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誕生前の赤ちゃんが受ける健康診断としてNIPTを提案し、独自のスコアレポートで結果を見える化

妊婦の選択を支える出生前検査に取り組む医師

岡博史

岡博史 おかひろし

#chapter1

妊婦の採血で染色体を調べ、知的、身体的な発達に関する領域をカバー

 「NIPT(出生前遺伝学的検査)は、『命を選別する道具』ではありません。生まれてくる前の赤ちゃんが受ける最初の健康診断、『胎児健診』と考えています」

 そう語るのは、「福美会」の医師・岡博史さん。「おなかの中の子どもは元気だろうか」と案じる人に向けてNIPTという選択肢を提示。わが子の健康状態を把握し、誕生の日を万全に迎える準備につなげています。

 「妊婦さんの腕から採血し、胎児に負担をかけず染色体異常を検出することができます。通常2本1対の染色体が3本あるのがトリソミーで、日本では長らく、身体的特徴や合併症、ダウン症などを伴う13・18・21番トリソミーの3項目が主流とされていました。当方では、知的、身体的な発達に関わる領域を広範囲にわたり調べています」

 岡さんが運営する「ヒロクリニック」では、全23種の染色体に加え、1000種類以上の関連疾患・障がいの可能性を精査。海外の専門機関に依頼すると判定まで約2週間を要するため、東京衛生検査所と協力し、最短2日で結果を通知しています。

 国内における検査実績は約6万8000件にのぼり、膨大なデータから算出した独自の「陽性スコアレポート」も特徴のひとつです。

 「従来のNIPTは、実際には異常がないにも関わらず、陽性と判定される『偽陽性』が課題でした。私どもは陽性と陰性の境となる『カットオフ値』が、どれだけ離れているかを測り、『見える化』しています。陰性だった場合の精度は高く、妊娠生活の安心材料にもなっています。検査プランは直営院と連携クリニックで提供し、LINEによる無料相談も受け付けています」

#chapter2

妊婦に「知る権利」を届けるため、ヨーロッパで一般的なNIPTに着目

 早くから医師を志していた岡さんは、慶應義塾大学の医学部に進学。皮膚科医としてキャリアをスタートし、救急病院で内科にも従事。臨床の現場で実践を積みました。

 「パソコンが台頭し始めたのを受けて、論文のテーマに選んだのがコンピューター解析技術でした。執筆する中で身に付けた画像解析やプログラミングスキルが、遺伝子データを解析する、現在の検査システムの基盤となっています」

 美容外科や形成外科などでも知見を蓄積。培った経験値をもとに、2005年に「ヒロクリニック」を立ち上げます。

 「当初は皮膚科や形成外科がメインでしたが、地域のニーズに応える形で診療科目を拡充。内科や心療内科、婦人科、泌尿器科などを開設しました」

 患者の要望をすくい上げ、総合医療機関へと発展。柔軟に対応する過程で出会ったのがNIPTでした。

 「ヨーロッパではごく一般的な検査で、無償で受けられる国もあります。対し、日本医学会では規制が多く、2022年までは34歳以下の妊婦さんは受検に制限が設けられていました。染色体異常もあえて一部の染色体のみに限定されています。国際的に見ても、日本の妊婦さんの『知る権利』は、十分に配慮されてきたとは言い難い状況でした」

 人体の構成や働きを記した、生命の設計図を読み取る検査に有用性を見いだした岡さんは、必要としている人にサポートが届いていない状況にもどかしさを覚えるように。自ら手を差し伸べるべく、新たな医療サービスを開始しました。

#chapter3

臨床遺伝専門医による説明や羊水検査の案内など、妊婦の選択を伴走支援

 NIPTに対し、倫理的に懸念する声が寄せられることも。岡さんのもとではカウンセリングを通じて、受診を迷う声に耳を傾けます。

 「事前に胎児の疾患を把握することは、生後の生存率にも関係してきます。例えば心臓疾患が見つかった際は、出産後すぐに手術ができる病院へ転院するなど、早期から具体的な対策が取れるケースもあります」

 一方で、重篤な障がいが見つかった場合、多くの人が妊娠継続を諦める現状も熟慮。きょうだい児問題や親が亡くなった後のケアなど、苦しい葛藤があることを痛感してきました。

 結果が陽性だった時は、臨床遺伝専門医による説明や羊水検査の案内など、妊婦の選択を最後まで見守る覚悟で伴走支援しています。

 「中絶にはリミットがあるうえ、後期になるほど母体にかかる負担は大きくなるため、私たちは選択までの猶予を作る検査スピードにこだわりました。どんな結果になったとしても、『納得して選んだ』という実感を持てるように寄り添うことを大切にしています」

 NIPTの正しい知識を普及したいと熱を込める岡さん。迅速に、数多くの疾患を調べられる事実を周知するとともに、あらゆる不安を受け止められるよう検査項目の拡大に力を入れています。

 「診断を受けるのも受けないのも自由ですが、知らなかったことによる後悔が残らないよう、まずは情報に触れてほしいと願っています。私たちはこれからもNIPTの意義を伝え、『知りたい』に応えるべく、技術を高めていきます」

(取材年月:2026年3月)

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専門家プロフィール

岡博史

妊婦の選択を支える出生前検査に取り組む医師

岡博史プロ

医師

医療法人社団福美会

NIPTを通じて幅広い染色体異常の可能性を調べ、臨床遺伝専門医との連携や追加検査の案内にも対応。結果説明にとどまらず、不安や疑問に寄り添いながら妊婦一人一人の選択を支える体制を整えています。

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