木を愛し、木材と自然素材に強いこだわりを持つ大工前田信夫

木を愛し、木材と自然素材に強いこだわりを持つ大工

前田信夫

疲労回復やリラックス効果が謳われている木の香りや感触・心地良さが実感できるモデルハウス

　「職人がつくる心地よい空間」を売りとする大工・前田信夫さんが代表を務める有限会社前田工務店は大田原市の閑静な住宅街にあります。
　甲子園での優勝経験を持つ息子さんのメモリアルグッズが入り口に飾られたモデルルームを兼ねた事務所は、森林浴でもできそうな雰囲気のある木の空間が演出されています。杉材を使った棚とカウンター、手作りの装飾をつけた木製のブラインド、手作りの欅のテーブルと藁入り珪藻土の塗り壁、杉の羽目板で格天井風にアレンジした天井と梁、檜の床板。むくり屋根の曲線美が特徴的な京風スタイルの平屋住宅になっており、自然素材の博物館といった感じで、これだけでも一見の価値有りといったところ。木の魅力を最大限に引き出した佇まいは要所に現代風なアレンジがなされており、和風だけれど古風ではない、まさに和モダンそのもの。絶妙な風合いを醸し出す木造住宅を彩る木材たち、そのひとつひとつの特性を丁寧に説明してくれる前田さんからは、職人気質の高い大工さんのイメージとは真逆の穏やかで優しい雰囲気が感じられます。

　「原木から加工することもある」というくらい前田さんの木に対するこだわりは人一倍強く「ヒマさえあれば木をいじっている」というだけあって、手作りの神棚や家具、インテリアなどに囲まれた室内からは木を愛し、木を極め、木と共存するという前田さんの職人気質が伝わってきます。

建築の簡素化が進み、新建材が当たり前になった時代だからこそ、木の温もりや無垢材の良さを改めて実感

　18歳で大工だった父親に弟子入りした前田さん。
「子供の頃から父親の仕事を手伝っていたこともあったし、やんわりとプレッシャーをかけられたこともあって（笑）、中学くらいから自分は大工になると決めてました」
　前田さんが大工になった頃の家づくりは、図面起こしから木材に目印をつける「墨付け」、その目印に合わせて木材を加工する「刻み」など、建て方すべてが手作業でした。時代の流れと共に建築は簡素化が進み、コストパフォーマンスを重視した新建材を使っての建築が当たり前になればなるほど、前田さんの大工としての理念は昔ながらの木材や自然素材を使った建築を追い求めます。
　木材をあらかじめ工場でカットして建築現場に持ち込む「プレカット工法」が主流となっている現在では珍しい、特殊材（大黒柱、差し鴨居、丸太材梁など）の墨付けや刻みを、時間とコストが許す限り丁寧に手掛けるのも前田流。

　「日本の気候に木造住宅が適しているというのは言うまでもないことですが、自然素材なら更に効果的です。湿度調整の働きをする無垢材に囲まれた家は、夏には自然の風が室内を通り抜け、冬には温めた空気を逃さないという風に身体に居心地の良さを感じることができますし、珪藻土や漆喰でできた塗り壁は部屋の湿度を調節してくれるうえ、保温や脱臭効果もあり、さらに耐火性にも優れています」

　老朽化を招く原因となる湿気を防ぐために家には換気が重要だと言われていますが、通気性の良い自然素材を使うことは家の寿命を延ばすことになり、長く住めば住むほどその恩恵を感じることができます。
「見た目や風合いも美しく、そこに大工ならではの『ひと手間』をくわえることで個性やこだわりなどを反映させることができます」

新型コロナの影響によるステイホーム期間も木材加工。木を触らずに居られない根っからの大工職人

　新型コロナの感染拡大防止のための自粛期間ということで、1ヶ月余り仕事ができなかったという前田さん。昔ながらの大工職人として精力的に仕事をこなしていた前田さんにとって「ステイホーム」はさぞやるせないものだろうと思いきや「意外に充実してました」とのこと。「作業場で木を加工したり、庭に天然竹の筧を作ったりして趣味の時間を楽しんでいた感じです。木を眺めていると色々なイメージが湧くんです」。前田さんが提唱する「ひと手間」とは丁寧でオリジナリティのある仕上げのことですが、そのイメージトレーニングは常に木と向き合う日々の生活の中で培われているようです。
「中断したり、先送りになっていた工事を早く再開させたい」と鼻息を荒くする前田さん。現場に出て大好きな木と格闘するのが楽しみで仕方ないようです。

　新築物件が住宅メーカーやビルダー系の工務店をメインに展開されることもあり、近年はリフォーム系の施工がメインになっている前田工務店ですが、新築・増改築・リフォーム、あらゆる相談を受け付けています。
「もちろん見積もりは無料ですが、相談だけでもOKです。家に関する悩みや要望、知りたいこと、知っておいた方が良いことなど、どんなことでもかまいません」
冒頭で触れた息子さんを始め、二男一女の優しいパパであり、仕事を手伝ってくれている奥様とは円満そのものだというマイホームパパの前田さんなら、どのご家族にとっても居心地の良い家づくりを提案してくれることでしょう。

（取材日：2020年5月）

本物志向の素材選びと加工まで大工ならではのひと手間を加え、和モダンを基調とした家づくり

疲労回復やリラックス効果が謳われている木の香りや感触・心地良さが実感できるモデルハウス

建築の簡素化が進み、新建材が当たり前になった時代だからこそ、木の温もりや無垢材の良さを改めて実感

新型コロナの影響によるステイホーム期間も木材加工。木を触らずに居られない根っからの大工職人

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