ホウ酸による防腐防蟻処理で木造住宅の長寿命化を目指す専門家
浅葉健介
Mybestpro Interview
ホウ酸による防腐防蟻処理で木造住宅の長寿命化を目指す専門家
浅葉健介
#chapter1
「日本の木造住宅の建て替え年数はおよそ30年と短く、住まいの耐久性を脅かすのは木材を腐らせる木材腐朽菌と、木材を食い荒らすシロアリです。弊社は木造住宅の長寿命化を目指し、ホウ酸による防腐防蟻処理に取り組んでいます」
そう語るのは、「日本ボレイト」代表取締役社長の浅葉健介さん。土壌や岩石、海水などに含まれる自然素材のホウ酸を用いた防腐防蟻処理「ボロンdeガード®」を開発し、施工代理店を通じて全国に展開。より良い暮らしや持続可能な社会づくりの姿勢が評価され、2018年にグッドデザイン賞、2019年にエコプロアワードの奨励賞などを受けています。
「木造住宅の寿命が短い理由の一つに、合成殺虫剤を使用した防腐防蟻処理が考えられます。効果は5年程度とされているので、定期的に再処理する必要があります。しかし、壁の中の柱など、住宅が完成したら手を施しにくい箇所は特に要注意で、劣化が進む原因となります」
ホウ酸処理とは、除菌、防虫、防カビ、防臭、防炎作用があるホウ酸水溶液を木部に処理する工事です。分解・揮発することがない無機鉱物由来のためいつまでもその場に残り、水などで流されない限り永続的に役目を果たすと言います。
「密封された高気密・高断熱の住宅においては、薬剤が気化して健康に影響を及ぼすことを懸念する方もいます。ホウ酸は室内の空気を汚さないので、アレルギーやシックハウス症候群、化学物質過敏症の方にもご利用いただけます」
浅葉さんは、適切な知識や技術を伝える目的で「一般社団法人日本ホウ酸処理協会(JBTA)」を設立。施工会員として実技や関連法規などを身に付けた、認定施工店による責任施工を勧めています。
#chapter2
2005年、アメリカ大使館でホウ酸処理に関するセミナーが開催。米国にホウ酸塩鉱物の鉱脈があり、日本に市場を開拓したい狙いがありました。
「木造住宅が多い日本で、当時のシロアリ対策は合成殺虫剤の一辺倒。参加して『これだ!』とひらめきました」と浅葉さん。
高性能化する日本の住宅で、ホウ酸処理に切り替えることに商機を見いだし、健康面を心配する人のためになる仕事だというやりがいも感じ、2011年に日本ボレイト株式会社を立ち上げました。
「セミナーで通訳をしていたのが、現在、弊社の取締役会長を務める荒川民雄です。詳しく話を聞きたかったので、荒川の元に行き面談を申し込み、弟子入りしました」
オーストラリアでは1930年代、アメリカでは1980年代からホウ酸処理が採用されていますが、日本でホウ酸系薬剤が認定されたのは2011年。長期優良住宅に適合したのは翌2012年です。
「認定されればホウ酸処理が広がると思っていましたが、そう甘くはありませんでした。シロアリ防除業界は数年ごとの再施工で収益を上げるビジネスモデル。効能が継続するホウ酸は敬遠され、全く使ってもらえない時期が続きました」
有用な工法であり「必ず日の目を見る時が来る」という強い信念で、地道に営業活動を重ねます。
「工務店やハウスメーカーなど、これ以上は動けないというほど訪問して説明しました。5年目くらいでしょうか。有名な工務店で扱ってくれるようになり、少しずつ認知されるようになってきました」
#chapter3
まるで、ホウ酸処理はLED、合成殺虫剤処理は白熱電球のようです。ホウ酸処理は、合成殺虫剤処理に比べて初期コストは高いのですが、5年ごとの再処理が必要ないため、5年でコストが逆転します。
「国内で建てられている木造住宅に使われている薬剤は90%以上が合成殺虫剤です。施主の方、住まわれている方が殺虫剤を選んだのであればいいのですが、ホウ酸処理を知らないがゆえに選択肢がない状態を何とかしたい。まずは多くの方に知っていただきたいんです」
経営理念は「わが国に正しいホウ酸処理を広めることによって、国民の健康と財産を守り、環境に貢献します」と明確です。事業にまい進する上で支えとなっているのは、家族の存在です。
「訳あって息子と二人暮らしが長いのですが、その息子の頑張りがいつも背中を押してくれました。日本の住宅を100年は耐えられるようにしたいという目標を達成するために、謙虚で誠実にやり抜くパワーをもらっています」
近年、アメリカカンザイシロアリという外来種による被害が問題となっていますが、ホウ酸処理は有効な予防・駆除方法となっています。
「シロアリは住まいをむしばむウイルスのようなもの。シロアリという病気になってしまったら、シロアリ防除業者というお医者さんに病巣を取り除いてもらうことで治ります。しかし、アメリカカンザイシロアリという病気を治せるシロアリ防除業者は、ほとんど存在しません。皆さまが大切なマイホームで健やかに過ごせるよう、私どものノウハウをご活用ください」
(取材年月:2024年9月)
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Profile
ホウ酸による防腐防蟻処理で木造住宅の長寿命化を目指す専門家
浅葉健介プロ
ホウ酸による防腐防蟻処理
日本ボレイト株式会社
木造住宅の劣化対策に自然素材(ホウ酸塩鉱物)を用いた「ボロンdeガード®」を提供。揮発性のないホウ酸で化学物質過敏症の方にも配慮。「日本の木造住宅を100年はもたせたい」と普及に尽力する。
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