心をほぐして体を整える漢方薬のプロ赤堀智子

心をほぐして体を整える漢方薬のプロ

赤堀智子

体の違和感に気付けることが、改善への第一歩。

　藤枝市の旧東海道沿いにある「赤堀薬局」。明治28年創業の老舗で、赤堀智子さんはその4代目として、日々訪れる人の相談に乗っています。
訪れるのは、何年も通うなじみの人から、インターネットで探して初めて足を運ぶ人などさまざま。男女問わず、年齢も悩みも幅広く、「どんな方のどんな症状にも対応します」と赤堀さん。
「最近は、男性のうつや、女性の場合は不妊のお悩みや更年期の不調を訴える方も少なくありません。女性は月経がありますし、妊娠や授乳などを経験しますから、いわば『血液を傷つける人生』。男性以上に、血を大切にしてほしいんです」
　体質を見極め、漢方薬を飲んでもらうことが、薬剤師としての赤堀さんの仕事ですが、それよりも「自分の体の芯がまっすぐになっているか、不調がない体がどういうものかを知ってもらうことが肝心」と話します。
「日々の生活習慣や食事、ストレスなどによって不調が続いている場合、健康で当たり前と思いこんでいる人が多いんです。漢方薬をご案内することも大切ではありますが、体のちょっとした違和感や、例えば、秋に咳が出始めたのは体が乾燥しているからだ、といった体からのサインに気付いたり、女性であれば生理の周期による体調のゆらぎを覚えていただくことが、もっとも大切。そういった昔からの知恵や感覚を、知っていただけるとうれしいですね」

話を聞くことで、心を解きほぐす。食生活のアドバイスも

　代々続く薬局の家に生まれ、自然と薬剤師の道を目指した赤堀さん。ただ、大学に進学する前には、東洋の哲学に興味を持っていたのだそう。
「医学や薬学だけが独立しているのではなく、陰陽・五行という考えをベースに、哲学や医学、人生などさまざまなことが一つに集約される。どこから入っても同じところに行きつく、そういうのがとても面白いなと感じていました。それに、父も漢方に関心を持っていたので、その影響もあったのかもしれませんね」
卒業後は漢方薬を多く扱う薬局で働いて経験を積み、実家の薬局にも漢方薬を多く並べるようになりました。
悩みに訪れる人には、じっくりと話を聞くことから始めます。どこが痛いのか、顔色や舌の状態を診たりする上で、生活習慣、仕事のこと、睡眠のことなど、時には1時間近くかけて耳を傾けることも。不調の原因がどこにあるのか――ライフスタイルなのか、気持ちなのか、体質なのか、といったところを少しずつ解きほぐしていくことで、本人も思いもかけない原因が浮かび上がることもあります。
「例えば、不妊でお悩みの場合には、漢方的には食生活と睡眠がとても大切なのです。でも仕事で夜遅くまで残業していたり、そのために食事の内容が十分でなかったり、といった場合もあります。そんな体の状態で薬だけお出ししても、思ったような結果が表れないもの。まずは、食生活を整えましょう、と話の半分ぐらいは食事のアドバイスということもあるくらいです」
　薬に頼るのではなく体の内なる声を聞いて整えること。その大切さを、赤堀さんは教えてくれます。

まちのかかりつけ薬局に。まちゼミで漢方講座も開催。

　女性の薬剤師ということで、女性から相談を受けることも多い赤堀さん。女性が元気になることは、家族みんなが元気になることにつながるといいます。
「女性は仕事や家事や育児で忙しくて、お腹にギュッと力が入ってしまっている人が多いんです。がんばりすぎてお腹が緊張しているので、ユルッとゆるめてあげる。そうすることで、女性のごきげんがよくなるし、そうすれば家族も喜んでくれるんですよ。そういうお話もさせていただいています」
　薬剤師として、赤堀さんがもっとも心を打たれる瞬間は、患者さんと話をしている時間の中にありました。
「深く話をしていくうちに、人によっては家族にも打ち明けられなかった悩みをようやく吐き出して、笑顔を見せたり涙をこぼされたり。少しずつ心がほぐれていく、楽になっていく。その瞬間に出会えたとき、本当にうれしいですね。そういう出会いが、私の心の栄養源だと思っています」
これからは「迷える人のかかりつけ薬局」として、気軽に相談に来てほしいと赤堀さん。
「藤枝市で半年に一度開催している街のゼミナール、通称『まちゼミ』でも、漢方薬の話をさせていただいています。初めてで入りにくい方は、こういう機会にいらしていただければ。また、ゆっくりお話をという方は、予約の上ご来店くださいね」

（取材年月：2015年12月）

漢方薬の観点で、体を健やかにゆるやかに整えるアドバイス。

体の違和感に気付けることが、改善への第一歩。

話を聞くことで、心を解きほぐす。食生活のアドバイスも

まちのかかりつけ薬局に。まちゼミで漢方講座も開催。

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