特殊技術nanoXを用いたコーティングのプロ池田宏

特殊技術nanoXを用いたコーティングのプロ

池田宏

素材を選ばずコーティング可能。水回りやスマホ、アクセサリー、家具、家電など用途はさまざま

　「お住まいの中の物や宝飾品などをガラスの力で守ります」と語るのは、大分市の「青空屋本舗」代表の池田宏さん。「nanoX（ナノエックス）」という専用剤を用いたガラスコーティングを手掛けています。

　「nanoXは、化学メーカーのアートブリード社が防弾ガラスの技術をもとに開発したもので、液剤と塗布方法も特許も取得しています。溶剤を対象物に塗り水と化学反応させ常温で硬化し、被膜を形成。表面にある微細な凹凸をふさぎ、なめらかに仕上がります。薄いガラスの膜で覆うので、カビやサビが発生するのを抑えてくれます」

　東京都立産業技術センターによる試験では、塗布面が98％の光透過率を維持しつつ、耐衝撃性が向上していることが認められているそうです。「食べ物、布、紙以外であれば基本的にどのような素材でも使用可能で、色や模様、質感を生かしながら耐久性を備えることができます。退色も防いでくれるので、サイン入りの限定品にもおすすめです」

　用途は、キッチン、バス、トイレのほか、スマートフォンやタブレット、ゲーム機、メガネに時計、アクセサリー、カバンや靴、自動車、バイクなど多岐にわたります。「珍しいものですと、フィギュアやサバイバルゲームのアイテム、お墓を頼まれたこともあります」

　作業時間はスマホ1台で約10分、浴室であれば、浴槽、壁、床、天井、蛇口も含め半日程度だとか。「施工後は、汚れやキズが付きにくくなるため、お掃除が楽になるのがメリット。見た目も光沢が出てつややかな印象になります。お客さまに『ピカピカで新品みたいだね』と言われるとうれしいですね」

メーカーの担当者に紹介されたnanoXに衝撃を受け正規代理店に

　池田さんは、1965年に佐伯市で生まれました。地元の高校を卒業後、メッキ加工業者やカラオケ機器のリース会社などに勤務。一時は、個人事業主として海外の商材を輸入販売する仕事もしていました。

　多様な分野に携わってきた池田さんがnanoXに出会ったのは、2018年。知り合いを通じてメーカーの担当者を紹介され、その性能にほれ込み、正規代理店としてビジネスを展開するようになりました。

　「最初は話半分で聞いていたのですが、担当の方が『硬度が高くキズが付きませんよ』と、nanoXを施した自分の携帯電話を車の鍵で思い切りたたき出したのです。あのときの衝撃は今でも鮮明に覚えています」

　提供するサービスには自信を持っていましたが、事業に乗り出した当初はnanoXの認知度が低く、顧客獲得に苦戦。半年間、週末にJR大分駅南口を出てすぐの場所にある、複合文化交流施設「ホルトホール大分」でブースを構えていました。

　「初めてのお客さまは、『水回りをお願いしたい』というご婦人で、ご自宅にお伺いしました。旦那さまは性能を疑っていらしたようですが、だんだんときれいになっていく様子を目の当たりにし、最後はとても喜んでくださいました。かなり大きなお宅で大変ではありましたが、幸先のよいスタートを切ることができました」

　以来、個人だけでなく、企業や学校、医療施設などもクライアントに持ち、社内や現場で配布するデバイス機器、業務に使用する機材などのコーティングを請け負っています。

ハウスメーカーやランドセルメーカーなど、他社との協業にも注力

　池田さんは、現在も大型ショッピングモールのレンタルスペースを定期的に借りてブース出展するなど、地道な営業活動を続けています。「携帯電話を買い替えるたびに『探したよ』と言って足を運んでくださる方や、親子でご愛顧くださる方たちもいて、ありがたい限りです」

　努力のかいがあって、今ではコンスタントに依頼が入るように。現在移転準備中のため、電話やメールでの予約制で持ち込みの来客を迎えます。また、事前に加工希望の製品について電話やメールで連絡をもらったうえで郵送も受け付け、県内であれば無料出張にも応じています。

　「ポリシーは迅速かつ丁寧に、手を抜かないこと。物の大小に関わらず、同じように真剣に誠実に取り組みます。お客さまから大事な品を、時にはお住まいの一部をお任せいただくのですから『やってよかった』と言っていただくために、自分ができることに全力を尽くします」

　池田さんは、他社との協業にも積極的です。これまでにハウスメーカーやメンテナンス会社からの要望で、住宅設備に施工してきた他、2022年にはランドセルメーカーとタッグを組み、nanoXでコーティング処理した商品を発売しました。

　「電子機器やファッション小物、革製品など活用範囲が広く、経年劣化への対処に有用ですので、これからも多方面に対応していくつもりです。『より薄く、より軽く、より強く』をコンセプトにしたnanoX の可能性を、たくさんの人に知っていただきたいですね」

（取材年月：2023年8月）

防弾ガラスから生まれたコーティング剤「nanoX（ナノエックス）」を施工

素材を選ばずコーティング可能。水回りやスマホ、アクセサリー、家具、家電など用途はさまざま

メーカーの担当者に紹介されたnanoXに衝撃を受け正規代理店に

ハウスメーカーやランドセルメーカーなど、他社との協業にも注力

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