不登校支援など子どもの心のケアを専門とするカウンセラー
小林正幸
Mybestpro Interview
不登校支援など子どもの心のケアを専門とするカウンセラー
小林正幸
#chapter1
学校や日々の生活で不安を感じている子どもの心のケアを行う「カウンセリング研修センター学舎ブレイブ」。運営する元気プログラム作成委員会の理事長、小林正幸さんは、本人や家族に向けたカウンセリング、不登校児童生徒のための適応支援や学習支援などを展開しています。
「心に不調があると、やるべきことは分かっているのに、行動できない状態になります。〝学校に行きたいのに行けない〟〝テスト前のゲームはダメと分かっていてもやめられない〟など。こうした不安や不快な気持ちに蓋をせず、まずは感じきり、受け入れることが大切です。心が健康になれば、学校に戻りたいという意欲が芽生える子どもは多いものです」と小林さん。
支援の第一歩は、子どもに何が起きているかをきちんと見て、「感情を受容し、要求を受け止めること」。本人が嫌がっていれば、「嫌なんだね」と気持ちをそのまま言葉にし、「どうしてほしいのか」「どうしたいか」を丁寧に確認します。
「〝見守る〟とは、何もしないことではありません。応えられない願いには、『ダメ』と伝えていいんです。その際は理由や代替案を示し、本人に選んでもらいます。いずれの案も難しい場合は、それで今はよしとします。余裕をもって後日に案を考えればよいのです」
子どもの心のケアを専門に、38年間で2万を超える事例に対応してきた小林さん。いじめなどのトラウマケアでも実績があり、自殺未遂など深刻なケースにも関わってきました。
適応支援では、週5日、勉強や遊びなど、本人が好きなことをして過ごせる環境を用意しています。
「小学生から中高生までが同じ部屋で過ごします。例えばゲームでもお互いのリアルな声を共有し、周りを意識する機会を設けます」
#chapter2
小林さんは、教育関係者などに向けた「カウンセリング心理士養成講座」も行っています。日本カウンセリング学会認定のカリキュラムで、オンデマンド講義や、対面でのグループ体験などのプログラムを提供。カウンセリングの基礎が身に付きます。
「心理カウンセラーの資格の中で、大学院修了が必須要件でない点もポイントです。教員や企業の人事担当のほか、保護者が受講し、子どもとの関わりがいい方向に変わった例もあります」
受講生には、資格取得後、「教育メタバース」での活動も提案します。教育メタバースとは、仮想空間に設けられた不登校児童生徒のための適応支援や相談の場。小林さんは、小金井市をはじめ複数の自治体の教育メタバースで支援を行っています。「これから教育メタバースに携わる人材を育てたい」と意欲を語ります。
小林さんは、東京都港区の心理職からキャリアを始め、長年、教育相談に従事。東京学芸大学の教授を経て、現在名誉教授を務め、不登校支援の研究に力を注いできました。2000年頃には不登校の子どものためのホームページを開設し、「あつまれ不登校の広場」と題したメール相談を実施。学校現場と連携した実践研究では、教員に支援策を伝え、不登校生徒数を半減させた実績も。
また、東日本大震災の際には、被災した小中学生の心のケアを目的に野外キャンプを行い、2011年から6年間でのべ800人が参加しました。キャンプ後にストレス反応が軽減するなどの手応えから、ノウハウを広めるために「学舎ブレイブ」を立ち上げました。
#chapter3
小林さんのもとでサポートを受け、学校に行けるようになるなど、課題を解消できた子どもは多くいます。長年ひきこもりだった高校生は、ある日突然変化が見られたそうです。自室にひきこもっていた間も、親だけがカウンセリングに通い続けたことで、子どもから「お母さん、ちょっと」と声をかけられた際に、適切に対応できたといいます。小林さんは、「家庭では親、学校では先生の関わり方が問題解消に大きく影響すると知ってほしい」と話します。
また、読み書きに困難を抱える「ディスクレシア」と診断された中学生が、療育の学習支援で変わった例も。
「テストで0点続きだったところ、文字の書き方やテストのやり方を教えることで成績が上がり、今は大学で国文学を学んでいます。大学生になりボランティアで来てくれたときに、本人は『そんな時代もありましたね』と笑っていました」
子どもが学校に行きたくないと言い出したら、保護者は「早く何とかしなければ」と気が気でなくなるでしょう。小林さんは、「変わるときは、子どもは劇的に変わる」と経験を語ります。
「〝学校に行けた〟〝朝早く起きられた〟といった行動だけを見るのではなく、〝浮かない顔をしていないか〟など表情に敏感になりましょう。丁寧に心地よい体験を積み上げていけば、心は安定し、健康を保てるようになります。あせることはありません。まずは、子どもが安心していられる居場所を一緒につくりましょう」
(取材年月:2025年4月)
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Profile
不登校支援など子どもの心のケアを専門とするカウンセラー
小林正幸プロ
公認心理師・臨床心理士
NPO法人元気プログラム作成委員会カウンセリング研修センター学舎ブレイブ
子どもの心のケアを専門に、本人のカウンセリングや適応支援、保護者や教員など、子どもに関わる支援者へのコンサルテーションを行っています。「カウンセリング心理士養成講座」など人材教育にも力を入れています。
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