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木のため、そこに暮らす人のため、樹と人の共存を目指すアーボリスト

樹木と人の暮らしを守る特殊伐採のプロ

佐藤雄一

佐藤林業 佐藤雄一さん
福島杉での作業風景

#chapter1

石垣市を拠点に活躍する、沖縄唯一のアーボリスト(特殊伐採師)

第一次産業への若者の就業離れが懸念される中、最近になり少しずつ農業や漁業、林業へ就職・起業する若者の話題を目にするようになりました。沖縄でも林業の分野で今後の活躍が期待される人物が。それが石垣市内で林業を営む伐採師の佐藤雄一さんです。

佐藤さんは2008年に28歳で石垣市内に佐藤林業を設立し、石垣を拠点に県内外で伐採師として活動。令和2年には意欲と能力のある林業経営者として「沖縄県林業認定事業体」に認定されました。 

佐藤さんの強みはツリークライミングを駆使した特殊伐採。海外で「アーボリカルチャー」と称される特殊伐採は高木を根本から倒さずに伐採する技術で、佐藤さんは欧米のアーボリカルチャーに基づく様々なロープワークを駆使し巨木や高木の樹上で伐採や剪定作業を行います。

「アーボリストは日本全体でも少数で、現状沖縄では私が唯一のアーボリストではないかと思います。道具もほぼ欧米の道具を使用しているくらい日本ではまだ馴染みの薄い職業ですが、それだけにこの特殊伐採という技術が自分の強みとなっています。日本には昔から空師という高木伐採のプロがいますがアーボリストの仕事はさらに幅が広く、樹木の知識と高いメンテナンス技術を併せ持つ“樹の専門家”というところです。伐採以外にも樹形を美しく剪定する、暮らしに寄り添うように木を生かす、木を育て木の健康を守る等の仕事もあり、そのため樹芸師や樹護師と訳されることもあります」と、佐藤さん。説明が難しいと言いながらも言葉を手繰り寄せるように丁寧に教えてくれました。

#chapter2

木と、そこに暮らす人のために、樹木と人が共存できるお手伝いがしたい

佐藤さんが林業に携わるようになったのは石垣に移住してからでアパレル業からの転身でした。1980年に福島県で生まれた佐藤さんは高校卒業後に上京しアパレル業に就職。23歳で独立し地元福島で自分の店を開業しました。その後、奥さんのお母さんの出身地である石垣島へ家族で移住。そこで林業と出会いました。

「義母が一人で暮らしていたので近くにいられるようにと家族で移住し、縁合って林業に携わるようになりました。元々毎日同じ業務をこなすことが苦手な性分。対面販売のアパレル業も日々違う刺激があったし、樹木と向き合う林業も同じ毎日はないので、そういう意味で性に合ったのだと思います」

佐藤さんは林業家としてスタートしたある日、仲間と共に森林の一部を抜き伐る間伐を行った際にかかり木を起こしてしまいました。かかり木とは伐採した木が別の木に引っかかり地面に落ちてこない状態で、こうなるといつどこに木が倒れるかの予想が難しく大事故になる恐れもあります。その時の「思うように伐採できなかった」という体験がきっかけとなり、福島で林業を営む同級生の元で伐採師としての修行を重ねました。

「空師は職人の技量による所が大きく、また、上下移動の作業になるので沖縄の広葉樹には不向きということもあり、より安全でより沖縄の樹木に合った伐採技術を習得する必要があると考え修行に励みました。現在も“安全第一に笑顔で楽しく作業する”をモットーに日々技術向上に努めています」

石垣島では御嶽内の樹木を伐採した経験も。周りに建物がありクレーン等の重機も入れない場所で特殊伐採の技が役に立ちました。

「神聖な場所での作業は貴重な体験でした。先祖代々の木も神様の木も放っておくと生活に支障が出ます。木は生き物で寿命もあるので成長に応じて手入れをしてあげないといけない。木の為にもそこに暮らす人の為にも、樹と人が共存できるお手伝いができたらと思います」

本島センダン作業風景

#chapter3

沖縄の林業家として、県産木を用いた首里城再建に尽力したい

佐藤林業の仕事には山林の樹木伐採等の行政からの業務委託を軸に、神社やお寺の高木伐採、個人宅の庭木の伐採等があります。こうした特殊伐採、屋敷伐採、支障木伐採の他にも、家具の材料となる木材の伐り出しや、材木に加工するため枝や梢を落とす枝払い、庭木の環境を保つ為の剪定作業、一般草刈りや山林草刈り、種苗育成もあり、種苗育成では30cmの苗を数十年かけて大木へと育てます。スピード重視の現代社会とは異なる時間軸を生きる、林業とは実に息の長い仕事です。

「自然と対峙しスケールが大きい所が林業の魅力。木のプロとしての知見や技術を生かして沖縄の森を元気にしたい」と、佐藤さん。

そして今年は首里城復元に関する仕事が控えています。県では首里城正殿の復元に県産木を使う計画が進行中で、昨年11月には正殿の天井を支える「小屋丸太梁(こやまるたばり)」に県産のオキナワウラジロガシ使用することが決定、国頭村と石垣市産の木がその候補木となりました。小屋太梁は直径や長さに厳密な規格が求められる為、規格を満たしているかどうかの事前調査を佐藤林業が担当します。林業家となって17年。佐藤さんは実直に確実に、林業家としてそしてアーボリストとして活躍の場を広げています。

(取材年月:2021年1月)

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専門家プロフィール

佐藤雄一

樹木と人の暮らしを守る特殊伐採のプロ

佐藤雄一プロ

特殊伐採師

佐藤林業

アーボリストと称される樹木の知識と高い保守整備技術を備えた樹の専門家であり、通常より厳しい作業条件下で樹木の伐採や剪定を行うアーボリカルチャー(特殊伐採)のプロで、沖縄で唯一のアーボリスト。

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