦が円満な生活が送れるよう、末永く見守っていきたいと話す村田さん。わが子の結婚を案ずる親だけでなく、家業の発展を目指す子ども自身からも問い合わせがあり、半数近くを占めます。

　「親御さんは子どもの真意に気づきにくいものです。第三者として間に入り、お子さんの熱意やビジョンを伝えることも私の役目だと考えています。お見合いではなく、食事会やイベントを企画して自然な形で出会いを作り、ゴールインされた例もあるんですよ。皆さまの喜ぶ顔を見ると、良縁を結ぶお手伝いをしてきて良かったと心から思います」

　後継者がいないためにクリニックなどが閉院すると、医療サービスが受けられず地域住民に影響を与えることも懸念します。

　「日本の中小企業の多くは家族経営です。跡継ぎがおらず廃業が増えると、日本経済が衰退してしまいます。伝統工芸の担い手不足による、文化の継承問題も深刻です。SDGs（持続可能な開発目標）が注目される中、家族の持続可能性にも目を向ける必要があります。地方創生も視野に入れ、事業承継と婚活を応援していきたいですね」

（取材年月：2024年12月）

事業承継と結婚の双方を叶えるプラットフォームとして、ファミリービジネスの発展を支援

後継者のパートナー探しと、士業者との連携でスムーズな事業承継をサポート

創業70年の会計事務所に嫁ぎ、3代目を期待されたことが婚活支援の原点

人生や社運がかかった後継者の婚活を応援し、地域や社会の活性化に貢献

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