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専門の知識を身につけたスタッフがレコードの価値を見極め、次の人へ思いとともに受け継ぐ

レコードが持つ価値を見極めて買取をする専門家

川松信一

川松信一 かわまつしんいち

#chapter1

ジャズ、ロックなど多様なジャンルのレコード・CDを年間100万枚以上買取

 「当社は音楽と音の専門店として90年代にレコードの海外買い付けを始め、2013年から国内での買取をスタートしました」と話すのは、世田谷区でレコードとCDの買取に特化した「セタガヤレコードセンター」で責任者として査定チームを統括する川松信一さん。クラッシックやジャズ、ロック、歌謡曲など多岐にわたるジャンルを扱っています。

 「当方にはレコード・ジャンルに関する見識を備えたスタッフが数多く在籍しています。査定の際は、お客さまが大事にされてきたお品物ですから、一枚一枚丁寧に査定し、適正な価格をご案内いたします」

 川松さん自身、盤の状態を確認する検盤などの品質チェックや査定に20年以上も携わり、識眼を磨いてきました。「レコードは単なる音楽メディアではなく、コレクションや骨董品としての価値も持ち合わせています。例えば同じ作品であっても、最初に製作されたオリジナル盤と再発行されたリイシュー盤では価値が大きく異なります。ラベルの表記やプレス時期、刻印やジャケットの仕様など、細かいポイントを精査して違いを判断し、正当に評価する知見に当社の強みがあります」

 持ち込みや郵送のほか、出張サービスも用意。個人、法人を問わず要請があれば北海道から沖縄まで足を運び、過去には中型トラック1台分に及ぶ大量枚数を託され、取引額が数百万円を超えたケースもあるそうです。

 「約30人のスタッフが、レコード・CDを合わせて年間で100万枚ほどを買取させていただいています。お預かりしたお品物は、国内外へ販売し、次の愛好家へとつないでいます」

#chapter2

ダンスから音楽の世界へ。コンディションや希少性を見極める経験値を蓄積

 1985年に茨城県高萩市に生まれた川松さん。高校時代に始めたストリートダンスが、現職に就くきっかけになったと言います。

 「数々のサウンドに合わせてパフォーマンスをする中で、1970年代のソウルやファンク、ブラックミュージックに興味を持つようになりました。力強いリズムやグルーヴ、情感豊かなボーカルなど、時代を超えて受け継がれる音楽のとりこになったのです」

 高校卒業後に上京し、夜間の大学に通いながら昼間はアルバイトをして過ごしていた20歳の頃。「CARASCO」の社長を務める葛原繁喜さんと出会い、レコードの買取・販売の仕事を始めることになります。

 「幅広い年代かつ多様なジャンル、アーティストの作品に触れ、探求心が刺激されました。地元の茨城にはレコードショップがほとんどなかったので、専門店への憧れもありました」

 川松さんは大学卒業と同時に同社の正社員に。コンディションや希少性を見極める経験値を積んできました。

 「非売品で世に出回っていないサンプル盤もありますし、1枚のアルバムに1000以上ものバージョンがリリースされている場合もあります。それぞれが持つ背景や物語について学ぶのは大変ではありますが、奥が深く、やりがいの方が大きいですね」

 日々の業務を通じて知識を深めていくうちに、以前にも増してレコードが好きになったとか。「お客さまの中には、私よりずっと年上の方もいらっしゃいます。お話しする中で、当時のリアルな音楽事情を聞けるのも楽しいですね」

#chapter3

専門家集団としてポジションを確立し、針を落として音楽を聴く文化を未来へ

 現在、川松さんが力を入れているのは人材の育成です。レコードを鑑定するスキルは一朝一夕で身につくものではなく、顧客のニーズに応え、会社を成長させていくためにも、新規スタッフに培ったノウハウを共有する仕組みを作りたいと考えています。

 「会社として目指すべきは、専門家集団として確固たるポジションの確立です。知識量や情報量には自信を持っていますが、特別な資格があるわけではありません。貴重な品物をお任せいただくには、スタッフが実力を養い、スペシャリストになることが重要です。実績を積み重ねて信頼を築き、『レコードを売るならここだ』と言われるような存在になることが目標です」

 買取をする際、時に値段が付かないものもありますが、川松さんをはじめとするスタッフは顧客の心情にも細やかに配慮。海外相場も含めて市場の状況を説明し、納得を得た上で引き受けています。販売が難しい場合も処分するのではなく、できる限り活用する方法を検討しています。

 「青春時代をともに過ごした楽曲、コツコツと収集した希少盤、亡くなったご家族の形見など、レコードにはお客さまの思い出が詰まっているものも少なくありません。手放されるにあたり、皆さまの思いをくみ取り、大切にしてくれる人へ橋渡しすることが私たちの役目だと心得ています」

 レコードに込められたストーリーにも目を向けて新たな持ち主へと届け、針を落として音楽を聴く文化を未来へつないでいきたいとビジョンを語ります。

(取材年月:2025年3月)

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専門家プロフィール

川松信一

レコードが持つ価値を見極めて買取をする専門家

川松信一プロ

レコード鑑定士

セタガヤレコードセンター

音楽メディアとしてだけでなく、コレクション・骨董品としての価値も持つレコードを、豊富な知識と経験で一枚一枚丁寧に査定し、本来の価値を見極め、買取を行う。

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