素材を生かした木の家から数寄屋建築まで、エコデザインのプロ
若山誠治
Mybestpro Interview
素材を生かした木の家から数寄屋建築まで、エコデザインのプロ
若山誠治
#chapter1
由比の海を望む高台にある「若山建築事務所」。一級建築士の若山誠治さんが代表を務めるこの建築事務所では、日本の風土や気候にあった「木の家」を今の暮らしの中に生かしていく「家づくり」を提案しています。
「縄文時代から日本人が築きあげてきた家づくりの工夫や建築方法を、今の時代にどう伝え、守っていくか。それを追求するのが、私たち家づくりに携わる人間の永遠の使命だと思っています」と強い言葉で家づくりへの思いを語ります。
若山さんがおもに手がけるのはいわゆる「日本の家」。人工的なものを極力使わず、この自然環境の中でいかに快適に暮らすことができるのか、それを追求してきた知恵の集積が日本家屋にはあると、若山さんは考えています。それはそのままエコロジーな生活に直結している、とも言います。
「こちらを見てください」と通されたのは、事務所に隣接する若山さんの自宅。16年前に建てられた家は、四季折々の変化に応じて快適に暮らせる、昔ながらの知恵が取り入れられています。「軒が深いのは、夏の高い日差しを遮り、冬の低い日差しが部屋に入るように。そしてふすまなどを利用して広くにも狭くにもフレキシブルに空間を作れる。天然木や漆喰を使うのも、日本人が生活習慣の中で編み出した『日本の家』ならでは。これは文化そのものでもあるのです」
#chapter2
建築設計事務所に勤め、様々な建築の設計に携わってきた若山さん。「この国で建築をするなら、木造建築を知らなければ」との思いから、やがて数寄屋建築や社寺、伝統的な木造住宅の現場でのものづくりに没頭するようになります。
しかし長い歴史と文化の中に育まれたそれらの建築物のよさを再認識する一方で、そうした伝統が一般住宅にあまり用いられなくなっていることに、若山さんは危機感を覚えたといいます。「高価な良材を使って粋を極めるのも大切ですが、それでは若い人たちに実用的な住まいとして受け入れられない。このままでは一部の人たちの高価な趣味としてとらえられ、木造住宅の文化は小さくなっていってしまうのではないか……そう思ったのです」
そして「若い人たちにも日本の木の家のよさを知ってほしい」と「漆喰の家」シリーズを提案します。「天然の材木は高価というイメージがありますが、例えば、同じ材木でも節のある部分を使えばかなりコストダウンできます。いい素材をうまく利用することで、手の届く価格で若い人向けの住宅をつくることを可能にしたのです」と若山さん。それは、自然の素材を適材適所に生かすことで、住まいの知恵、ひいては文化を次代へと伝える意味合いをもっているのです。
#chapter3
高度経済成長以降、衣、食のみならず、住の世界でもケミカルな素材が多く使われてきました。結果として、長持ちせず取り壊される家、シックハウス症候群などが社会問題にもなっています。
若山さんは「せめて住宅ぐらいは木や土、和紙、石などの素材を用いてほしい」と考えています。
「家で健康に過ごせるのは当たり前、本来はシックハウスなどありえない話です。家で子育てする以上、親が子供にしてあげられる唯一のことは住まいの環境作り。季節の行事を暮らしの中に取り入れる、それが一年を通じて自然に生活に組み込まれる――それこそが、家に住むことで文化を伝えていくことだと思うのです。環境に適した、エネルギーを極力使わずに快適に暮らすことを追求したエコロジーデザインのヒントも、伝統的日本家屋の姿かたちにはあると考えています。機能をともなったデザインは美しい。数寄屋建築に機能美を見ることができます」
一連の「雨中有楽」の家づくりとして、簡素でありながら質感のいい、素材のよさを感じられる家、2代、3代と受け継いでいけるエコロジーでロングライフな住まいづくりに取り組んでいます。
「庭に面した広縁で子供たちが遊んだり、土間で近所の人と話が弾んだり……そういった、昔は当たり前にあった光景が生まれる日本家屋のよさを、今の若い人たちにも知っていただきたいですね。伝統を踏襲しながらも、今の時代にあったデザインの木の住宅、天然の素材で作られ、時間とともに風合いが増していく家、そしてそんな家づくりに共感してくださる方が増えることで、日本の街並みももっとすばらしいものになっていくはずです」
(取材年月:2011年9月)
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Profile
素材を生かした木の家から数寄屋建築まで、エコデザインのプロ
若山誠治プロ
一級建築士
株式会社若山建築事務所 一級建築事務所 雨楽
日本建築を志して、お茶、お花、陶芸、能、あげくに小唄まで、ずっと修行の日々です。数寄屋建築の美しさは日本の気候風土の求めた理にかなった美しさです。数寄屋建築に暮らしてみませんか?
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