リサイクルと情報格差解消に貢献するパソコンのプロ石本美紀

リサイクルと情報格差解消に貢献するパソコンのプロ

石本美紀

バッテリーの消耗状況など、商品の情報を適正に公開して買い手の不安を解消

　「処理のスピードが速い高スペックな中古パソコンを、新品の半値から3分の1程度で提供しています。どう選べば良いのか分からない方もお気軽にご相談ください」

　こう話すのは、石垣市の「4th Lab.（フォースラボ）」代表の石本美紀さん。Windowsを手掛けるマイクロソフト社認定の中古品を中心に、機能をアップグレードして展開しています。

　「半導体やレアメタルの不足が叫ばれている中、不要なパソコンを回収して再生することは資源の有効利用につながり、SDGs（持続可能な開発目標）の実現に直結します。また、安くて性能の良いマシンは、経済的な課題を抱えている人も手に入れやすいのが利点。中古品の普及を通じ、電子ごみの削減と再資源化、ネットやITツールが使えないことで生まれるデジタルデバイド（情報格差）解消につなげたいと考えています」

　見た目では性能が判断できず、中古品の購入をためらう向きもあることから、石本さんは商品の情報を自社サイトで公開。特にバッテリーについては消耗状態を店頭にて開示、購入者の不安解消に努めています。

　「自分が使いたくないパソコンは売らない、というのがモットー。キーボードにテカリが生じたものや、経年劣化で画面上の点がきちんと表示されない『ドット抜け』の商品などは原則取り扱わず、どうしてもという場合に限りお客さまにしっかり説明した上で値引いて販売します」

　ネットワークスペシャリストや情報処理安全確保支援士などの国家資格をはじめ、多様なライセンスを保有。ITインフラ講師の経験も生かし、丁寧で具体的なコミュニケーションを心掛けています。

若年層向けのセールを毎年開催し、学生や社会人など若い世代を応援

　「中古なので期待はしていなかったが、処理速度が速くて驚いた」「初心者にも分かるように教えてくれて助かった」「価格も安く、サポートが心強い」など。
　購入者から感謝の声が寄せられ、八重山諸島のユーザーから支持を得ているほか、石垣島を離れても引き続き頼りにされることもある石本さん。

　近年は若年層への中古パソコンセールにも注力し、年に1度、島外に旅立つ学生や社会人、勉強中の学生がいる家庭などを対象に、特別価格で案内しています。

　「この企画を始めたのは、あるお母さんとのやり取りがきっかけです。島を出るわが子に何とか修理して持たせたいと、パソコンを持参されました。しかしあまりにも古く、手を尽くしたものの直すことはできませんでした。その後、お母さんが来店されることはなく、力になれなかったことがずっと心残りで…。恒例化して若い世代を応援していきたいですね」

　顧客の負担を減らすため、また循環型社会を実践するため、1台の購入ごとに不要になったマシンの廃棄処分を無料で実施。さらに購入者には、操作方法を説明したり、トラブルに対処したり、偽セキュリティー警告へ対策を施したり細やかにフォロー。店舗への持ち込みや電話で受け付けるほか、有料で出張サービスも行っています。

　「海が近いため、湿気や塩害で不具合を起こすことも少なくありません。メーカー修理の場合、船便の輸送だけで往復4週間かかることもありますが、当方はその場で対応いたします」

地域貢献の一環でパソコンを寄贈し、パソコン教室で島を担うIT人材を育成

　美しい海と自然、温かい人柄に魅力を感じ、2014年に石垣島に移住した石本さん。「未来につなぐパソコン再生プロジェクト」と銘打ち、再生機を石垣市内の児童発達支援施設に寄贈する活動に力を入れています。

　「2023年度は廃棄予定だった250台を超えるマシンの中から10台を選別し、ハードディスクやマウスを新品にして贈りました。第2弾として、2024年3月に、島から出て進学する高3生2名にもプレゼント。リサイクル率は高くありませんが、子どもたちのためにできることを続けていきたいですね」

　石本さんは、自身の経歴を「わらしべ長者」と例えるように、ITスキルを磨き着実にステップアップ。「デジタル技術をもっと駆使したい」と各種資格を取得し、インストラクターやITエンジニアとしてキャリアを積みます。

　「移住後は、島内の事業所に勤務し官公庁や教育機関向けのプロジェクトに携わりました。八重山の学校は全て行きましたね。県立病院で医療エンジニアとしての経験も積みました。さまざまなIT環境を目の当たりにするうちに、本当に役に立つパソコンを提供したいと思うようになり、2020年にサポート業務を開始。2021年に店舗を構えて会社を設立しました」

　2024年7月からはパソコン教室を開催。週1回、ワープロや表計算、イラスト編集などのソフトの使い方や、ネットワークの知識を伝授しています。

　「今後は外部講師も招きながら、オンラインと対面双方の良さを融合させて、地域に貢献できるIT人材を育てていきたいと考えています。公民館でシニア層の方にもレッスンしたいですね。『パソコン1台で変わる人生がある』ことを多くの人たちに知ってもらいたいです」

（取材年月：2024年6月）

コストパフォーマンスの高い中古パソコンを提供し、再資源化と情報格差解消に貢献

バッテリーの消耗状況など、商品の情報を適正に公開して買い手の不安を解消

若年層向けのセールを毎年開催し、学生や社会人など若い世代を応援

地域貢献の一環でパソコンを寄贈し、パソコン教室で島を担うIT人材を育成

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