「闇の先に見える光」を描き見る人を勇気づけるアーティスト ebi

「闇の先に見える光」を描き見る人を勇気づけるアーティスト

ebi　

国内外で展示多数のデジタルアーティストがワークショップなどを開催

　紫や青、ピンクの独特の色使いと、力強いタッチで描かれたスケボーに乗るスーツ姿の男性。
　「feel promotion」所属、デジタルアーティストebi（えび）さんの「Whatever －なんでもいい－」という作品です。

　「アンバランスな組み合わせをスタイリッシュに描くことで、『固定観念にとらわれるな』『一度きりの自分の人生、楽しんで生きろ』といったメッセージを込めています」

　栃木市に拠点をおき、作品の販売、展示会やイベント、ワークショップの開催など多彩な活動を展開しているebiさん。「闇の先に見える光」をテーマに、主にタブレットを使って創作。自身が抱える葛藤などを擬人化して表現しています。複雑に入り組んだ思いが、デジタルを介することで解像度が上がり、独自の作品となるそう。

　2021年の初個展以来、年々活動の幅を広げ、大手百貨店・都内有名ホテルでのグループ展をはじめフランスのルーブル美術館を含む、海外の展示にも招かれるまでに。2022年に「Luxembourg Art Prize 2022 芸術功労賞」受賞、2024年に「英国王立美術家協会(RBA)名誉会員」の称号を授与されるなど、評価が高まっています。

　「ワークショップでは、当方の作品の線画に、子どもたちに自由に色を塗ってもらい、最後に一人一人発表する形式が多いですね。子どもたちの豊かな表現力に、親御さんも驚かれます。学校教育では補いきれない感性を育みたいと考えています」

　小山市では地域おこし協力隊からの依頼で、民泊施設の外壁に「無限の可能性」と題したウォールアートを制作。アートを活用した町おこしにも携わっています。

ギャラリー・アトリエを併設したカフェを開き、コーヒーと一緒にアート鑑賞を

　子どもの頃から絵を描くことが好きで、コンクールでたびたび賞をもらっていたebiさん。独創的であるがゆえ、中学のとき美術教師から「君の色の塗り方は評価できない」と言われたのを機に色を塗ることが嫌になり、専らデッサンをしていたと言います。

　高校卒業後は音楽の専門学校に進み、ミュージシャンを目指してコンビニエンスストアなどでアルバイトを経験します。

　「その後印刷会社に就職し、課長も務めました。音楽に打ち込んでいた時も、仕事で忙しい時も、手放さなかったのが絵を描くことです」と語るebiさんには、信頼していた人に裏切られたつらい過去も。

　「出口の見えない闇の中にいるように感じていたときに、仲間が毎日のように顔を見せて、元気づけてくれたんです。落ち込んでいても何も変わらない、周囲を笑顔にしたいなら、自分で立ち上がらなければという意欲が湧いてきました。私が使うことが多い紫や青やピンクは、希望の色です」

　周囲の勧めで個展を開催すると大きな反響があり、作品を見た人から「勇気が出た」「もう一度挑戦してみます」との声が寄せられます。

　「自分自身の思いをアートとして表現しているのですが、見る人に前向きなメッセージとして届くことがうれしく胸に響きましたね。もっと多くの人に一歩踏み出すきっかけや活力を得てほしいと思い、大工の祖父が建てた平屋にアトリエを開設しました。カフェも併設し、アートを鑑賞しながらコーヒーを楽しむこともできます」

定額制のサブスクリプションで作品を貸し出し、オーダーアートも制作

　ebiさんは、アートをもっと身近に感じてほしいと、定額で作品を貸し出すサブスクリプションサービスも始めました。

　「個人宅や美容院、商業施設などから引き合いがあり、部屋に飾るとどんな雰囲気になるのか、購入前の検討に活用される方もいらっしゃいます。従業員のモチベーションアップや福利厚生の一環として、オフィスに飾っていただくのもおすすめです」

　また、依頼者からヒアリングして、世界に一つだけのオリジナルを作り出すオーダーアートも手掛けています。

　「1000年の歴史を持つ神社の宮司さんから『ebiさんの感性で社殿と御祭神である素盞嗚命（スサノオノミコト）を描いてほしい』とご用命がありました。商業施設からのリクエストで、『戦争と平和』や『パラリンピック』などのテーマに沿って作品を制作したこともあります」

　最近では、デジタルで描いたものに手で加筆するミクストメディアの手法を取り入れたり、作品を動画にして音楽と融合させるMoving-ArtをLEDビジョンやサイネージに映し出す展示を行ったりと、新たな表現方法にも挑戦しているebiさん。「Art of Lights」というラジオ番組もスタートし、自身の作品について語ったり、アーティストをゲストに呼んだりする予定だとか。

　「アートに触れる時間は自分と向き合う時間でもあります。日常に取り入れることで、心が豊かになって人にやさしくできたり、感性が刺激されてアイデアが湧いたり、感受性を高める役割を当方の作品が担えたらうれしいですね」

（取材年月：2024年11月）

「闇の先に見える光」をテーマに、見る人に前向きなメッセージを届けるアートを制作

国内外で展示多数のデジタルアーティストがワークショップなどを開催

ギャラリー・アトリエを併設したカフェを開き、コーヒーと一緒にアート鑑賞を

定額制のサブスクリプションで作品を貸し出し、オーダーアートも制作

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