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バーチャルオフィス発想のDXで、訪問看護の経営課題を解きほぐす

DXで訪問看護ステーションの経営課題を解決に導く専門家

横山瞳

横山瞳 よこやまひとみ
横山瞳 よこやまひとみ

#chapter1

業務改善ツールで情報を一元化し、管理者の負担を軽くする

 高齢化や在宅医療の広がりを背景に、訪問看護のニーズは高まっています。一方、看護職の採用難に加え、記録・情報共有・物品管理・医療保険/介護保険の請求など、現場を支える事務業務は多岐にわたり、管理者の負担は小さくありません。
 こうした課題に対し、大阪市を拠点に複数の訪問看護ステーションを運営する「テキックス」の横山瞳さんは、「事務所という“場所”に縛られず、必要な情報に安全にアクセスできる仕組みづくり」を提案します。

 「少人数の頃は、あうんの呼吸で仕事が回っていました。しかし拠点が増えるにつれ、スタッフ同士の意思疎通が難しくなります。看護師が利用者宅でケアをしている最中に連絡が入り、集中を妨げられる場面もある。複数拠点を持つ管理者なら、多くの方が抱える悩みではないでしょうか。当社も同様でした」

 経営企画室の責任者として横山さんが取り組んだのが、プログラミングの知識がなくても業務改善アプリを作成できるクラウドサービス「kintone(キントーン)」を活用し、情報を一カ所に集約する仕組みづくりでした。

 「クラウド上に、バーチャルオフィスのように機能する“情報の拠点”を設けることで、スタッフは場所や時間に縛られず必要な情報にアクセスでき、即時に相談できます。拠点ごとに事務機能を分散させる負担を抑え、固定費や人件費の見直しにもつながりました。現場の運営を支える仕組みとして、同じ課題を抱える同業の方々にも提供したいと思い、ツールの提供を始めました」

#chapter2

現事務作業のスマート化と「つながりの設計」で、ケアの質を高める

 「運営上、頭を悩ませるのが請求業務ではないでしょうか。訪問看護は医療保険と介護保険の両方に関わることが多く、レセプトや介護給付費請求のルールを理解した人材を確保するのは簡単ではありません。そこで、入力・集計・確認の流れを標準化し、専門部署が遠隔で支援できる体制を整えました」

 スマートフォンや車両などの物品管理、ファクスやメール、郵送で届く書類の一元管理、急な相談に伴う訪問スケジュールの調整・連絡まで、情報をまとめて扱えるようにしたことで、看護師が事務所に立ち寄る回数を減らし、ケアに集中しやすい環境を目指しました。

 試行錯誤を重ねた末に完成したツールの名称は「いつここオフィス」。情報共有や事務作業の効率化だけでなく、スタッフ同士の心のつながりを育む工夫も盛り込まれています。アプリ内には、日々の業務の中で感じた喜びや反省点、成功体験などを共有する場を設けました。

 「看護師は一人で利用者宅を訪問するため、喜びも悩みも一人で抱え込みがちです。利用者様からの温かい言葉や同僚の配慮を共有する機会も少ない。そうした思いを可視化することで、看護師のやりがいやモチベーションにつながり、結果的に利用者へのサービス向上につながると考えました」

 こうした後方支援体制を整えた結果、遠隔地でも業務を支えられるようになり、同社では三重県の中山間地域での運営が可能に。訪問看護の経験がなくても、地元のために働きたいという熱意を持つ若手看護師の採用にもつながりました。

#chapter3

DX専門家ではない立場だからこそ、業務を俯瞰し課題解決の道筋を描く

 「訪問看護の世界でもITを活用したDXは急務です。事業所ごとの運営スタイルに合わせてカスタマイズしながら、ツールを活用してほしいですね」と横山さん。ITに不慣れな管理者のために、導入後のコンサルティングにも対応しています。

 実は横山さん自身もシステムの構築は得意ではありませんでした。統括管理者の右腕として、経営者が直面する苦悩を間近に見てきた経験から「課題を解くには仕組みが必要だ」と発想を転換。前職で幼児教育の教材開発や、販売戦略を担当してきた経験を武器に取り組みました。

 課題を洗い出し、「事務所という場所に縛られない運営」をゴールに設定。そこに至るまでのプロセスを描き、自社の複数拠点で実行と検証を繰り返しながら改良を重ねてきました。バラバラだった情報や人の動きを一つの線でつなげられたのは、看護師でも事務員でもない立場から業務全体を俯瞰できたからだといいます。

 自社でDX化を進めてきたことから、他社からDXツールを活用した業務効率化について相談を受ける機会も増えています。

 「効率化は目的ではない。情報の手戻りを減らし、心の余白をつくることで、ケアに向き合う時間を増やす。そんな発想で進んできたのが私たちのDXです。同じ悩みをもつ管理者様はたくさんいらっしゃると思います。同じ悩みを経験し、解決してきた立場として、何らかのヒントをお伝えできると思います」

(取材年月:2026年2月)

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横山瞳

DXで訪問看護ステーションの経営課題を解決に導く専門家

横山瞳プロ

業務改善コンサルタント

テキックス株式会社

訪問看護ステーションの現場から生まれた業務改善ツールを提供。情報を一元化して事務作業の効率化やコスト削減を実現します。事業形態に合わせてカスタマイズでき、導入後のコンサルティングまで伴走します。

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