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「製品の安全・安心を証明することで日本企業は世界で戦える」

スマート社会での品質管理とR&D手法による製品開発の専門家

渡辺吉明

渡辺吉明 わたなべよしあき
渡辺吉明 わたなべよしあき

#chapter1

50年ぶりの世界の流通小売の自動認識用QRコード改訂を利用する!

 QRコードはバーコードよりも表示面積が小さく大量の情報を収められることから、食品、雑貨などでの市場の安全確保と流通情報グローバル標準(GS1)の2次元コードの普及が一気に進んでいます。渡辺吉明さんが代表を務める「APL-Japan」では製品事故未然防止と輸出などに必要になる新たな社会での品質管理を実現する安全点検アプリの普及を進めています。

 「コロナ禍でネットショッピングが浸透し、翌日配送も普通になりました。一方で不具合や事故が生じると、企業側は人手不足もあり対処が遅れがちです。トラブルを未然に防ぐため、当方が開発したのが『scodt(すこどっと)』です」と渡辺さん。

 その誕生の背景には諸外国とのルール統合もあるとか。国内では海外と異なりPL(製造物責任)法により、製品の欠陥で損害が出ると原則的に製造業者が責任を負いますが、今後は流通業者もその責任を負う法改正が進んでいます。

 「いつ、どこで、誰が採った・作ったのかを24時間対応で明確にし、購入後や廃棄後も追跡可能にしなければなりません。日本の輸出業者も含めて製造、加工、包装、保管に携わる全ての事業者に適用されます。商品ラベルなどに2次元コードを利用し、個人情報を利用しないで世界での製品の追跡を行い、マーケティングや寿命やリコールの通知から再購入を自社のECに誘導するのが『scodt(すこどっと)』です」

 今後はAIを取扱説明書ガイドラインで学習させ、正確な多言語による情報提供、万が一の際には回収や処分についてより詳細で音声や動画でのアナウンスなどを予定しているとのこと。生産者側にも利用してもらい万一の際の原因究明と再発防止を行えます。

#chapter2

アメリカや香港でR&Dの本質に触れ、日本でPL法に出合う

 渡辺さんは工業デザイナーになるべく米国ミシガンの工具機械メーカーに22歳で就職。そこで本格的にR&D(研究開発)を学び「企業の枠を超えた研究を行うには外部の専門家として活躍するように」と指導を受け、現在に至っています。

 「現地では『デザイナーとして何に取り組むのか』を追求しました。うわべだけの性能向上は、リスクやデメリットの増長にもつながるというR&Dの本質に触れました」

 その後は香港に渡り、メーカーやバイヤーの間に入って製品の仕様や設計を調整する業務に従事。1980年からは国内の米国系大手コンピュータ会社の中で地上用太陽電池の開発に携わるように。1990年代になると輸入製品や資材の相談が増え、当時急速に成長していた通信販売業界の広告のコンプライアンストラブル対応について指導を行なっていました。

 「1994年に商社から相談されたのがPL法との出合いですね。世代交代が進み海外生産が増え販売後にトラブルが増えましたが専門の弁護士が見つからず、製品の欠陥を指摘され賠償請求されるメーカー経営者とその顧問弁護士の相談相手になりました」

 活動の中で、日本のPL法には販売者の責任が抜け、海外と様相が異なっていることに課題を感じ2015年に法律家などとともにPL研究学会を設立。これまで研究されていない「製品リコール」の部会を設置、理事会で指名を受け副会長と部会長を務めています。2018年には、製品事故未然防止支援を行うためPL対策推進協議会(現:APL-Japan)を設立しました。

 「『商品知識を持つプロから買い物をする』という古き良き習慣が崩壊しました。専門外の品を展開しているのに、販売業者が責任を問われない状況に危機感を覚え、PLP(未然防止)とPLD(事故発生後対策)の両面から体制の整備を目指すようになりました」

#chapter3

資産家が若い企業を育て、日本を再浮上させることに期待

 オンラインで会議をするなど業務効率化が進むものの、渡辺さんがコンサルティングを引き受けられるのは年に数社が限界とか。クライアントには大手通信販売会社や電動工具の老舗も含まれ、商材の品質管理の視点から経営改善を支援しています。

 「いくら奮闘したところで私の身は一つなので分身の『scodt』に頑張ってほしいですね。日本企業が世界で戦うには、DX(デジタルトランスフォーメーション)による製品のトレーサビリティが必須です。原材料の確保から廃棄に至るまでの安全・安心を多言語で証明できれば勝算は高まるでしょう」

 渡辺さんが経済の“起爆剤”として期待するのが「Society5.0の実験場」とした2025年の大阪万博です。来日する人々と深いレベルでアイデアを交換するためにも、若者を中心に今すぐ意識改革を始めてほしいと語ります。
 「大切なのは民間主導で取り組み、国がバックアップする姿勢です。また、資産家の方々には私たちのような一般社団法人にも注目してほしいですね」

 さらに、スタートアップへの投資も期待を高めます。
 「“もうかる相手”にのみお金を渡すのではなく、ぜひ経営者の夢に耳を傾けてほしいです」

(取材年月:2024年2月)

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Profile

専門家プロフィール

渡辺吉明

スマート社会での品質管理とR&D手法による製品開発の専門家

渡辺吉明プロ

PL対策

一般社団法人APL-Japan

特に製品の不具合発生時に備えた製品のB2B2Cトレーサビリティを実現し特許を取得。製品安全の世界共通のPL法理の研究学会やその結果を社会実装するための団体を設立、法律家や国に助言している。

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