地域との調和を図り、人と社会を結び付ける建築のプロ
金城豊
Mybestpro Interview
地域との調和を図り、人と社会を結び付ける建築のプロ
金城豊
#chapter1
「人と社会を建物を通して結び付けるのが建築士としての仕事です。建物を造るだけではなく、周辺環境に対しても責任があると考えています」と話すのは、南風原町津嘉山で『門(じょう)一級建築士事務所』営む金城豊さんです。弟の司さんとともに、事務所を運営しています。
ところで、『門(じょう)』や『建築』と聞いてピンと来た方は、かなり沖縄建築に詳しい方でしょう。金城さんのお父様は、那覇市民会館や那覇タワービル、沖縄グランドキャッスルホテル(現・ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城)など、名だたる建築物を設計した金城信吉さんです。
小さい頃から建築面で薫陶を受けてきたと思いきや、金城さんは全く建築に関する興味がなかったと言います。「教育者か料理人になりたいと思っていました。しかし、1985年に父が亡くなり、ちょうど中学3年だったので進路をどうするかということになったのです」
将来の生活も考えつつ、学校の先生から建築関係の学校を勧められ、金城さん自身も「しぶしぶだった」と言う程度のモチベーションで建築科のある高校に進学します。途中何度も辞めようと思ったそうですが、卒業後に進学した東京工業大学工学部付属工業高校専攻科建築科で、人生を変える出会いがありました。
「師匠となる先生との出会いです。その先生は『建築はカタチではなく思想が中心にある』と教えてくれたのです。こんな考え方があるのだと驚き、建築の道に進むことを決めました」
#chapter2
その後しばらくは東京で設計の仕事などをしていましたが、1995年に沖縄へ戻り、フリーとして設計の仕事や専門学校の講師に従事、1999年に一級建築士の資格を取得したことをきっかけに、弟の司さんとともに『門一級建築士事務所』を立ち上げ、独立を果たしました。
個人住宅の設計業務をメインに行っている『門一級建築士事務所』ですが、クライアントの意見を取り入れつつ、建物を通して『人と社会』を結び付けることに力点を置いた設計が、最大の特徴だと言います。これ何を意味しているのでしょうか?
「該当する敷地内だけではなく、周辺にどんな施設があって、どんな人たちがいるか、さらに面している道路の特徴などを的確に把握します。例えば、弊社のオフィスです。前の道は保育園児や中学生がよく通るのですが、あえて窓を大きくすることで『見守り機能』も付加しています。逆に、外から丸見えにならないよう、建物の床の高さなどを調整することで、壁や塀などではない『程よい視線のズレの効果』を生んでいます」
このように、まず場所ごとの特性や歴史などを捉えて周辺との調和を図りつつ、建物や景観を作り上げていくことこそ、建築が果たすべき社会的責任であると強調します。
ここに『建築はカタチではなく思想』という、金城さんが学んできた建築哲学が反映されていますが、さらにプロだからこそ見えてきた建築の課題や、取り組むべきことについて、こんな指摘をしてくれました。
#chapter3
「沖縄は戦争で何もかも無くなり、現在も建築物や自然が減る一方です。そこに何があったか語り継ぐことは非常に重要ですが、浸透していないのが現状です。未来に継承していく大切さを、この仕事を通じて伝えていきたいです。『無くなっていくことへの無関心』は、社会の損失に繋がります。なぜなら、自分の周りの記憶や地域の記憶を未来に繋げいくという『社会性』を失うことになるからです」
そんな金城さんは魅力ある沖縄建築として、1958年竣工の聖クララ教会(与那原町)を挙げます。「建物はもちろんですが、当時技術や人をどうまとめたのか、いわばオペレーションのすごさを感じるのです。合わせて、当時の方々がどういう思いでこの建物を建てたのかも、貴重な歴史の一つだと思います」
同じく建築家である弟の司さんは、中村家住宅(北中城村)を挙げます。「あの空間は風が吹くというより『空気全体が動く』のを感じます。そして、闇と光の調和。一般的には建物内部を明るくしたがりますが、闇から見る光が美しいのです。空間に溶け込んでいく感覚で、むしろ新しさを感じますね」
『社会と人を繋ぐのが建築である』という言葉を何度も繰り返す金城さん。「沖縄で建築が果たせる役割、沖縄建築のあるべき姿など、思想やアイディアを常に思考し続けていくことはもちろん、クライアント様や現場の方々など、色々な方の考えに触れられるのもこの仕事の魅力です。これらを活かし、建築の設計のお手伝いができればと思っています」
(取材年月:2019年12月)
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金城豊プロ
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建てるだけでなく、どのように地域と繋げていくかも建築家の仕事です。場所ごとの特性や歴史など、周辺との調和を図りつつ、建物や景観を作り上げていくことこそ、建築が果たすべき社会的責任だと考えております。
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